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第6章「ザマスロットと対決、ざまぁ!」

第一話

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 聖剣エクスザマリバーが眠る湖があるのは、何の変哲もない森だった。
 あまりにも特徴がなさ過ぎて、森の前に立ったヨシタケとザマビリーは目を疑った。

「おいおい、本当にここに聖剣があんのか?」
「ザマルタさんがいた教会の森と変わらないように見えるな」
「森の奥から清浄で強力な魔力が漂ってる……間違いなく、ここだよ」

 ノストラの言葉に、ザマルタとダザドラも頷く。

「私もぼんやりとですが、感じます。森の前にいるだけで癒されるというか、心が洗われるというか……」
「まさしく聖域だな。我がいた場所とは真逆だ。悪しきものが立ち入れられぬよう、結界が施されておる。これでは魔王も手出しできんだろうな」

 その時、ヨシタケ達が来た道の反対側から「嘘ぉ?!」と声が聞こえた。
 見ると、ザマスロット達を荷台に載せた馬車がこちらに向かって猛スピードで走ってきていた。ザマスロット達は馬車の荷台から身を乗り出し、もどかしそうにヨシタケ達を睨んでいる。
 遅れてやって来たザマスロット達に、ヨシタケは別の意味で驚いた。

「嘘ぉ?! あいつら、俺を置いていったのに、俺より遅れてるんだが!」
「マジで?! だったら、今のうちに聖剣抜きに行っちゃおうぜ!」

 ザマビリーはザマスロット達を出し抜こうと、森へ駆け込む。
 直後、

「はいストップー」
「へぶっ?!」

 木の上からザマァーリンが落下し、ザマビリーの頭を踏み潰すように降り立った。
 あまりの衝撃にザマビリーは地面に倒れ、身動きが取れなくなった。

「キャーッ! 空から見知らぬ女の人が降ってきましたよ?!」
「ザマビリー、大丈夫か?!」
「刺さってる! ヒールが帽子に刺さってるッ!」

 慌ててヨシタケ達はザマビリーに駆け寄る。

「あー、ごめんごめん。いいクッションを見つけたものだから、つい」

 ザマァーリンは「悪い」とは微塵も思っていない様子で謝り、地面へ降りる。
 正体を明かすつもりはないらしく、弟子であるノストラと目が合うと、口の前に人差し指を当て、ウィンクした。

「でも、感謝したまえよ? あのまま私が止めていなければ、森の掟に反するところだったんだから」
「森の掟?」

 そこへ馬車から降りたザマスロット達が追いついた。

「ヨシタケ! 貴様、なぜここにいる?!」
「てっきりあのまま死んだか、ママのとこに逃げたかと思ってたんだがなぁ~」
「しぶとい奴。今度は護衛まで連れてるなんて」

 ザマスロット達は亡霊でも見るような目で、ヨシタケを凝視する。本当にヨシタケか疑っているらしい。
 その不愉快極まりない態度に、ヨシタケは「なぜここにいるのか、だと?」と睨みつけた。

「お前らこそ、俺を闇討ちしといてよくノコノコと来れたもんだなぁ! 国民はだませても、俺達はだまされねぇぞ!」

 怒るヨシタケに続き、仲間達もザマスロット達に食ってかかる。

「俺達は護衛じゃねぇ! 仲間だ!」
「ヨシタケさんは一日で百万ザマドルを稼いだお方です! そう簡単にへこたれません!」
「貴様らからは嘘の臭いがするな……勇者のパーティとは思えん臭いだ」
「メルザマァル先輩、おひさでーす。せっかくなので、ぶちのめしに来ましたよー」

 ザマルタとザマビリーは怒り、ダザドラはきな臭そうに睨みつけ、ノストラはメルザマァルを挑発する。
 二者の空気がピリつく中、ザマァーリンが「すとーっぷ!」と仲裁した。

「君達、知らないのかい?! 聖剣が眠るこの森の中では、いかなる争いもしてはならないという掟があるんだよ?! ルール違反で聖剣を抜けないなんて、嫌だろう? 安全に抜きたいなら、森の外で"正々堂々と"順番を決めようじゃないか!」
「じゃんけんでもするのか?」
「いいや?」

 ザマァーリンはニヤリと笑い、言った。

「パーティ同士で決闘するのさ。前衛三人、後衛一人の四人対戦でね。先に全員倒れた方が負けさ。ダザドラ君は君の召喚獣扱いだから、仲間に入れても問題ない」

 するとザマァーリンの提示したルールを聞いたザマスロットが「ちょっと待って下さい」と意見した。

「どこのどなたか存じませんが、それでは我々が圧倒的に不利ではありませんか? こちらは三人、向こうは召喚獣を含めて四人と一匹……いくら我々が勇者パーティとはいえ、不公平です」
「おや、三人じゃ勝てる自信がないのかい? 相手は君達が"ポンコツ"と呼んで追放した、あのヨシタケ君のパーティだというのに?」
「……なぜそれを知っている? ヨシタケから聞いたのか?」

 途端に、ザマスロット達は殺気立つ。
 賢者であるメルザマァルもザマァーリンの正体に気づいていないらしく、不敬にも彼女を睨んでいた。

「そんなに怒らないでおくれよ。私もこう見えて、魔女の端くれなんだからさ。知っててもおかしくはないだろう?」
「……」

 なおも敵意を剥き出しにするザマスロット達に、ザマァーリンは「ではこうしよう」と、とんでもないことを提案した。

「私が君達のパーティの四人目のメンバーになってあげる。前衛か後衛かは君達で決めたまえ」
「えぇぇっ?!」
「嘘だろ?!」
「本気ですか?! 師……謎のお姉さん!」

 ザマァーリンの提案に、彼女の正体を知るヨシタケ、ダザドラ、ノストラは青ざめる。
 ザマァーリンは「もちろん」と笑顔で頷いた。

「コテンパンにしてあげるから、期待していてくれたまえよ?」
「……終わった」
「あぁ……」
「せめて、ザマスロット達がこの提案を拒否してくれればいいんだけど……」

 一縷の望みをかけ、ザマスロット達の答えを待つ。
 ザマスロットは仲間と小声で話し合った末、穏やかな笑みを浮かべ、ザマァーリンに握手を求めた。

「後衛で頼む」
「オッケー!」

 ザマァーリンも笑顔で握手に応じる。
 ヨシタケとノストラガクッと膝から崩れ落ちた。ダザドラもヨシタケの肩の上で項垂れていた。

「ダメだったか……」
「ダメだったね……」
「敗北する心の準備を済ませておかねばならんな……」

 ザマルタとザマビリーはなぜ彼らがここまでショックを受けているのか理解できず、戸惑った。

「おいおい、勝負する前から負けた気になってんじゃねぇよ! ザマスロットをざまぁするんだろ?!」
「や、そのつもりだったんだが……」
「勝てますって! 助っ人と言っても、後衛なんですから!」
「あの人は後衛でも強いんだよ……前衛かと思うくらい」
「後衛は後衛です! 前衛じゃありません!」

 必死にザマルタとザマビリーが励ましても、二人と一匹は戦意を失ったままだった。

「……よく分からんが、彼女はあいつらにとって天敵だったらしい」
「あれなら楽勝じゃね?」

 ザマスロット達は勝利を確信し、ニヤニヤと笑う。
 ザマァーリンも彼らの隣で笑みを浮かべていたが、その目はヨシタケ達への期待を帯びていた。
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