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巡礼と唸る拳
聖女が倒れた
しおりを挟むまだ戦いは続く。
ノートン達が頑張ってたけどもう限界。
俺の出番だと鼻息荒く拳を強く握りしめた。
握りしめたんだよ…。
でも、それも無駄に終わっちゃう。
領主様が用意したハイドンさんとその御一行。
一人一人の戦力は変態勢に比べれば確実に劣る。ハイドンさんは分かんないけど。
しかし、数的に有利となれたのは非常に大きい。
疲弊したノートン達も休ませることが出来る。
状況を考えれば良い事尽くめ。
俺がやるべきことは今戦っているハイドンさん達が怪我をしたらすぐに治療すること。
聖女って立場の人間としてはかなり安全になった。
えぇ、なりましたとも。
「ノートン殿、一度お下がりくだされ!ここからは我々も参戦いたすので一時休息を!」
「ハイドン殿感謝致します!お前達、下がるぞ!」
ハイドンさんの助太刀で所々擦り傷を負い疲弊しきったノートン達がこちらへとやって来た。
俺も近寄る。
「ノートン大丈夫?すぐに治療するね。」
「ありがとうございます。あの…なんでそんなに頬を膨らませて拗ねているんですか?」
俺はどうやら頬を大きくぷくりとさせていたようだ。
ふん、はいはい治療治療。
ピカッと光らせすぐさま回復。
「もう怪我はございませんね、では少々こちらへ。」
「え?あ、はい。」
俺の気持ち悪いぐらい聖女っぽい口調に呆けるノートンの腕を掴んで人気の無い場所へ連行。
右よし、左よし、誰もいない。
「ねぇノートン、私…もう我慢の限界なの。」
「あ、アリス様…どうされました?」
俺はずずいと迫る。
意外に背が高いから見上げないといけないや。
「ずっと、ずーっと我慢したの。皆を後ろから聖女の力で守る、聖女だもんね。でも、もう無理だよぅ…お願い、やらせて。」
「ぶふぅっ!?な、何を仰っているんですか!!」
「お願いよノートン、私にもやらせて。私も戦いたいの。」
「……………は?」
「だ・か・ら、私もあの変態達と戦いたいの。駄目?」
小さな女の子からの可愛らしいお願い。
なのに、ノートンは思いっきり息を吸い込んでもういっちょ吸い込んで更に吸い込んでこれでもかと吸い込んで、一気に吐き出した。
肺活量凄いね。
また呆れた眼差しで見つめられた、どうして?
「はぁー、駄目に決まっているでしょうが!貴女は聖女なんですよ、わざわざ自ら危険な場所に行く必要は無いのです!」
「でも、でもでも見てるだけじゃなくて戦いたいよ。」
「アリス様は後方からその御力と声援で十分に前線で戦う者達の励みとなります。」
「うぅぅ…。」
ああ言えばこう言う。
今回はこれぐらいで諦めないぞ。
俺はまだ何かと言いたげなクソ真面目護衛の目の前で仰向けに倒れる。
ちゃんと受け身を取ったから大丈夫です。
急に倒れ込んだ俺に真面目は驚く。
まだだ、まだ終わらんぞ。
両手足を徐々に動かして激しくしていく。
そう、俺は目的のためなら聖女や女など要らん。
これでもかとジタバタして駄々をこねてやる。
「嫌だぁ、たーたかいたーい。うわぁーん、あの筋肉の塊に一発いれだーい。」
恥も外聞もちょっと横に置いときます。
泣いて泣いて泣き喚いて勝利を掴んでみせる。
ノートンは驚愕の表情から可哀想な人を見る目へと変わっていく。もしかして同情してくれてる?
い、いけるかも。
「貴女は何をやっていますかぁ!!!」
落雷注意報。
落雷地点は聖女な俺。
出会ってから聞いたことないノートン様の怒号。
もちろん仰向け状態から跳ね起きました。
はい正座ですね、かしこまりました。
こんな状況だけど、説教が始まります。
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