印ノ印

球天 コア

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堕天

〈10話〉「正式配属まで」

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三学期が終わり、春休み。

……僕の将来が言士として固定された、今。









……ハッキリ言おう。
今の僕は調子に乗っている。




警視庁から学校への推薦もあって、進路活動は
そこまで手を入れなくても良い。

進学に向けて勉強するわけでもなければ、就職
活動の為にあちこち駆け回るわけでもない。

周りの人の進路活動と比べれば余裕綽々だ。




……まぁ、流石に卒業まで気は抜けない。


「合格したので今すぐ言士になりましょう」な
事は無く、正式に言士へ配属するのは一年後。

つまり卒業と同時に本格的に言士としての生業
が本格的にスタートするのだ。


そして「それまで何もせず」なんて事も無い。



僕はいつものように高校へ通い続ける。
その合間、言士としての任務もこなさなければ
ならないのだ。


つまり学生と言士。
その2つを両立させながら暮らすこととなる。



……まぁ、余裕だろう。

高校の成績も、よほどのことがなければ単位を
落とすこともないだろうし。

なんというか、言士と関わってから僕の生活が
一気に楽になった気がしている。








……そして。





ピピピピピ………ピピピピピ………





電話が鳴る。

その相手は〔明星 充〕。





「……もしもし?」

『よう逹畄、元気してたか?』

「はい。むしろやる事無さすぎて暇ですよ」

『まぁそうだろうな。んな急に進路が決まりゃ
暇になるわな』




「ところで充さんは、何か僕に?」
『あぁ、ちょいと逹畄に用事があってな』

「用事…?」

『詳しいことは本部で話したいんだが……時間
空いてるか?』
「あっ…はい。今行きます」


僕は電話を切る。

……一体、用事とはなんだろう…?























……到着。


「よう」

「こんにちは、充さん」



本部に着いた僕は、扉の先で待っていた充さん
と合流した。
だが、その場にいたのは僕と充さんだけでなく
もう1人……


「よう!アンタが噂の古紙 逹畄か?」
「…?」



黒いはかまを乱雑に着こなし、さらしを胸に巻いた
女性が充さんの隣に立っていた。



「充さん、この人は…?」

「あぁ…紹介しよう。彼女は……」
日当立ひあたり 祭子まつこだ!よろしくな!!」
「よ、よろしくお願いします……」



頭を下げた時、彼女が下駄を履いていることに
僕は気付く。袴、さらし、ましてや下駄………
いつの時代の人なんだ…?


「……あっ、そういえば用事って…?」
「あぁ、そうだったな」
「そうだったなって……呼んだのは充さんじゃ
ないですか……」

「まぁ厳密に言えば用事というより……研修?
に近い形にはなるな」
「研修…?」

「おう。正式配属までの間、逹畄には他の言士
の戦い方を学んでもらおうと思ってな」


成程、要は先輩達の背中を見て学んでこいとの
ことなんだろう。
言士の先輩方との交流にもなるし、今の僕には
丁度良いかもしれない。


「俺が戦うとこは散々見てきただろうから……
そうだな……丁度ここにいるし最初は祭子から
見学してこい」

「よろしくお願いします、日当立先輩…!」
「おうおう!んじゃ、早速私に着いてこい!」
「気をつけろよー」





ーーーーーーーー移動割愛ーーーーーーーーー



そうゆうわけで来たのは、上野にある図書館。
しかし、その扉には立入禁止の注意書きだけが
貼られているだけだった。



「図書館……もしかして………」


「察したか?知っての通り、魔言は文字に宿る
言霊から生まれる。つまり小説やら、論文やら
あれこれって文字で溢れてる図書館っつーのは
魔言の溜まり場なんだよ」

「至るとこまで文字がビッシリですね……」

「まぁ魔言自体、夜に動く連中が大半だしな。
人的被害がまだ出てないのは幸いだわな」


なるほど……魔言の大半は夜に出るのか……。
……頭に入れておこう。




……ん?待てよ…?


「さぁて、さっさと行くぞ」
「あっ……ちょっと待ってください!」

「んぁ?どした?」
「えっと魔言の大半は夜に出るんですよね…?
今、思いっきり昼なんですけど……」


「あぁ、それはだな……コレを使うんだよ」



そういうと日当立先輩は懐から黒印に似た札を
取り出して見せた。

だが、僕らが扱う黒印とはまた違い、既に文字
が書き込まれている他、字は血の赤色ではなく
白い色だった。





すると、先輩は注意書きの上からその印を貼り
何らかの呪文を唱える。






『急急如律、言霊の獣、かげに化け出でよ』





同時、貼られた紙は灰になって扉の中の方へと
染み込むように消えていった。



「えっと……何をしたんですか?」

「魔言を炙り出す為のまじないだ、まじない。
ほら、さっさと中に入るぞ~」

「ちょっ……待ってください、先輩!」



僕の事など知らんとでも言うかの如く、彼女は
図書館の中へと入っていく。

それを僕は、追いかけるしか出来なかった。
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