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第59話 入院
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私達は病院に到着した。病院の内装は以前と比べて変わらないが、あちこちに軍の関係者がうろついている。
受付を済ませて、医者から呼ばれるのを待つ。
「川上さん。どうぞ」
診察室の中にいたのは初めて見る中年の女医だ。傍らには看護婦も付き従っている。
ふくよかな女医からは、いかにも令嬢らしい雰囲気が立ち込めている。
(私も令嬢ではあるけど、この人はいかにもって感じ)
聴診器で胸の音を聞き、別室であれこれ検査を済ませるとまた診察室に入る。
「炎症が起きていますわね。しばらく入院して静養した方がよろしいかと」
「そうですか……」
医者の声により、入院が決まった。
最後。診察室から出る前に女医が私へ声をかけてきた。
「千恵子さんは、結婚されていらっしゃるの?」
「いえ……」
「あら、まだなの? でも年齢的に早く治さないとね」
「はい……」
私はそう返事をするより他なかった。
(はやく結婚して子供を産めと言われている気がする……)
それから病院で父親とも合流した私は、父親のはからいで一番豪華な病室をあててもらう事になった。
「川上家のご令嬢よ」
「まあ……」
「まだ結婚してらっしゃらないんですって。婚約者もいないとか」
近くで暇そうな看護婦2人がヒソヒソと話しているのが聞こえてくる。
(うわあ、この人らに世話されるのか)
そう考えると、途端に早く月館島の別荘に帰りたくなる。
部屋は豪華な内装の個室だった。便所に浴室も設置されている。
この病院は華族や軍の関係者に皇族方も利用している。やはりその辺は金を使っているのが分かる。
「では、何かありましたらいつでもお呼びください。お食事とお薬はこちらがご用意いたします」
看護婦長が直々に部屋を案内してくれ、最後に深々と頭を下げて去っていった。
「立派な部屋ねえ」
母親が辺りを見回しながら、呟く。
受付を済ませて、医者から呼ばれるのを待つ。
「川上さん。どうぞ」
診察室の中にいたのは初めて見る中年の女医だ。傍らには看護婦も付き従っている。
ふくよかな女医からは、いかにも令嬢らしい雰囲気が立ち込めている。
(私も令嬢ではあるけど、この人はいかにもって感じ)
聴診器で胸の音を聞き、別室であれこれ検査を済ませるとまた診察室に入る。
「炎症が起きていますわね。しばらく入院して静養した方がよろしいかと」
「そうですか……」
医者の声により、入院が決まった。
最後。診察室から出る前に女医が私へ声をかけてきた。
「千恵子さんは、結婚されていらっしゃるの?」
「いえ……」
「あら、まだなの? でも年齢的に早く治さないとね」
「はい……」
私はそう返事をするより他なかった。
(はやく結婚して子供を産めと言われている気がする……)
それから病院で父親とも合流した私は、父親のはからいで一番豪華な病室をあててもらう事になった。
「川上家のご令嬢よ」
「まあ……」
「まだ結婚してらっしゃらないんですって。婚約者もいないとか」
近くで暇そうな看護婦2人がヒソヒソと話しているのが聞こえてくる。
(うわあ、この人らに世話されるのか)
そう考えると、途端に早く月館島の別荘に帰りたくなる。
部屋は豪華な内装の個室だった。便所に浴室も設置されている。
この病院は華族や軍の関係者に皇族方も利用している。やはりその辺は金を使っているのが分かる。
「では、何かありましたらいつでもお呼びください。お食事とお薬はこちらがご用意いたします」
看護婦長が直々に部屋を案内してくれ、最後に深々と頭を下げて去っていった。
「立派な部屋ねえ」
母親が辺りを見回しながら、呟く。
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