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ミッドナイトアパート 第四話『毒を喰らわば、孫までも』
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それから一週間後の日曜日。
夢花がスケッチをしに公園へ赴くと、シキミがベンチで佇んでいた。前に会った時と同じく痩せたままだったが、その顔は晴れやかだった。
「シキミお姉さん、こんにちは。何か良いことでもあった?」
「あっ、夢花ちゃん!」
シキミは夢花を見るなり、慌てて立ち上がり「ありがとう」と礼を言った。
「夢花ちゃんに相談してすぐ、お義母さんが死んだの。隠し持ってた毒草を飲んで、窒息死したのよ。私は危うく殺人犯として捕まるところだったけど、夢花ちゃんがアリバイを証明してくれたおかげで助かったわ。本当にありがとう」
「いいの、いいの。私は本当のことを刑事さんに言っただけだから」
シキミと会った後の夜、警察がシキミの証言を裏付けるため、夢花の元を訪れていた。
夢花はシキミと公園で話したこと、その後は家まで送り届けたこと、送り届けた後も心配で暫く家の前にいたが、争うような声や音は聞いていないことなどを、正直に話した。
警察はそれらの夢花の証言を踏まえ、遺体や現場に残されていた証拠から、「シキミの義母は自ら毒草を飲み、自殺した」と断定した。
「義理のお母さんが死んで良かったね。これからは旦那さんと二人きりで過ごせるね」
するとシキミは「それが……」と顔を曇らせた。
「お義母さんが死んだのと同じ時間に、夫も出張先でフグの毒にあたって亡くなってしまったの。きっと、お義母さんが連れて行ったのね」
「そうだったんだ……シキミお姉さん、一人になって可哀想」
夢花はシキミを思い、涙を浮かべる。
シキミは「夢花ちゃんは優しい子ね」とハンカチで夢花の涙を拭った。
「良かったら、いつでも遊びに来てね。職場復帰出来るまでは、家で療養するつもりから」
「本当?!」
途端に、夢花の表情がパッと明るくなった。
「じゃあ、今から行ってもいい? 私のお父さんも、一緒に!」
「い、いいけど、どうして夢花ちゃんのお父さんも一緒なの?」
急な頼みに、シキミは戸惑う。
夢花は瞳を潤ませ、懇願した。
「お願い! お父さんにお姉さんのこと話したら、"力になりたい"って言ってたの! 私じゃ大人の気持ちは全部理解出来ないし、お父さんならお姉さんの気持ちを分かってくれると思う!」
「そ、そう? それなら……お願いしようかな」
「じゃあ、一緒にお父さんを呼びに行こっ!」
「わっ、私も?!」
夢花はシキミの手を取ると、彼女と共に夢見荘へ向かった。
シキミは戸惑いながらも、夢花について行く。緊張した面持ちで、身なりを気にしていた。
(……良かった。上手く、旦那さんも殺せて)
夢花は屈託のない満面の笑みを浮かべながら、心の中で冷笑していた。
(お姉さんは私のお母さんにするんだもん。意地悪なお婆さんも邪魔な旦那さんも、いらない)
ミッドナイトアパート第四話「毒を喰らわば、孫までも」終わり
夢花がスケッチをしに公園へ赴くと、シキミがベンチで佇んでいた。前に会った時と同じく痩せたままだったが、その顔は晴れやかだった。
「シキミお姉さん、こんにちは。何か良いことでもあった?」
「あっ、夢花ちゃん!」
シキミは夢花を見るなり、慌てて立ち上がり「ありがとう」と礼を言った。
「夢花ちゃんに相談してすぐ、お義母さんが死んだの。隠し持ってた毒草を飲んで、窒息死したのよ。私は危うく殺人犯として捕まるところだったけど、夢花ちゃんがアリバイを証明してくれたおかげで助かったわ。本当にありがとう」
「いいの、いいの。私は本当のことを刑事さんに言っただけだから」
シキミと会った後の夜、警察がシキミの証言を裏付けるため、夢花の元を訪れていた。
夢花はシキミと公園で話したこと、その後は家まで送り届けたこと、送り届けた後も心配で暫く家の前にいたが、争うような声や音は聞いていないことなどを、正直に話した。
警察はそれらの夢花の証言を踏まえ、遺体や現場に残されていた証拠から、「シキミの義母は自ら毒草を飲み、自殺した」と断定した。
「義理のお母さんが死んで良かったね。これからは旦那さんと二人きりで過ごせるね」
するとシキミは「それが……」と顔を曇らせた。
「お義母さんが死んだのと同じ時間に、夫も出張先でフグの毒にあたって亡くなってしまったの。きっと、お義母さんが連れて行ったのね」
「そうだったんだ……シキミお姉さん、一人になって可哀想」
夢花はシキミを思い、涙を浮かべる。
シキミは「夢花ちゃんは優しい子ね」とハンカチで夢花の涙を拭った。
「良かったら、いつでも遊びに来てね。職場復帰出来るまでは、家で療養するつもりから」
「本当?!」
途端に、夢花の表情がパッと明るくなった。
「じゃあ、今から行ってもいい? 私のお父さんも、一緒に!」
「い、いいけど、どうして夢花ちゃんのお父さんも一緒なの?」
急な頼みに、シキミは戸惑う。
夢花は瞳を潤ませ、懇願した。
「お願い! お父さんにお姉さんのこと話したら、"力になりたい"って言ってたの! 私じゃ大人の気持ちは全部理解出来ないし、お父さんならお姉さんの気持ちを分かってくれると思う!」
「そ、そう? それなら……お願いしようかな」
「じゃあ、一緒にお父さんを呼びに行こっ!」
「わっ、私も?!」
夢花はシキミの手を取ると、彼女と共に夢見荘へ向かった。
シキミは戸惑いながらも、夢花について行く。緊張した面持ちで、身なりを気にしていた。
(……良かった。上手く、旦那さんも殺せて)
夢花は屈託のない満面の笑みを浮かべながら、心の中で冷笑していた。
(お姉さんは私のお母さんにするんだもん。意地悪なお婆さんも邪魔な旦那さんも、いらない)
ミッドナイトアパート第四話「毒を喰らわば、孫までも」終わり
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