今日も聖女は拳をふるう

こう7

文字の大きさ
上 下
39 / 266
豚司教に教育を

ただいま信者量産中

しおりを挟む

帰るのが怖い。
物理的なことなら魔物で慣れてるけど、怒られたことは殆ど覚えていない。

今回の屋敷単独特攻は確実に説教案件。

足取りが重いよ。

「こんだけ暴れ回った嬢ちゃんでも、怒られるのは怖いんだな。」

ブラッドさん笑わないでよ。
本当に憂鬱なんだからね。
ちなみに現在馬車の中。
ブラッドさんと一緒に教会へ向かい中。
アルフとノートンはあのまま屋敷に残っている。もっと他に余罪が無いか、屋敷中を捜索しまくるらしい。
あの二人はやたら王城関連に詳しかったからおそらく関係者だろう。
貴族っぽい雰囲気だったし後は任せよう。
また近いうちに会おうって約束したし、その時に聞いてみるのもアリだね。

そんな事よりもこれから待っている説教だ。
お土産を買って帰れば、少しは軽減されるかな。

それは無いだろと横から否定が飛んでくる。ですよねー。




「おいおい何だあの人だかりは?」

もうすぐ到着というところでブラッドさんが何かをみっけた。
ひょこっと馬車の窓から覗き込む。

うわ、本当に教会の正門に人の大群が押し寄せている。
なんだなんだお祭りかい?


「あーあ、嬢ちゃんのせいだぞ。」

いきなりの責任の押し付け。
なにこの人だかりは俺のせいって言いたいの?

「私のせいって‥。確かに街中をロコルお姉ちゃんを抱いて歩いてちょっとした騒ぎになりましたけど、それだけですよ。」

む、なんなのさ、その呆れた目は。

「嬢ちゃん、この王都に住む住人達からどう思われてるかちゃんと理解してないな。」

「治療好きな女の子とか、もしくは王都中の屋台を食べ歩く食通少女とかですか?」

ますます呆れた目で深いため息を吐かれる。
食通少女は冗談だとしても、勘のいい人には聖女ってバレてるかもね。

「いいか、嬢ちゃんはもう聖女を越えて女神様って崇拝されているんだぞ。」

そういや、アルフが前に女神って言ってきたな。
冗談でしょう、俺はただの廃れた村の女の子だよ。

「またまたぁ。私はどこにでもいる女の子ですよ。女神な訳無いでしょう。大方、さっきの騒ぎがまだ収まってないだけですよ。」

「いや、あんだけ多くの人を助けて来たんだから、崇拝もされるだろうよ‥」

ブラッドさんがなんか反論を言ってくるけど放っておこう。
このまま馬車では通れそうにないし、歩いて教会に入ろう。
後ろからやめた方がいいぞと忠告が入る。
だいじょーぶだって、いいから行くよ。


馬車から降りた俺に一人また一人と押し寄せていた住人達が気づいていく。
よく見たら、ミーナちゃんやアモスさん達もいる。
というか、治療を施した人達が多く紛れているな。

俺に気づいた人達から片膝をつき、頭を垂れる。
それが波のように周りに伝染していく。

マジかよ、本当に俺を崇拝しているように見えるんだけど‥。
ブラッドさんのどうだ本当だろうと言いたげなしたり顔がむかつく。

どうすっかなぁ


「えーみなさん、お顔をお上げください。」

「し、しかし女神様に対し失礼かと‥」

「私は治療が出来るだけの女の子です。一応、聖女の肩書きがありますけど、神様認定されても困るだけです。皆様とはこれからも手の届く身近な存在であり続けたいので、普通に接してもらえると嬉しいです。」

チラチラとミーナちゃんを見る。
視線に気づいたミーナちゃんは、水を得た魚のように突撃してきた。
それでこそミーナちゃん。

「お姉さまぁ、ご無事でなによりでずぅ。凄く心配したよ、お姉様お姉様お姉様‥」

泣きながら抱きついてくる。
そのまま私の胸に顔を埋める。
ちょ、ちょっと鼻水が‥って、匂い嗅いでない!?

「み、ミーナちゃん心配かけてごめんね。も、もう大丈夫だからね。」

「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様」

なおも埋めようとする顔を無理矢理引き剥がす。なにがミーナちゃんをここまで駆り立てるのか。

この光景を微笑ましく見ていた信者もどき達はもう無事だと悟り、口々に良かった良かったと安堵する。

おい、女神様は永遠に不滅なりって言ったやつ誰だ!
ブラッドさん腹を抱えて笑うな!

も、もういいもんね、教会の中に行くもんね。
俺が教会に進もうとすると、信者もどき達が二方向に分かれて道が誕生する。
どうぞどうぞとキラキラ笑顔で勧めてくる。
今までこんなにも通りたくない道があっただろうか。


もう仕方ないと渋々謎の聖女ロードを通過する。
勝手に額が光りだす演出のおかげで結局通り終わるまでみんな跪いてたよ。


教会に入ると、そこにはトーラスさん。それと眠りから覚めたロコルお姉ちゃんが待っていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...