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部員紹介、いいですか?
写真部は今日も愉快です
しおりを挟む学校中に鳴り響く授業の終わりを告げる鐘の音。
俺は教室の後ろにあるクラスの生徒全員に割り振られたロッカーに行く。
自分のロッカーに勉強道具一式を詰め込んでいく。
俺は家庭に仕事を持ち込まない主義。要は置き勉です。
鞄には教科書や筆箱を入れるスペースは残念ながら無い。
部活道具で隙間無く埋められているからだ。
さて、早く行こう。
「おい、陽司部活行こうぜ。」
俺は同じクラスの部活仲間、小山内 陽司に声をかける。
陽司は外見だけなら街に出れば毎回スカウトや女性、厳ついおじさんに声を掛けられるほどにはカッコいい。
小学校から妬ましいと思うくらいには仲良しだ。
声を掛けた今も女子に囲まれて爽やかな笑顔を振りまいている。
あいつは絶賛クラスの男子全員を敵に回している。至る所から怨嗟の声がもれている。俺もしとこう。
陽司はそんな声も何のそのといった風に囲んでいた女子達を軽くあしらいつつ、俺の元までやってきた。
「涼くん、お待たせ。」
俺にまで爽やかスマイルいらない。
ほら、後ろで女子達がハンカチ噛み締めて睨んでるから。
陽司の背中を押して逃げるように教室を出る。
「相変わらずのモテっぷり、羨ましいことですな。」
「そんなことないよ。彼女達に好かれても嬉しくないよ。」
皮肉に対してこの返し。
はい、今絶対色んな方面を敵に回しました。
「もう少し若かったら嬉しかったかもね。」
少し残念そうに苦笑する。
そう陽司はストライクゾーンに難がある。
低めしか狙おうとしないローヒッター。
と言っても、未だ打ったことはない。
本人曰く、「絶対してはいけない恋だから、せめて見守りたい。あわよくば戯れたい。」。
ほんの微かな欲が紛れた決意を聞いたからこそ、イケメンな外面をして妬ましいこいつとも仲良く友達でいられる。
そうこうしているうちに、校舎の隅の方にひっそりと佇む我らの部室に到着。
扉には写真部と貼られている。
そう俺と陽司は写真部所属。総勢8名の少数精鋭の部で学校のみんなから変人集団と噂されている。
俺はともかく陽司含む他の部員は確かに変な人達ばかり。俺を巻き込まないでほしいものだ。ただ好きなものを撮る為、日々部活で研鑽を積んでいるというのに。
中に入ると、すでに1人の人影が。
犬の顔をデフォルメさせたマスクを被った人がカメラの手入れを行なっていた。
その人はこの丘信濃高校一の有名人 柊 くるみ先輩。
通称 着ぐるみ先輩。同学年からは先輩ではなく着ぐるみちゃんと呼ばれてる。
常に何かしらの動物の被り物をしているためその異名がついた。
女子制服を着用してるので女性だと分かるが、素顔は未だに謎。見た人は誰も居ないらしい。
なんで先生達も何も言わないのか分からない。多分、散々注意したけど聞かなかったんだろう。
俺が初めて出会った時も猫の被り物をしてたしね。足の張りがとても理想的な印象だったな。この部で1番好きな足だ。出来ることなら枕にして悠久のひと時を過ごしたい。
「くるみ先輩、こんちわっす。今日も1番乗りなんですね。」
写真部のみんなは着ぐるみではなく、くるみに先輩やちゃんをつけて呼んでいる。特に理由はない。
俺達の挨拶にくるみ先輩は返事を返さない。こっちを向いてコクリと頷くだけ。というのも、基本無口な人。
感情を表す時は被っている動物の顔を変化させている。ニコリ顔に変えたり涙や怒りマークを出したりもする。
何がどうなっているのか分からない不思議な構造をした被り物。
これもまた我が写真部の部員産。
そのお陰でくるみ先輩はある意味表情豊かだ。
今も返事はないけど、犬の顔はニッコリと笑っている。
偶に部員の誰かが馬鹿やらかしたら鬼の鉄拳を食らわしてくるけど、大抵は優しい先輩。
挨拶を終え、俺たちは各々適当に席に座り、カメラを取り出してくるみ先輩を真似て手入れをする。
本格的な部活動は部員が揃ってから。
それまではこうやって手入れしたり雑談したり足を眺めたりと時間を潰す。
まあ、30分も経たないうちに全員が集まって来ると思うけどね。
ほら、早速この部室にドスドスと響く足音が聴こえてくる。
俺が少し苦手とする相手が扉を豪快に開けて入ってきた。
180を軽く超える図体の持ち主がのそりと現れ、1番扉近くに座っている俺と真っ先に目が合う。
「涼くん、昨日ぶり。また会えて嬉しい、きゃあ言っちゃった。」
角刈りのその子は、照れたように頬を赤く染め両手でそれを隠している。
勘弁してください、俺は普通です。
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