あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

第95話 ぬらりひょんとほうとう②～まさかの展開～

「ただいま戻りましたーー」

　玄関から篝先生の声がしてきた。どうやら母親が玄関で出迎えてくれるようなので、私達は食卓を拭いたりお箸や器を持っていったりと準備をする。
　すると篝先生が食卓へとやってきた。

「今夜はほうとうですか。豪華ですね」
「ぬらりひょんがそう言う気分だったから」
「成程、温まりそうでいいですねえ」

　全員食卓についた所で、手を合わせて挨拶をしてから夕食を頂く事になる。ほうとうが盛られた器は熱々だ。
　まずはお汁をすすると、熱さと味噌の風味と野菜から出ただしが一気に口の中に入ってきた。

「うん、美味しい！

　とろみがあるので、口当たりがまろやかなのも食べやすくて良い。次には野菜を箸でつまんで食べる。柔らかくくたくたに煮込まれているのでこれも食べやすくて美味しい。

「ぬらりひょん、どう？」
「……美味しい！　うどんもちもちしてて、だしも効いてて美味しい！」

　ご満悦のようだ。ぬらりひょんはえへへっと笑みを浮かべながら、お箸を上手に使って食べ進めていく。
　更にぬらりひょんは麦ごはんのおにぎりを、ほうとうの中に入れて崩して食べ始めた。

「こうしたらもっと美味しい」

　私もやってみようとしたが、母親からの目線がきついように思えたのでやめた。私が言うのもなんだが確かに財閥の令嬢が進んでやるような食べ方では無い……。

「千恵子姉ちゃんはやんないの？」
「うん、このままでも美味しいから」

　それにしても少し平ためのうどんはもちもちと歯ごたえのある食感で食べ応えがある。野菜から出ただしやみその風味もしっかりとうどんの中に染みこんでいるのが分かる。

「篝先生、どうですか？」

　私は篝先生に味を伺ってみた。

「ええ、とても美味しいです。軍でもこの食事を採用してみてはいかがとは思いましたね」
「ほんとですか？！」
「ええ、はい。今度調理担当に話をしてみる事にします」

　思わぬ発展に私は口が塞がらない。沼霧さんも母親も驚いている。まさかうちで作った料理が、陸軍の食事に採用される可能性が出てくるとは……。

「千恵子、沼霧さん、すごいわよ！」
「で、ですよね……！　どうなるか、楽しみです」
「まだ決まった訳ではありませんが、明日にでもお伝えしたいと思います。野菜と主食が一緒に取れて食べ応えもある品ですから、栄養にもよさそうでしょう」

　私は篝先生に、ありがとうございます！と感謝の意を示したのだった。

「いえいえ、とても美味しいですよ」

　穏やかに笑う篝先生。ぬらりひょんはおかわり！と元気よく器を私に差し出して来たのだった。

「はいよーー」