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街までの道のり
その名はなっちゃん
しおりを挟む一度肉体を失ったカエデ、けれど神様兄妹のご厚意で新たな肉体と新たな世界での生活を手に入れた。
神様達に見送られながら眩い光に包まれて異世界エスティアへと転移していく。
あまりの輝きに思わず閉じていた瞳。光が収まるのを感じてゆっくりと瞼を開けた。
周りを見渡せば森中の森。
ここはどこだろうと考える前にやらねばなるぬ事がある。私は急いで自分の胸元に目を向け両手も向かわす。
「おぉ…おぉう…。」
涙が溢れた。もう叶わないと嘆いて持つ者に対して敵愾心を抱いていた。でも、そんな私とはもう卒業。今まで敵意を燃やしてたのが馬鹿みたい。あんなものただの肉塊だなんて言ってたけどそんな事無い。柔らかくて良いじゃん。
カエデはしばらくの間、人気の無い森の中で一時の至福タイムにうつつを抜かした。
『ご主人様、そろそろ正気に戻ってその気持ち悪い笑みをお止め下さいませ。色々と説明したいのですが…。』
モミモミタイムの中、不意に私の頭の中に誰かが囁いた。機械的だけど女性の声。驚いた私は揉みしだいていた両手を外して辺りを見回す。
周りにあるのは、森森森光球森森森………光球!?
すぐそばで発光する光の玉。
どうして今の今まで気付かなかったのだろう。
急いで距離を取る。
『お待ち下さいませ。私は、地球の神である土下座様によって造られましたナビゲーターでございます。しばらく見守っておりましたが、まさか丸々一時間も揉むとは思いませんでしたので脳内へと直接お声を掛けさせて頂きました。』
「そ、そうだったの!?」
誰もいないと思ったのに。
どうしよう嬉しくて笑い声も上げてたのに。
『はい。ですが、ご安心下さい。私はご主人様がどんなに不気味な行動を起こしても気にしません。』
「さ、さっきのは忘れて。あと、変な行動してたら気にして!」
『かしこまりました。変な行動をした場合、気にはして適度にお止め致します。』
そこはかとなく止めて貰えない気がする。自分で頑張って自制しよう。
「う、うんよろしくお願いします、なっちゃん。」
『なっちゃん?』
「どう呼んだら良いか分からないし、ナビだからなっちゃんで。よろしくね。」
『………………かしこまりました。宜しくお願い致します。』
意を決して一気に距離を詰めようとしたけど少し馴れ馴れしかったかな、でも私に後悔はない。
これからいかなる時も健やかなる時もずっと一緒なんだから早く打ち解けないとね。
とりあえず神様の用意してくれた案内人と滞りなく顔合わせを終えた。
さてまずは状況確認。ここは、森の中で着ている服は学生服で持ち物は従姉妹のみっちゃんお手製のスタンガンのみ。なんでこれだけ一緒に付いて来れたのだろう?
今後の方針を決めますか。
「なっちゃん、とりあえず近くの町を目指したら良いかな?」
『ご主人様、まずは何よりも魔法を取得するべきかと思われます。ここから一番近い町でも一週間ほど掛かります。それまで火もなければ水もございません。ましてや、自衛手段がそのスタンガンのみです。』
「えっ一週間!?おかしいよ、土下座さんは輝かしい未来をお祈りするって言ってたんだよ。そんな人が危険な森に転移させる訳がないでしょ。」
『最適解で言いますとあの土下座様ですからで納得頂けるかと思います。』
ぐうの音も出ないとはこの事だ。あのミスで人の命を奪った神様なら転移場所が予定外でも十分ありうる。
くそぅ、エスちゃん様どうか土下座さんに天罰を。
『この名も無き森には、ゴブリンやウルフ、ボアといった下級の魔物しかいません。しかしもし群れで襲われた場合、高確率でご主人様は死亡します。ですので、急ぎ魔法を覚えましょう。』
「う、うん教えて下さい。よろしくお願いします。」
『大丈夫です。魔法はイメージさえしっかりしてればすぐに何でも出来ます。ご主人様の妄想力であれば何も問題ございません。』
「うん、頑張る……ってやっぱり馬鹿にされてる?」
『いえ、ここまで全て褒めております。』
「へへ、そっかぁ。」
カエデの思考回路は残念なことに残念。
ナビことなっちゃんは自分がしっかりしないとと固く奥底で誓うのでした。
色々とこの世界の事をゆっくりと聞こうと思ったけど、土下座のお陰でそれどころでは無くなった。
なっちゃんにアドバイスして貰いながらさっさといくつか魔法を覚えて行こう。
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