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プロローグ

交渉時々脅迫のち出発

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一ノ瀬楓は地球での生を終えて、新たな世界エスティアでの生活を決意した。

まだブルブルしている土下座を放置して話を進めます。

「では、色々と決めていきましょう。まず肉体ですが地球での姿をそっくりにお造り致しましょうか?もし性別を変えたいなど女の武器強化など注文がございましたら受け付けしますよ。」

性別は女のままで良い。男の子になってもどうしたらいいか分からないもん。
でも、女の武器強化に関してはちょっとだけ、ね。
恥ずかしいのでおずおずとエスちゃんさんにこそこそっと耳打ちする。

「……を3割増しでお願いします。」

「はい、お任せ下さい。最優先で調整致します。」

ありがとう。
私はエスちゃん様を信仰します。

結果、肉体は元の体型からさほど変わらず完成。およそAからCへと限界突破しました。
それとエスちゃん様の助言でこの世界の独り立ち平均年齢を考慮して18から15へと若返りしました。
何かと理由付けにしやすくなる。

続いては、肉体に付与する能力。

エスティアはみっちゃん曰く剣と魔法の世界、いや弓矢とか斧とかもあるけど。

「あの、私でも魔法って使えますか?」

「はい、もちろんです。肉体をエスティア産にしたので魔力を宿しております。安心して下さい。さて付与する能力ですが、私からはエスティア共通言語の読み書きが出来るように致しますね。あと、私の加護も付けておきましょう。これで保有魔力量が増えましたよ。精神耐性もこれで高くなりました。地球と違って血生臭いことがかなり身近になりますので高い方が宜しいでしょう。」

痒いところまで手が届く親切な神様、ありがたやありがたや。

「あとはお兄様からお詫びも兼ねて何か一つ能力をお付けさせます。ほら、お兄様いい加減シャキッとしなさい!」

失意の底にいた土下座を足蹴によって無理矢理覚醒させる。

「は、はいぃぃ。何なりとお申しつけ下さいませ!」

この人も神様なのにこの場にいる誰よりも地位が低い。
まぁそれはどうでもいいとして、望んだ能力を一つか。
どうしよう…。
みっちゃんならどうするかな?

自分の将来に関わる大事な能力。
岩をも砕き馬よりも速いそんな身体能力、いやそれだと私の女子力値が下がりそう。少なくとも笑顔で岩を握り潰してる女性が居たら私なら引いちゃう。
なら大金を………いやいやいずれ尽きてしまう可能性があるのは不安。治安は地球より悪いらしいし寝てる間に盗まれることだってあるかも。

それからまた悩んで悩んで悩みまくって行き着いた私の望むもの。

「決まりました。土下座じゃなかったチーさん、私が欲しいのは何でも知ってる頼もしいナビゲーターです!!」

「ナビゲーターですか?」

私の願いを聞いた土下座は、頭にハテナマークを浮かべて首を傾げる。

「はい、ナビゲーターです。何にも知らない世界に行くのです。歴史から地理、その他異世界のおばあちゃんの知恵袋まで知り尽くした頼もしいナビです。駄目ですか?ねぇ、駄目でしょうか?」

難しいお願いかもしれない。
でも、異世界初心者の私には必要な存在になる。申し訳無いと思いつつスタンガンをバチバチとチラつかせて懸命に懇願する。

「は、はいひぃっ大丈夫ですから大丈夫ですから!」

私の想いは通じたようで青くした顔で必死で頷いてくれました。

「で、ではそのナビゲーターとやらを作りますので、それがどんなものか頭の中で想像してください。その思念を元に造りますから。」

「はい、分かりました。」

目を閉じて想像する。
ナビのイメージは、さっきも述べたように何でも知っていて頼りになる存在。

よし、あとは任せたよ土下座。

「はい、では直ちに作ります。出来上がりは転移してからのお楽しみです。」

ちゃんと土下座に伝わったか不安だけどこれで新たな生活の準備は一応整った。
むふふCかぁ、エスティアの大地に降り立ったらすぐに確認しよう。高校生になっても成長しなかったあの哀しみから解放される。


楓は比較的前向き。頭の中はさっきまでの悲観は無くなり、もう無理だと諦めていたものをモミモミする自分でいっぱい。




妄想にふけている間で神様兄妹の作業が終わった。

「それではカエデさん。私の愚かなミスで本当に申し訳ありませんでした。これからの新たな世界でのカエデさんの輝かしい未来を心より祈っております。」

「カエデさん、愚かで情けないお兄様が大変ご迷惑をお掛けしました。私もエスティアで楽しい日々が過ごせるよう祈っております。」

「土下座にエスちゃん様…本当にありがとうございます。最初は悲しみいっぱいの絶望だらけで荒んでましたが、一部の成長やまた新たに人生を歩めることや一部の成長でもう大丈夫になりました。本当にありがとうございました。」

腰を直角に曲げて心からの感謝を述べた。

「「それでは良い人生を!!」」


「行ってきます!」

大きな声でお別れをして一ノ瀬楓は、地球からエスティアという新たな世界へと出発するのであった。


「さてお兄様、カエデさんとの約束ですのでお仕置きの続きをしましょうね。」

「……………………地球の管理があるから散!!」

ダッダダダ……ガシッゴン、ズルズルズルズル。

この先は、酷い悲鳴と不快音ばかりとなりますので省略いたします。


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