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皇帝SIDE⑪ レジスタンス
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ここはザナドゥの山の中。そしてナターシャ達がザナドゥに来る少し前の事である。
「揃ったか?」
山の中の洞窟にて、ザナドゥや隣の町や村から来た男達が集っている。その中にはケインの姿もある。
彼らの内、ケイン含め漁師をしている者は召集は受けていない。中には召集を上手く踏み倒している者もいる。
「皆揃ったぞ、リーダー」
リーダーと呼ばれる男は、三十代くらいの見た目をした狼男だ。切れ長の目に長身のその男は、集った者全てに目線を投げかけると、始めよう。と挨拶をする。
「まず、あいつはどうなっている?」
「皇帝を撃ちそこねたものの、上手く逃げているようです」
「そうか。ならいい。次の計画について話す」
この集団は、皇帝キムに反旗を翻すべく集ったレジスタンスである。このようなレジスタンスは、国のあちこちで結成されたが、その都度キムに見破られ、殲滅か捕らえられて銃殺刑のどちらかに処されてきた。
このレジスタンスは、しぶとく生き残っている方だと言える。
「次の計画は、ローティカだ」
「へえ、ローティカかい」
ケインの声にリーダーはにやりと笑みを見せた。
「3週間後。皇帝はローティカで陸軍の軍事パレードを行うという情報が入ってきた。我々はそこで、アパルトマンから皇帝を撃つ」
リーダーが明かした皇帝暗殺計画。それを聞いたレジスタンスの者はおおっ。と盛り上がるが、ケインは冷静に眺めている。
「今回も暗殺かい?」
ケインがそう、リーダーへいつも通り軽いノリで尋ねる。
「ああ、ケイン。正直これだけの集まりでは、それが精一杯だ。皆戦い慣れしている訳では無いしな」
「そうだよなぁ」
「ケインならどうする?」
「おいらも同じ考えだなぁ。多勢に無勢な状況なら銃で皇帝サマの頭か心臓だけを狙うしかねぇ」
「ケインならそう言うと思っていたよ」
「数がありゃあ、国中に呼びかけて大々的にやれるんだがなぁ」
リーダーは思わずため息を漏らす。この人数にこの練度となると暗殺しか方法は無い。そんな事実と歯がゆさに挟まれているからだった。
「暗殺に向かいたい者はいるか」
リーダーの問いかけに、辺りは一瞬静かになる。しばらく無言が続いた後、山で猟師をしている2人の若い人間の男が手を挙げた。
「2人とも、行ってくれるか」
「はい」
「行きます」
「済まない。頼んだ…!」
ここからレジスタンスは更に計画を練っていく。
「皇帝はおそらくこの通りを進むはずだ」
「じゃあ、このアパルトマンから?」
「そうなるだろう」
「窓はあまり開けない方がいいな」
こうして、会合を終えたレジスタンスは密かに解散していった。ケインも1人洞窟から出ていく。
「ふい~っと」
ケインは肩で大きく息を吐く。
「聖女サマとか女神サマとか出ないかねぇ」
「揃ったか?」
山の中の洞窟にて、ザナドゥや隣の町や村から来た男達が集っている。その中にはケインの姿もある。
彼らの内、ケイン含め漁師をしている者は召集は受けていない。中には召集を上手く踏み倒している者もいる。
「皆揃ったぞ、リーダー」
リーダーと呼ばれる男は、三十代くらいの見た目をした狼男だ。切れ長の目に長身のその男は、集った者全てに目線を投げかけると、始めよう。と挨拶をする。
「まず、あいつはどうなっている?」
「皇帝を撃ちそこねたものの、上手く逃げているようです」
「そうか。ならいい。次の計画について話す」
この集団は、皇帝キムに反旗を翻すべく集ったレジスタンスである。このようなレジスタンスは、国のあちこちで結成されたが、その都度キムに見破られ、殲滅か捕らえられて銃殺刑のどちらかに処されてきた。
このレジスタンスは、しぶとく生き残っている方だと言える。
「次の計画は、ローティカだ」
「へえ、ローティカかい」
ケインの声にリーダーはにやりと笑みを見せた。
「3週間後。皇帝はローティカで陸軍の軍事パレードを行うという情報が入ってきた。我々はそこで、アパルトマンから皇帝を撃つ」
リーダーが明かした皇帝暗殺計画。それを聞いたレジスタンスの者はおおっ。と盛り上がるが、ケインは冷静に眺めている。
「今回も暗殺かい?」
ケインがそう、リーダーへいつも通り軽いノリで尋ねる。
「ああ、ケイン。正直これだけの集まりでは、それが精一杯だ。皆戦い慣れしている訳では無いしな」
「そうだよなぁ」
「ケインならどうする?」
「おいらも同じ考えだなぁ。多勢に無勢な状況なら銃で皇帝サマの頭か心臓だけを狙うしかねぇ」
「ケインならそう言うと思っていたよ」
「数がありゃあ、国中に呼びかけて大々的にやれるんだがなぁ」
リーダーは思わずため息を漏らす。この人数にこの練度となると暗殺しか方法は無い。そんな事実と歯がゆさに挟まれているからだった。
「暗殺に向かいたい者はいるか」
リーダーの問いかけに、辺りは一瞬静かになる。しばらく無言が続いた後、山で猟師をしている2人の若い人間の男が手を挙げた。
「2人とも、行ってくれるか」
「はい」
「行きます」
「済まない。頼んだ…!」
ここからレジスタンスは更に計画を練っていく。
「皇帝はおそらくこの通りを進むはずだ」
「じゃあ、このアパルトマンから?」
「そうなるだろう」
「窓はあまり開けない方がいいな」
こうして、会合を終えたレジスタンスは密かに解散していった。ケインも1人洞窟から出ていく。
「ふい~っと」
ケインは肩で大きく息を吐く。
「聖女サマとか女神サマとか出ないかねぇ」
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