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第62話 大晦日の病院
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今日は大晦日。いつもなら家中を掃除して、煮しめを炊いてその他諸々と正月を迎える準備をしていくのだが、今日は無い。
なぜなら、今も入院中だからだ。
(掃除とかやんなくていいのは楽だけど……)
静かなこの部屋で、大晦日と正月を迎えるのは新鮮な気持ちもありつつ寂しい気持ちもあった。
(あやかし達もいないし……)
入院してから検査などで、部屋から出る事もあったがまだあやかしを見つけられていない。
一反木綿もお屋敷に戻ってしまっているので相手がいない。
(寂しいなあ)
すると部屋に篝先生が入室してきた。
「おはようございます。朝食はいただけましたか?」
「おはようございます。はい。頂きました」
「完食ですか?」
「はい」
篝先生は私に体調を尋ね、紙に記入していく。
「では胸の音聞いて行きますね。服はそのままで」
「はい」
篝先生が、首から下げていた聴診器を私の寝間着の上から当てていく。
「……息を吸って、吐いて……止めて……」
「……」
「……はい。いいですよ」
聴診器を外し、首にまた掛ける。
「大分良くなってきましたね。薬飲めてますか?」
「はい」
実は、篝先生が来てから喘息は嘘のように収まっていた。彼が処方したのは丸い丸薬。
沼霧さんが以前海風に渡したものと、よく似ているものだった。
(ほんと、すごい効いてる気がする……)
すると、篝先生の影から何かが見えたような気がする。
(尻尾?)
だが、すぐにそれは消えてしまった。
「何かありました?」
そう篝先生に言われた私は、いえ。と返したのだった。
「千恵子さん、普段はどう過ごされています?」
「小説を読んだり、ゆっくりしてます」
「元気な時は散歩してみたりするのもおすすめです。無理の無い範囲でね」
「はいっ」
「良かったら、今から散歩します?」
篝先生に誘われ、私ははい。と返す。
断る理由も無いからだ。
「では行きますか」
羽織を羽織って髪を束ねてから部屋から出て、向かったのは病院の周りの道だ。
木々は枝だけを残し、寒さに耐えている。空は曇り空だ。
「寒い……」
「そうですね……」
吐く息はうっすらと白くなっていた。
「あ」
枝の上に、私はあるものを見つけた。カラスのような黒い鳥型のあやかしだ。私は思わずそのあやかしに目が行く。
(いた!)
ようやく久しぶりにあやかしに会えた。思わず機嫌が上がる。
「あの子が気になるんですか?」
「え」
篝先生のその言葉に、私は衝撃を受ける。
なぜなら、篝先生にもあやかしが見えているからだ。しかも「あの子」知っているのだろうか
「こっちにおいで」
鳥のあやかしが、篝先生が差し出した右腕に止まった。
「千恵子さん、あやかし好きなんですね」
「はい……」
「実は私も、あやかしでして」
なぜなら、今も入院中だからだ。
(掃除とかやんなくていいのは楽だけど……)
静かなこの部屋で、大晦日と正月を迎えるのは新鮮な気持ちもありつつ寂しい気持ちもあった。
(あやかし達もいないし……)
入院してから検査などで、部屋から出る事もあったがまだあやかしを見つけられていない。
一反木綿もお屋敷に戻ってしまっているので相手がいない。
(寂しいなあ)
すると部屋に篝先生が入室してきた。
「おはようございます。朝食はいただけましたか?」
「おはようございます。はい。頂きました」
「完食ですか?」
「はい」
篝先生は私に体調を尋ね、紙に記入していく。
「では胸の音聞いて行きますね。服はそのままで」
「はい」
篝先生が、首から下げていた聴診器を私の寝間着の上から当てていく。
「……息を吸って、吐いて……止めて……」
「……」
「……はい。いいですよ」
聴診器を外し、首にまた掛ける。
「大分良くなってきましたね。薬飲めてますか?」
「はい」
実は、篝先生が来てから喘息は嘘のように収まっていた。彼が処方したのは丸い丸薬。
沼霧さんが以前海風に渡したものと、よく似ているものだった。
(ほんと、すごい効いてる気がする……)
すると、篝先生の影から何かが見えたような気がする。
(尻尾?)
だが、すぐにそれは消えてしまった。
「何かありました?」
そう篝先生に言われた私は、いえ。と返したのだった。
「千恵子さん、普段はどう過ごされています?」
「小説を読んだり、ゆっくりしてます」
「元気な時は散歩してみたりするのもおすすめです。無理の無い範囲でね」
「はいっ」
「良かったら、今から散歩します?」
篝先生に誘われ、私ははい。と返す。
断る理由も無いからだ。
「では行きますか」
羽織を羽織って髪を束ねてから部屋から出て、向かったのは病院の周りの道だ。
木々は枝だけを残し、寒さに耐えている。空は曇り空だ。
「寒い……」
「そうですね……」
吐く息はうっすらと白くなっていた。
「あ」
枝の上に、私はあるものを見つけた。カラスのような黒い鳥型のあやかしだ。私は思わずそのあやかしに目が行く。
(いた!)
ようやく久しぶりにあやかしに会えた。思わず機嫌が上がる。
「あの子が気になるんですか?」
「え」
篝先生のその言葉に、私は衝撃を受ける。
なぜなら、篝先生にもあやかしが見えているからだ。しかも「あの子」知っているのだろうか
「こっちにおいで」
鳥のあやかしが、篝先生が差し出した右腕に止まった。
「千恵子さん、あやかし好きなんですね」
「はい……」
「実は私も、あやかしでして」
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