128 / 227
悪夢極彩色 第一話『嵐の悪夢 side夢花』
1
しおりを挟む
「えー?! まだ書いてないの? 提出してないの、野々原さんだけよ?」
夢花の爽やかな朝の読書タイムは、学級委員長の耳障りな声によって、中断を余儀なくされた。周囲に聞こえるよう、わざと声のボリュームを上げて発したのは明らかだった。
教室中のクラスメイト達が学級委員長と相手の女子に注目し、クスクスと嗤っていた。
「早く出してくれないと、私が困るんだけど」
「ご、ごめんなさい。明日は必ず書いて持ってくるから」
相手の女子は青ざめ、謝る。見るからに気の弱そうな女子だった。
(確か、野々原ちゃんだったっけ? 下の名前は知らないなぁ)
夢花は本を閉じ、二人と、二人を見る周囲の動向を観察することにした。
夢花はこの春、地元を離れて都会の私立高校へ進学した。高校には夢花を知っている人間は誰もおらず、快適な学生生活を送っていたものの、いじめを容認している今のクラスの雰囲気を好きにはなれなかった。
「ほんと、早くしてよね。怒られるのは私なんだから」
学級委員長は苛立った様子で自分の席へと戻り、席が近い友人達との会話に花を咲かせる。
彼女は眼鏡をかけた真面目そうな生徒で、常にクラスメイト一人一人を気にかけているように装っていた。
実際は、他人を見下し、弱者を笑い者にしている、最低のリーダーで、最近はあの野々原という生徒をターゲットにしていた。その気質がどことなく、夢花の小学生の頃の同級生達を思わせ、夢花は彼女を密かに嫌っていた。
「はぁ……」
野々原も自分の席へと座り、重く息を吐く。耳を澄ますと、小声で「まただ。また他の人を苛立たせてしまった。全部、私のせいだわ」と己を責めていた。
二人のやり取りが終わると、クラスメイト達は何事もなかったように会話に戻り、談笑する。誰一人として、野々原を気にかける様子はなかった。
(よし、殺そう)
入学して一ヶ月。ようやく夢花は決断し、ニッコリと微笑んだ。
その目は笑っておらず、明らかな殺意に満ちていた。
夢花の爽やかな朝の読書タイムは、学級委員長の耳障りな声によって、中断を余儀なくされた。周囲に聞こえるよう、わざと声のボリュームを上げて発したのは明らかだった。
教室中のクラスメイト達が学級委員長と相手の女子に注目し、クスクスと嗤っていた。
「早く出してくれないと、私が困るんだけど」
「ご、ごめんなさい。明日は必ず書いて持ってくるから」
相手の女子は青ざめ、謝る。見るからに気の弱そうな女子だった。
(確か、野々原ちゃんだったっけ? 下の名前は知らないなぁ)
夢花は本を閉じ、二人と、二人を見る周囲の動向を観察することにした。
夢花はこの春、地元を離れて都会の私立高校へ進学した。高校には夢花を知っている人間は誰もおらず、快適な学生生活を送っていたものの、いじめを容認している今のクラスの雰囲気を好きにはなれなかった。
「ほんと、早くしてよね。怒られるのは私なんだから」
学級委員長は苛立った様子で自分の席へと戻り、席が近い友人達との会話に花を咲かせる。
彼女は眼鏡をかけた真面目そうな生徒で、常にクラスメイト一人一人を気にかけているように装っていた。
実際は、他人を見下し、弱者を笑い者にしている、最低のリーダーで、最近はあの野々原という生徒をターゲットにしていた。その気質がどことなく、夢花の小学生の頃の同級生達を思わせ、夢花は彼女を密かに嫌っていた。
「はぁ……」
野々原も自分の席へと座り、重く息を吐く。耳を澄ますと、小声で「まただ。また他の人を苛立たせてしまった。全部、私のせいだわ」と己を責めていた。
二人のやり取りが終わると、クラスメイト達は何事もなかったように会話に戻り、談笑する。誰一人として、野々原を気にかける様子はなかった。
(よし、殺そう)
入学して一ヶ月。ようやく夢花は決断し、ニッコリと微笑んだ。
その目は笑っておらず、明らかな殺意に満ちていた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
実話の体験談につきオチなど無いのでご了承下さい
七地潮
ホラー
心霊体験…と言うか、よくある話ですけど、実際に体験した怖かった話しと、不思議な体験を幾つかアップします。
霊感なんて無いんだから、気のせいや見間違いだと思うんですけどね。
突き当たりの教室なのに、授業中行き止まりに向かって人影が何度も通るとか、誰もいないのに耳元で名前を呼ばれたとか、視界の端に人影が映り、あれ?誰か居るのかな?としっかり見ると、誰も居なかったとか。
よく聞く話だし、よくある事ですよね?
まあ、そんなよく聞く話でしょうけど、暇つぶしにでもなればと。
最後の一話は、ホラーでは無いけど、私にとっては恐怖体験なので、番外編みたいな感じで、ついでに載せてみました。
全8話、毎日2時半にアップしていきます。
よろしければご覧ください。
2話目でホラーHOTランキング9位になってました。
読んでいただきありがとうございます。
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
感染
saijya
ホラー
福岡県北九州市の観光スポットである皿倉山に航空機が墜落した事件から全てが始まった。
生者を狙い動き回る死者、隔離され狭まった脱出ルート、絡みあう人間関係
そして、事件の裏にある悲しき真実とは……
ゾンビものです。
岬ノ村の因習
めにははを
ホラー
某県某所。
山々に囲われた陸の孤島『岬ノ村』では、五年に一度の豊穣の儀が行われようとしていた。
村人達は全国各地から生贄を集めて『みさかえ様』に捧げる。
それは終わらない惨劇の始まりとなった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる