【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

第86話 夜が来て、朝が来る

「そうだな…」　

　リークのこの言葉を最後に、しばらく沈黙が流れる。

（…）

　そんな沈黙を断ち切るように、私は時間だしそろそろ寝ましょうか。と彼に告げた。

「じゃあ、お休み」
「お休みなさい」

　自室に入り、布団を被る。大きく深呼吸してから目をぎゅっとつぶった。

　翌朝。自室から起きるとキッチンでリークがいつも通り朝ご飯の支度をしていた。

「リーク、おはよう」
「おはようナターシャ。昨日は良く眠れたか？」
「ええ。ホットミルクのおかげね」

　実際、避難してきてすぐの夜…の割には寝付きは良かったのだった。

「それは良かった」
「朝ご飯手伝うわ」
「じゃあ、お皿置くの頼めるか？シチューはもうすぐ出来上がりそうだ」

　朝ご飯はシチュー。冷えた身体にはちょうど良い。お皿にシチューを盛り、パンも用意すると朝ご飯の時間となる。

「頂きます」

　シチューをスプーンですくって口に入れる。温かな温度とまろやかな食感はとても美味しい。

「身体が温まって美味しいわ」
「良かった」
「ふふっ。パンにつけてみようかしらね」

　パンにシチューをつけて食べると、パンが柔らかくなり咀嚼しやすくなる。
　こうして朝ご飯を食べ終えて、片付けを済ませる。

「今日は何して過ごそうかしら」
「畑の整備以外には、特に用事は無いからな」
「じゃあ、ゆっくりして過ごしましょう」

　一息休憩を入れてから、私達は中庭の畑に移動する。

「今の所大丈夫そうだな」
「良かった…」
「まだ様子見と言った段階ではあるが」

　リークは、ここが海から近い事を危惧していたようだ。海風の塩気を野菜が浴びると、枯れてしまわないかと心配していたのだった。

（特に枯れてたり、傷んでる箇所は無いわね…）

　野菜に特筆すべき異常は見当たらない。だが、越してきたばかりなのでもう少し様子見は必要だろう。

「順調にいってほしいわね」
「そうだな…大事な野菜だからな」