着ぐるみ先輩、ちょっといいですか？

部員紹介、いいですか？

写真部は今日も愉快です2

角刈りの柔道部辺りが挙って勧誘に来そうな図体の持ち主。
こいつは俺と同じく1年の堀田 一結。
どうして俺を見て顔を赤らめているのかは知りたくない分かりたくない。

隣にいる陽司には見向きもしない。
前に意を決して聞いたことがある。ウインクしながら、僕の好みは君だよと人差し指を俺の口にチュッてした時は盛大に吐いたっけな。
あれは最悪な思い出だ。


一結はデカイ体をもじもじさせながら俺の隣に座る。
陽司が全く要らない気を使ってくれたお陰でな。

くるみ先輩に助けを求めるも変わらないニッコリマークで手入れに集中している。
後輩の貞操の危機に全く興味ないご様子で。


は、早くみんな来てくれ。
隣人さんがチラチラとこちらを見ながら舌舐めずりしています！


そんな思いが通じたのか、廊下からトタタタタと駆けてくる二つの足音。


勢い良く入って来たのは、同じく一年で双子の姉妹。

お揃いのツインテールにそれぞれ赤と青のリボンを結んで違いを出している。
赤リボンが姉の鳴瀬 椎。
青リボンが妹の鳴瀬 舞。

走り回るほど元気いっぱいの二人の足は引き締まっていてくるみ先輩の次に好き。いつか並ぶ姉妹の足に挟まれたい。


この2人も俺と違って変人の部類。
好きなものが自分自身と姉(妹)。自己愛と姉妹愛に満ちた可笑しな二人。

余りにも自分達が好きすぎて教室で自分達の席の前に姿見サイズの鏡を持ち運んでくるという所業をしでかしたほどだ。
前の席の人は自分の座る場所を失い、鏡の角度調整係に任命されていたな。


「「やっほー、みんな大好き鳴瀬姉妹の参上だよー！」」

毎回鬱陶しい挨拶から始まる。
律儀に返事をするのはもうくるみ先輩くらいだぞ。

「まだ全員揃ってないみたいだね、椎ちゃん。だったら‥」

「そうみたいね、舞ちゃん。だったら‥」

「「一緒に撮り合いましょう！」」

この二人の入部理由は日々変化していく自分達の魅力を一時も逃がさないためらしい。
お揃いで買ったデジカメであらゆる角度から撮り合っている。
俺もこっそり二人の足の写真を撮ったのは内緒。
すぐに真顔の顔に変化させたくるみ先輩に見つかったけどね。もちろん消されたぜ。


未だに熱い視線を送ってくる一結に気付かないふりをするため、姉妹の躍動する足を見続ける。

あぁ‥眼福なんだな。

視線に気づかれ鳴瀬姉妹から息の揃った目潰し頂きました。差し入れありがとうございます。



入り口付近でのたうち回る俺の後頭部に新しい訪問者のお告げが。
誰かが倒れている可能性を考えてドアを開けてください。
 

残りのメンバーがやっとお出ましたみたいだ。

一人はあの謎構造の被り物を発明した張本人のくるみ先輩と同じ2年の西園 鈴先輩。
くるみ先輩が満遍なく全教科優秀ならこの人は科学という分野において天元突破する程突き抜けている。
常に新しい何かの発明に向け頭を回転させている。

写真部に縁のない人だけど意外に友達思いの女の子。
入部理由はくるみ先輩がいるからだからね。
今も俺にドアをぶつけたことを謝りもせず、一直線にくるみ先輩へ抱きついている。
今日も見えなかった。
普段の姿が制服の上に白衣を羽織っている。実験での汚れ対策とお洒落らしい。そのため、白衣にしっかりと足元まで隠れてまだ鈴先輩の生足を拝めたことがない。一度、たまたまスライディングで急接近したけど目撃する前に薬品を嗅がされ意識を失ったことがある。
そう、たちの悪いことに鈴先輩はマッドサイエンティスト気質。
将来、別の意味でニュースに取り上げられないか心配です。


そして、最後に我が写真部の部長。
黒縁眼鏡と体中至る所に備え付けたいくつものカメラが印象的な斎藤 薩摩先輩。
学校のみんなからは侮蔑と嫌悪を込めて変態先輩と呼ばれている。

何故なら所持している全てのカメラは女性のあられもない艶姿を撮るためと豪語しているからだ。
実際に更衣室やプールに突撃取材を決行しようとした事もある。
俺も嫌々仕方なく付き合わされたことがある。本当だよ。
もちろん生徒指導の先生達に押さえつけられて頭に拳という熱烈なプレゼントを貰ったけどな。
それでもめげずに何度も挑戦する薩摩先輩に学校の男子生徒達は少なからず敬意を払っている。俺だってその一人。


以上、8名がこの写真部の錚々たる面子。
俺以外の部員は格好や言動、性格に難あり。これで分かってもらえただろう、写真部が変人の巣窟たる由縁を。


部室に置かれたホワイトボードの前に部長が立つ。自然と部員達の視線も部長に移る。


「遅くなって悪かったな。ちょっと剛田に捕まってた。」

「相変わらずっすね。」

くるみ先輩の犬ぐるみの表情も肥溜めに集る蝿を見ているようだ。

「心配ありがとう。次は成功してみせるから安心してくれ。」

反省の色なし。これは末期ですな。


この後は、いつものように活動が始まる。それぞれ撮影場所を提案して一つに絞ったら取りに行く。


残念ながら部長と俺が提案した女子トイレはくるみ先輩の鉄拳と鈴先輩のスタンガンによって却下されました。