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豚司教に教育を
豚司教に殴打を捧げる2
しおりを挟む急遽両手をこすり合わせ下手に出てくるメイドさんに連れられ、俺は司教の部屋へと向かっている。
未だちょこちょこ出てくる警備兵達を軽くあしらっていく。
メイドさんは悟りを開いたのかどこか遠い目。警備兵が現れる度に強気だったのにもうどこにもその面影はない。
そして、ようやく一つの扉の前で止まる。
「へへ、着きましたぜ旦那。へへ、へへ」
口調が変わってる。
お姉さん、旦那じゃないよ。
もう役目は終了だよと告げると、メイドのお姉さんはそれはそれは見事な走りっぷりで逃げていった。彼女もまた世界を狙える足をお持ちのようだ。
脅してごめんね、でもありがとう。
もう姿の見えなくなった後ろ姿に一礼をして、目の前の扉をノックする。
やっと会えると気持ちが高まってたから、ついつい扉を殴り飛ばす形になってしまった。
やっちゃった、恥ずかしい。
一応失礼しますと言って入室。
礼節は大事だもん。
そこには、葡萄酒が並々と注がれたグラスを口に付けたまま固まる司教。
テーブルには5本ほど空になった瓶が置かれてる。
少しは酔いが覚めましたか?
「な、な、な‥」
「こんにちは司教様。突然の訪問申し訳ありません。」
聖女っぽくローブの裾を軽くつまんで淑女の礼。
どや、高圧シスターを真似てみました。
「な、おお前が生きてるだと、あのゴミ女め‥」
おいおい、あんたが差し向けたか聞く前に言っちゃったよ。どこまでも三下だね。
で、ゴミ女って誰のこと言ってんだよ?
「やはり貴方でしたか。随分と面白いことをしてくださいましたね。」
「ふ、ふん、なんのことだ?知らんなぁ」
「いやいや、たった今私が生きてることに驚いてたでしょう?しらばっくれないで下さいな、主犯さん。」
「ぐぬぅ、わ儂は知らん!おい、お前達あの侵入者をやってしまえ!」
まだ酔ってんのか?
そのまま知らんふりをすれば俺が侵入者で悪者だったのに。
何処からともなく現れたナイフや剣を武装した黒装束軍団。
剣やナイフから血以外の匂い。毒が塗られているのか。
これはこれは殺し慣れてらっしゃることで。
いくら俺が侵入者だからって聖女を殺したらまずいんじゃないの?
じりじりと俺を囲むように距離を詰めてくる。
殺すことに躊躇いのないニヤついた目つき。ロコルお姉ちゃんはこんな奴らに唆されたの?
「ふん、ピグオッグ様の恩恵を無視して死を選んだとはあの女もお前も愚かだな。」
この黒装束のリーダーかな?
司教に雇われた人達は皆なるべく痛みの無いよう退場してもらおうかと思ってたけど、どうやら必要ないみたいだね。
懸念材料が一つ消えて良かった良かった。
とりあえず笑ってんじゃねぇよ。
相手が瞬き一つする間に眼前に迫り、そのムカつく鼻っ面に拳を叩き込む。おまけでもう一発追加でね。
驚く暇なくぶっ飛んで行く。豚の背後にある壁に衝突してようやく停止する。
綺麗にめり込んで一つの作品みたいだ。
安心してね、決して死なせる気は無いから。
さあさあ他にも芸術作品を作ってまいりましょう。
貴方達、今の出来事で驚いて固まるのはいいけど、それだと自ら作品になりたがってる様にしか見えないよ。
ひとーつ、ふたーつ、みっつ‥‥じゅうーいち!
はい、完了。
創作活動は楽しいね。
どうでしょう。
この部屋の壁一面に広がるいくつもの作品の数々。
作品達のめり込んだ際に出来た亀裂が幾重にも重なり、天井に大きな穴が出来ました。
これもまた芸術。
いかがですか、司教様?
崩れた天井の瓦礫付近で震える司教様。
人を絶望に追いやった方がまあ情け無いことですわ。
ぐりんと顔を向けて微笑むと、ひぃっと小さく悲鳴をあげる。
あらあらそんな怯えてどうしたの?
心配だから側まで行ってあげよう。
はい、こんにちは。
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