悪夢症候群

緋色刹那

文字の大きさ
上 下
146 / 227
悪夢薔薇色 第三話『こだわりの青』

しおりを挟む
 青海泥は感情のままに怒り狂った。
「まっず! なんてもん飲ませるんだ! パパに言いつけるぞ!」
 しかし美女はいつの間にか消えていた。
 周りの学生はジロジロと青海泥を横目で見ながら去っていく。中には笑いながら青海泥にスマホのカメラを向ける者までいた。常に注目されたくて仕方ない青海泥にとっては、これ以上ないほど心地良い視線だ。
「何だ、何だ? やっと俺の素晴らしさが分かったのか?」
 青海泥はカメラに向かって微笑み、ポーズを取る。
 すると集まった学生達からドッと笑いが起こった。
何、あいつキモっ! ウケるんだけどバカじゃないの?!」
「(生きてる価値)ナイわー」
「全身青って(ダサ)! SNSでバズらせようぜ晒そうぜ
 反応とは裏腹に、悪意ある本音が重なって聞こえた。
 最初は空耳かと思った。しかしよくよく学生達の顔を確認すると、彼らは言葉通り、青海泥を心の底から馬鹿にした笑みを浮かべていた。
「お、お前ら何なんだよ! 人のこと馬鹿にしやがって! オシャレが分からねーお前らの方が馬鹿なんだからな! 被害者の気持ちも少しは考えろよ!」
 青海泥は泣きそうになりながら、その場から逃げ出した。

 道中、窓に映った自分の姿を見てギョッとした。
 青海泥の体は隅から隅まで青く染まっていた。頭の先から足の先まで。口の中までも青くなっていた。
「な……」
 青海泥は豹変した自分の姿に、一瞬言葉を失ったが、
「な、なーんだ! すっげーオシャレになったじゃん! この良さが分からないとか、やっぱアイツら、センス終わってるわー」
 と、すぐに立ち直った。
 青海泥にとって、青は究極的にオシャレな色。その色で全身染まることは、己がオシャレそのものになることを意味していた。むしろ、なぜ今までこの発想に至らなかったのかと後悔した。
「やっぱあのオネーさん、俺のこと好きなんじゃネ? 俺の思考分かってるとか、運命感じるんだけどぉ」
 一転して、青いコーヒーをくれた美女に感謝した。
 今の青海泥にとって、彼女は女神だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【お願い】この『村』を探して下さい

案内人
ホラー
 全ては、とあるネット掲示板の書き込みから始まりました。『この村を探して下さい』。『村』の真相を求めたどり着く先は……? ◇  貴方は今、欲しいものがありますか?  地位、財産、理想の容姿、人望から、愛まで。縁日では何でも手に入ります。  今回は『縁日』の素晴らしさを広めるため、お客様の体験談や、『村』に関連する資料を集めました。心ゆくまでお楽しみ下さい。  

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

【本当にあった怖い話】

ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、 取材や実体験を元に構成されております。 【ご朗読について】 申請などは特に必要ありませんが、 引用元への記載をお願い致します。

処理中です...