1 / 266
プロローグ
聖女な1日
しおりを挟むここはシェアローズ王国の東に位置する名もなき村。
定期的に実施される各町や村を巡って治療をするため、王都からおよそ馬車で6日ほどかけてたどり着く。
お‥私が訪れることを事前に知っていたのか、村人全員で出迎えてくれる。総勢100にも満たない人数だけれど私が住んでいたところに比べれば何十倍にも多い。
お‥私一人訪れるのにここまで喜んでもらえるのは照れ臭いけど嬉しい。
聖女をやってて良かったと思うことの一つだ。
この期待に答えないとね!
「こんにちは、みなさん。私は聖女の称号を承ったアリスと申します。このように歓迎して頂きありがとうございます。」
お‥私は、村人全員を見渡し一礼する。
村人達は小さく「おぉ‥」と響めきを。
後ろに控える騎士ど‥様達はうんうんと安心するように頷く。
すると、ご老人が一歩前に出てくる。
この村の村長かな。
「おぉ‥このような寂れた小さな村にまでお越し頂き誠に有難うございます。どうか聖女様のお力で床に伏している者達をお救いくださいませ。」
ご老人は膝をつきまるで神に祈るように懇願する。
「お爺さん、どうかお顔を上げてください。この力は村が大きいとか小さいとか関係ありません。ただ目の前で助けを求める人々にそっと差し伸べるための力です。」
お‥私は今もなお跪くご老人の手を包み込むように握る。
そして、背中を支えながら優しく立ち上がらせる。
「なんと慈悲深き御方なんでしょうか‥うぅ」「おぉ‥女神だ‥」「あの幼い体にどれほどの慈悲を秘めているのかしら‥」
今の光景に村人たちが次々に感嘆の声をあげる。目に涙を溜めている人さえいる。
「それでは、早速治療を始めましょう。まずは重度の怪我や病気で動けない方達の治療を優先で行います。その後、残りの全ての怪我や病気を治します。どなたか真っ先に治療した方がいい人を教えて頂けますか?」
すると、村長がすぐに案内してくれました。
どうも一つの家にまとめて寝かせている様子。
部屋に入ると、横になっている4人とそれぞれの側に寄り添う人達がいる。
床に伏す4人は共通して全身に布が巻かれている。そこから滲む赤色がとても痛々しい。
どうしてこうなったか事情を聞く前に治療をしよう。
「父ちゃん父ちゃん!聖女様が来てくれたんだ、だから‥だから死なないで!」
お‥私の近くで7歳ぐらいの男の子が、真っ白な顔色で横たわる男性に叫ぶ。
この子のお父さんだろうか。
男の子に優しく触れる。
「大丈夫だよ、私が絶対に治してあげる。だから、落ち着いて。」
「せ、聖女さまぁ‥」
にっこりと微笑んで、今も苦しそうにするこの子のお父さんの側へ行く。
そして、その体の上に両手を広げてかざす。
すると、私の額にある聖女の証が光り出し、彼の体全体をいくつもの光が包み込む。毎度の事ながら、とても暖かくて心地よい光。
「聖女様きれい‥」
近くで見ていた男の子がそう呟く。
この光で私も輝いているように見えるからかな。
やがて、彼の周りを色めいていた輝きも次第に収まっていく。
治療完了。
さすが聖女の力。あれほど苦しんでいた彼は今や呼吸を落ち着かせ寝ている。
滲み続けていた血も止まっているみたい。
「ふぅーもう大丈夫だよ。お父さんの怪我は治ったよ。起きたら、いっぱい生きるために頑張ったお父さんを褒めてあげてね。」
「聖女様、ありがどうごじゃいます。ありがとうござじゃいますぅ‥」
この子の緊張の糸が切れたのか、涙と鼻水が止めどなく流れる。
お‥私は苦笑しつつ頭を撫でる。
さあ、3人頑張っている人達がいる。
私はこの子のお父さんと同じように繰り返し治していく。
みんな、傷一つない元の体に戻る。
よく頑張ったね。
次々に感謝の言葉を告げてくる村人たちに照れながら家を出る。
まだまだ怪我をしている人もいるだろうし、どんどん治療していきましょう。
私が聖女になってからの付き合いである騎士ノートンにお願いしておく。
「ノートン、ちょっといい?」
「はい、なんでしょうか?」
「私が治療している間で村長さんにあの大怪我の原因を聞いておいてほしいの」
「アリス様、また首を突っ込むおつもりですか?」
またかよとでも言いたげな目で見てくる。
そうまただよ。
「ふふ、聖女の務めですから。」
私は口に手を当て微笑む。
ノートン呆れないで。
という訳で、私は治療にノートンは村長に聞き込みを。
聖女の力は絶大だ。
効果も凄いところだけれど消費魔力も驚くほど少ない。
村人ほぼ全員の治療をしたにも関わらず未だに疲れ知らず。
お‥私も村長さんのもとに向かいましょう。
0
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!
れもん・檸檬・レモン?
ファンタジー
私には双子の妹がいる
この世界はいつの頃からか妹を中心に回るようになってきた・・・私を踏み台にして・・・
妹が聖女に選ばれたその日、私は両親に公爵家の慰み者として売られかけた
そんな私を助けてくれたのは、両親でも妹でもなく・・・妹の『婚約者』だった
婚約者に守られ、冒険者組合に身を寄せる日々・・・
強くならなくちゃ!誰かに怯える日々はもう終わりにする
私を守ってくれた人を、今度は私が守れるように!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる