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第三話「俺達はいつも一緒!」
前編
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女神は来店してきた客を見て「あら」と驚いた。
今日の女神は髪をツインテールにくくり、白とショッキングピンクを基調としたスチュワーデスの格好をしている。店内も、平凡仙人が持って帰ってきた飛行機のぬいぐるみがソファに置かれていたり、壁に何処かの世界の世界地図が貼られていたりと、空港のアンテナショップ風に模様替えされていた。
「なんと、珍しい」
「ん? どうした?」
女神の向かいに座り、紅茶を振る舞われていた平凡仙人も入り口へ目を向ける。
そこにはラフな格好の男が三人いた。
「何だ? ここは」
「空港のアンテナショップみたいだね。修学旅行の時のことを思い出すよー」
「"モンスターに転生するなら、タカラジマ"? 変な広告だな」
男達はキョロキョロと店内を見回し、首を傾げる。お互い知り合いなのか、親しげに話していた。
「いらっしゃいませ、お客様! ほら、平凡仙人さんはそっちに座って!」
「へいへい」
女神は平凡仙人をソファへ追いやり、三人をカウンターの席に座らせた。
「三人同時に来客することなんて、あるんだな」
「滅多にないんですけどねー。亡くなったタイミングが同時だったり、生前に親交があったり、尋常じゃなく縁が深いと、こういうことも起こるんですよ。いわゆる、ソウルメイトってやつですね」
三人の中で一番ガタイのいい男が、女神と平凡仙人の会話を聞き「そうかもしれませんね」と頷く。
「俺達、生まれる前からの付き合いなんですよ。母親が同じ病院で、幼馴染でした。まさか、死んだタイミングまで一緒だとは思いませんでしたけどね」
男は愉快そうに「ガハハ」と笑い、手を叩く。
しかし彼を見る他の二人の視線は、冷ややかだった。呆れているというよりは嫌悪に近く、男が言うような親しい間柄には見えなかった。
「死んだ時は二人と一緒じゃなかったのか?」
平凡仙人は男の言葉と、二人の態度が気になり、尋ねた。
すると男は首をひねり、言った。
「それが……覚えてないんすよ」
「……覚えてない?」
平凡仙人はお面の下で怪訝そうに眉をひそめる。
彼自身も、今まで見てきた死者も、自分の死の瞬間のことはハッキリと覚えていた。生前は認知症で、介護なしではまともに生活できなかったという死者も、ここでは若い姿に戻り、鮮明に記憶を思い出せていた。
「どういうことだ?」
平凡仙人はたまらず、女神に尋ねた。
女神はピンクの瞳を爛々と輝かせ、ニッコリと笑った。
「おそらく、記憶に支障が出るほどのアクシデントが死の間際に起こったのでしょう。詳しいことは、お客様の個人情報ですので、お教え出来かねますが」
そう答える女神の目は笑っていなかった。平凡仙人は「この前、転生に口出しした腹いせか?」とも思ったが、女神がそんな幼稚な嫌がらせをするとは思えなかった。
(……あいつがするのは、もっとエグい嫌がらせだ。俺が予想もつかない何かを、あいつは握っているに違いない)
今日の女神は髪をツインテールにくくり、白とショッキングピンクを基調としたスチュワーデスの格好をしている。店内も、平凡仙人が持って帰ってきた飛行機のぬいぐるみがソファに置かれていたり、壁に何処かの世界の世界地図が貼られていたりと、空港のアンテナショップ風に模様替えされていた。
「なんと、珍しい」
「ん? どうした?」
女神の向かいに座り、紅茶を振る舞われていた平凡仙人も入り口へ目を向ける。
そこにはラフな格好の男が三人いた。
「何だ? ここは」
「空港のアンテナショップみたいだね。修学旅行の時のことを思い出すよー」
「"モンスターに転生するなら、タカラジマ"? 変な広告だな」
男達はキョロキョロと店内を見回し、首を傾げる。お互い知り合いなのか、親しげに話していた。
「いらっしゃいませ、お客様! ほら、平凡仙人さんはそっちに座って!」
「へいへい」
女神は平凡仙人をソファへ追いやり、三人をカウンターの席に座らせた。
「三人同時に来客することなんて、あるんだな」
「滅多にないんですけどねー。亡くなったタイミングが同時だったり、生前に親交があったり、尋常じゃなく縁が深いと、こういうことも起こるんですよ。いわゆる、ソウルメイトってやつですね」
三人の中で一番ガタイのいい男が、女神と平凡仙人の会話を聞き「そうかもしれませんね」と頷く。
「俺達、生まれる前からの付き合いなんですよ。母親が同じ病院で、幼馴染でした。まさか、死んだタイミングまで一緒だとは思いませんでしたけどね」
男は愉快そうに「ガハハ」と笑い、手を叩く。
しかし彼を見る他の二人の視線は、冷ややかだった。呆れているというよりは嫌悪に近く、男が言うような親しい間柄には見えなかった。
「死んだ時は二人と一緒じゃなかったのか?」
平凡仙人は男の言葉と、二人の態度が気になり、尋ねた。
すると男は首をひねり、言った。
「それが……覚えてないんすよ」
「……覚えてない?」
平凡仙人はお面の下で怪訝そうに眉をひそめる。
彼自身も、今まで見てきた死者も、自分の死の瞬間のことはハッキリと覚えていた。生前は認知症で、介護なしではまともに生活できなかったという死者も、ここでは若い姿に戻り、鮮明に記憶を思い出せていた。
「どういうことだ?」
平凡仙人はたまらず、女神に尋ねた。
女神はピンクの瞳を爛々と輝かせ、ニッコリと笑った。
「おそらく、記憶に支障が出るほどのアクシデントが死の間際に起こったのでしょう。詳しいことは、お客様の個人情報ですので、お教え出来かねますが」
そう答える女神の目は笑っていなかった。平凡仙人は「この前、転生に口出しした腹いせか?」とも思ったが、女神がそんな幼稚な嫌がらせをするとは思えなかった。
(……あいつがするのは、もっとエグい嫌がらせだ。俺が予想もつかない何かを、あいつは握っているに違いない)
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