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街までの道のり

恐るべし我が妄想

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魔法。
なっちゃん曰く、属性は火・水・風・雷・土が主流で他にも氷や時空間、身体強化や鑑定などの無属性と多種多様にある。もちろん、それぞれの魔法に適性が無ければ幾ら頑張っても使えないし、必ずしも適性があるといってまともに使えるともいえない。
なっちゃん調べでは、エスちゃん様のご厚意で全属性に適性があるらしい。あとは、練習を重ねて努力するのみ。

幸い私には魔法に不可欠な妄想力もとい想像力が豊からしい。
なっちゃんも鼻で笑って褒めてくれていたから大丈夫。私はやれば出来る子。

『ではご主人様、残り49分38秒以内に牽制程度の魔法まで取得を目指しましょう。』

「おーう……ってどうしてそんな具体的な数字を持ち出して来たの?」

『………さあ取得目指して頑張りましょう!』

「あ、今話を逸らした。逸らしたよね?」

『残り時間49分15秒。』

謎のカウントダウンしか発しなくなった。し、仕方がない諦めて魔法の勉強をします。

「もういいよ。まずはなにをしたらいいの?」

『……はい、最初は体内にある魔力を感じてみましょう。』

みましょうと言われてもこちとら魔法の無い世界からやって来た女の子。
どうしろと?

『……まずは目を閉じて下さい。胸の辺りに集中してみて下さい。どうですか?温かな何かを感じませんか?そうです、それが魔力です。感じたらそれを動かしてみて下さい。』

言われた通りに目を閉じてCへと進化した胸元に集中する。集中する。集中する。

「あのね、怒らないで聞いてね。その…ね、何も感じなかった、てへ。」

『…………残り時間38分28秒。』

「うわぁ、待って見捨てないで!まだやれるからあたいまだやれるから!」

光球だから表情は読めないけど、絶対残念な子を見る目をしている。絶対両親や親友が偶に見せる目をしている。

『……はぁ、では私に触れて下さい。私がご主人様の魔力を操作しますのでその感覚を覚えて下さい。残り時間37分46秒。』

覚えろよと脅しのように制限時間をおっしゃる。
これはヤバイと急いでなっちゃんに触れる。電球と違って発光しているのに熱くない。

従姉妹のみっちゃんが言ってたクーデレって奴だね。

うんうん違いないと唸ってたら突然私の中を駆け回る熱。

なに、これ、あ、あぁ…。

『どうですか、ご主人様。血液のように身体中へ循環しましたが…。温かいのが分かりましたか?』

「はぁ、はぁ……も、もう一回お願いします。その温かくて気持ちいいのワンモアプリーズで。」

『………………………残り時間35分12秒。』

「なっちゃん、聞いてる?もう一回お願いします、ね、お願い。聞いてるなっちゃん。」

『……………。』

ついになっちゃんが制限時間も言ってくれなくなった。クールなナビゲーターさんだね。
もっと感じたか……感覚を覚えたかったけど仕方がない。
仕事放棄のなっちゃんにもう一度振り向いて貰う為、私頑張る。目指せ汚名挽回!

集中集中、あの時気持ち良かったぐへへな感覚を思い出せ。むふふ思い出したらまただらしない顔になっちゃう。
集中集中集中。


そして、カエデの集中は続いた。時折、途切れることもあったけど彼女は頑張った。何度も何度も挫けそうになってあの時の感覚を思い出して気持ち悪い笑みをしちゃうけども頑張った。

そして、なっちゃんによる残り時間はもう5分を切っていた。

「なっちゃん。」

カエデの言葉には力が備わっていた。ほんの数十分前までは何処か頼りない声。でも、今は違うようだ。
大学の面接で見せた真剣な眼差しがそこにある。

「なっちゃん。」

『ご主人様。』

「なっちゃん、私頑張ったよ。」

『ご主人様、そうですね。ご主人様の中では頑張ったのでしょう、ご主人様の中では。ですが……………………残念です残り時間3分13秒。』

「なっちゃん私を見捨てないで!あと、いい加減その不吉な制限時間は何なの?」

私はやれば出来る子。だけど、集中がほんのちょっと足りない女の子。だから許して、なんて事は言わないよ。言わないからその数字の意味教えてください。

『これは魔物つまり敵が現れるまでの時間です。あんなに急ぐように申しましたのに、残念です。短い間でしたがお世話になりました。ご主人様との日々はとても幸せでした。』

「なっちゃん待って待って。なんで魔物が来るって教えてくれなかったの!?あと、流れるように別れの挨拶告げないで!」

なんで魔物の出現を予知出来るのかはこの際気にしない。何でも知ってるナビゲーターだから知ってたんでしょう。
でも、ちゃんと魔物が来るって教えてくれていたらもっと真剣にやったのに。
本当だよ、やってたよ嘘じゃないからね。

『あぁご主人様おいたわしや。ほんの小一時間でもうお別れなんて…。』

「凄いこれほど感情のないおいたわしやは初めてだよ。それとまだお別れするには早いから。生きよう、ね、頑張って生きようよ!」



そんなカエデちゃんの必死の願いは虚しく、ガサゴソと音がしたかと思えば三匹の魔物が現れてしまった。


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