追放されたら美少女を拾った件~ついでにトンデもないオマケもついてきた

風の吹くまま気の向くまま

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17.ナナにモンスターを攻撃させてみた

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3日目4


『封魔の大穴』入り口に戻って来た俺は悩んでいた。
順当にいけば、次は6層目ってトコだけど……
今の俺はレベル312。
腕力ならマルコやハンスを圧倒していたし、マルコの剣閃けんせんすら見極める事が出来ていた。
もう少し深い層に潜ってみてもいいんじゃないかな。
モンスターを斃した時の魔石の値段も上がるし。
ただ……

俺はチラッとナナに視線を向けた。

現状、ナナのレベルや能力がさっぱり分からない。
確か義務がどうとかで、ナナを死なせるなって話になっていた。
彼女を危険にさらすわけにはいかないだろう。
とすれば、やはり彼女の能力、可能な限り、聞き出すしかないか……

俺はナナに聞いてみた。

「自分が使える魔法とか、分かる?」
「ま……ほう?」
「そう魔法。ほら、俺の傷を癒してくれたりした、ああいうやつ」

ナナはなぜか小首を傾げて固まってしまった。
まさか……

「なあ、魔法は知っているよな?」
「まほ……う?」

さっきと区切る場所が変わっているけれど、間違いない。

彼女は魔法を知らない!
或いは、概念としての魔法を覚えていない?

とは言え、俺も魔法は使えないんだけど。

「例えばだけど、モンスターを離れた場所から攻撃する手段ってある?」

ナナは困ったような顔になった。

「わから……ない……」

仕方ない。
実戦で確かめてみよう。
俺はナナと一緒に、再び1層へと足を踏み入れた。
しばらく歩くと、スライムが1匹出現した。
俺達の世界最弱のモンスターだ。
冒険者でなくても、こいつに瞬殺される人間は、さすがに存在しない。

俺はナナにささやいた。

「どんな方法でもいいから、あいつを攻撃してみて」

ナナは頷くと、スライム目掛けてトテテと駆け寄った。
そしてやおら手刀の如く右手を振り上げると、スライム目掛けて振り下ろした。


―――ドゴゴオオオン!


凄まじい大音響とともに、スライムが消し飛んだ。
同時に、モンスターを斃した事を告げるポップアップが立ち上がる。

ていうか、今のナニ?
ナナは手刀、つまりただのチョップをスライムに食らわせたはず。
なんで大音響が鳴り響いているんだ?
まさか、ナナ、格闘系のスキルか何か持っているのか?

ナナがそっとこちらを振り返った。
心なしか不安そうな表情に見える。
気を取り直した俺は、サムズアップを決めながら、彼女に満面の笑みを向けた。

「さすがだな!」

ナナの表情が和らいだ。


ナナのさっきの手刀攻撃必殺チョップの威力からして、もう少し深い層でもいけるんじゃないかな?
そう考えた俺は、今度は10層に潜ってみた。
しばらく歩くと、ボーパルバニーが現れた。
見た目も大きさも愛くるしい白兎なモンスターだ。
ただし、身長と同じ位長く鋭利な門歯を持つ肉食のモンスターだけど。

俺はナナに囁いた。

「さっきと違う方法で、あいつを攻撃してみて」

ナナは頷くと、先程同様、トテテという感じでボーパルバニーに無造作に近付いて行く。
ボーパルバニーは、先程のスライムとは異なり、動きも素早く、攻撃力も同レベルのモンスターの中では一番高い。
当然、跳ねて距離を取りにかかるか、強烈な一撃を見舞って来るか……
俺は、彼女が攻撃されたらいつでも助けに入れるよう身構えた。

しかし……

ナナが目の前に来ても、なぜかボーパルバニーは可愛い姿勢のまま固まったように動かない。
そして……

せーの、といった雰囲気で、ナナがボーパルバニーを蹴り上げた。


―――ドガガガガアン!!


