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第44話 稽古に励む

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「皆さん、おはようございます」

 皇太后の挨拶がはじまる。妃達は全員この広間に集い、彼女の言葉に耳を傾けていた。

「皆さんもご存じの通り、皇帝陛下が体調を崩されているようです。皆、彼の回復をお祈りしてくださいね」

 妃全員のはい。皇太后陛下。と揃った返事は、広間を通り越して外まで響く。皇太后陛下はこくりと首を縦に振った。

「では、今日も1日妃としての務めに励むように」

 挨拶が終わると桃玉は作業着に着替えて佳淑妃のいる部屋へと移動した。目的はもちろん武術の稽古に参加する為である。

「来たか、桃玉」
「おはようございます。佳淑妃様。今日もよろしくお願いします」

 あれから佳淑妃の元で武術の稽古に励む妃達が増えた。参加している妃達は美人才人捷妤の二十七世婦やそれ以下の位の者達が中心。中には女官達の姿もあった。
 佳賢妃は……当たり前のように稽古に来ていない。

「でははじめよう」
「はい! お願いします!」

 膝を曲げ伸ばす屈伸運動などの身体を動かす基礎練習からはじまり、基礎練習が終わると槍の稽古に移る。

「腹の底にしっかり力を入れて踏ん張れ! そしてぶれる事無く槍を前へと突き出すんだ!」
「はい!」

 稽古が終わったのは昼の事だった。佳淑妃が今日の稽古はこれで終わりとする! という宣言が成された瞬間桃玉達参加していた者すべてが石づくりの地面の上に大の字で寝転がる。

「ああ――……! つかれた……」
「よし、これで解散だ。各自昼休憩を取ると良い。食べるのもまた稽古だ」
「はい! 佳淑妃様、ありがとうございました!」
「良い返事だ。では、これにて」

 自室へと戻って来た桃玉は作業着のまま昼食をとる。身体を動かし空腹となっていた頃合いでの野菜と鳥肉と水餃子の入ったスープは身体に染みわたる味わいをしていた。

「ああ……美味しい……塩気が良い感じだ……」
「今日も熱心に稽古に励んでいたようで」
「まだまだだけど、ちょっと体力が戻ってきた感じはしますね」
「なるほど……私も参加してみますか」
「あなたも参加してみたらどう? ちょうど私もそう考えていた所だったの」

 女官達が佳淑妃が主催する武術の稽古に参加するや否やとわいわい話している中、桃玉は彼女達の話を聞きながら昼食を平らげたのだった。

「ごちそうさまでした」
「では、お膳おさげいたします」

 午後はゆっくり過ごそうかな。と考えていた桃玉。すると廊下から女官が部屋へと入って来た。

「桃玉様。月宴にはご出席なさいますか?」
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