凄まじい大音響とともにボーパルバニーが消し飛んだ。
そしてモンスターが斃された事を告げるポップアップが立ち上がった。
……
うん。
確定。
ナナは間違いなく格闘系のスキル、それも結構凄いスキル持ちに違いない。
あと、相手を委縮させるスキルも持っている可能性が高い。
そうでなければ、あのボーパルバニーが、ただ蹴り殺されるのを甘んじて受け入れた事に説明がつかない。

「ナナ、凄いじゃないか!」

俺の手放しの賞賛に、彼女の頬がほんのり朱に染まった。

「カースが……いて……くれる……から……」

ハッキリ言って、ナナの手刀攻撃必殺チョップ足蹴り攻撃必殺キックに、俺の存在関係ないとは思うけど。
それはともかく、ナナが素手でもこれだけ強いのは、嬉しい誤算だ。
次は、20層にもぐってみよう。


20層に入ってしばらく歩くと、もやのようなモンスター、ガスクラウドが現れた。
こいつは、物理攻撃が効きづらいことで有名なモンスターだ。
ちょうどいい。
ナナが攻撃魔法を使用出来るかどうか、確認してみよう。
と言っても、ナナは“魔法”という言葉を覚えていなさそうだったから……

俺は少し言い方を考えてから、ナナに囁いた。

「今度はあいつに触れる事無く、攻撃してみて」

ナナは少し小首を傾げた後、やおら右手をガスクラウドに向けて突き出した。
次の瞬間!


―――ドグワアアァァン!


凄まじい閃光が走ったと思う間も無く、モンスター打倒を知らせるポップアップが立ち上がった。
……
え~と……
今のは、攻撃魔法……なのかな?
攻撃魔法って、簡単なのはともかく、高威力のヤツって、詠唱したり、魔法陣展開したりとかするんじゃなかったっけ?
まあ俺は魔法使えないから、詳しくは分からないけれど。

気付くと、ナナが不安げに俺を見上げていた。
俺は満面の笑みを浮かべながら、彼女の頭を撫でた。

「凄いじゃないか! さすがだな!」

ナナは、俺に撫でられている間中、目を細めて嬉しそうにしている。
うん、可愛い。
それにもしかして、ナナは物凄く高スペックなんじゃなかろうか?
格闘良し、攻撃魔法良し、回復魔法良し。
三拍子揃ったオールラウンドプレイヤーってやつだ。
【黄金の椋鳥】の連中に殺されかかって、大穴の底に投げ落とされた時には、心底神様ってやつを呪ったけれど、ナナとの出会いのきっかけを作ってくれたと思えば、あいつらにも少しだけ感謝したくなるから、人間とは不思議な生き物だ。

さて次は……
30層……に潜ってみよう。
まあ俺もレベル312だ。
ナナもこれだけ強いんだ。
そんなに危険な事にはならないだろう。


30層に足を踏み入れた俺は、ナナと一緒に用心深く奥へと進んで行った。
歩き出して数分で、巨大な一対の牙が特徴的なベビージャガーが出現した。
相手との距離は、数m。
俺はナナに囁いた。

「ここは俺に任せて。あ、もし相手に触れずに相手の動きを止めたりする事出来るんだったら、やってみて」

ナナは支援系の魔法は使えるんだろうか?
そんな気持ちで口にした言葉だったのだが。
俺はショートソードを構えると、慎重にベビージャガーとの間合いを詰めていった。
と、俺は、ベビージャガーが小刻みに震えている事に気が付いた。
しかもやつの視線は俺の方を向いていない。

なんだ?

俺はベビージャガーの視線の先を確認してみた。
そしてそこにふくれっ面をしてベビージャガーを睨んでいるナナの姿を発見して、思わず吹き出しそうになった。

もしかして、ベビージャガー、単にナナに睨まれて(アレが震える程怖い顔かどうかはさておき)震えているだけ? 
それとも、アレはちゃんとした威圧系のスキルか何か?

判断がつきかねた俺は、ともかく、モンスターを斃す事にした。
結局、俺が距離を詰め切るまで、ベビージャガーは、とうとう一歩も動こうとはしなかった。
間合いに入った所で、俺は無造作に右手のショートソードを振り抜いた。


―――バシュッ!


一撃でベビージャガーの首が飛び、光の粒子となって消えていく。
そして……


―――ピロン♪


『ベビージャガーを斃しました』
『経験値53を獲得しました』
『ベビージャガーの魔石が1個ドロップしました』


俺はベビージャガーの魔石を拾い上げてから、ナナの方を振り向いた。
彼女が笑顔で駆け寄ってきた。

「睨んで……動けなく……した……」

うん。
そのまんまだ。
しかし、と言う事は、アレふくれっ面はやはり威圧系のスキルって事だろう。

俺はナナの頭を撫でてから、もう少し深い層に向かう事にした。

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