印ノ印

球天 コア

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堕天

〈1話〉「印」

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2033年



















都内某所 

東京都立榛沢はるさわ高等学校

2年E組、教室内

















その日は、学年末試験最終日だった。


数学IIという苦手分野の山を乗り越えた後で、
僕の身体は満身創痍に満ちていた。


逹畄たつる~、早く帰るぞ~」
「ちょっと待って、荷物整理するから」


カバンの中にある提出物を教卓に出したのち、
僕は友人と共に帰路に着いた。

テストが終わった直後の話といえば、
自信ある?とか何点行けた?とか。
大体そんな感じだろう。


直後、友人が放った言葉は……

「なぁ、数学何点いけた?」

……ほらね。

「……出来たと言っても渋い結果だろうね。
そっちはどうなの?」
「死んだ」
「……そう言うと思った」
「はあ?」



正直言って、今の僕はもの凄く疲れてる。

二学期期末の数学IIで赤点を取ってしまった
から、そこから追い上げるのに徹夜なり
なんなりして必死に勉強しまくってたからだ。

……まぁ、ほとんど僕の自業自得だけど。

そしてエラい事に、数週間後には書道部での
大会が控えている。
だから、今日は早く家に帰って休みたいのだ。

だが友人はそんな事お構い無しに質問攻め。
余計に疲れてくる。

早く終わってくれないかと脳内で喚いた。



「…やっべ、体育着持って帰るの忘れた!」
「あっ」

……友人のその一言でハッとした。

今日は週末。
体育着を持って帰るのを完全に忘れていた。


ある意味予想外の形で質問攻めから脱出した
僕は、母に「少し遅れる」とメールを残して
友達と共に来た道を戻った………


















……これから起こる惨事に気付けないまま。



















僕達が学校の正門前に辿り着いた頃、
日が沈みかけ、辺りは少し暗くなっていた。

「ほら、急げよ逹畄!学校閉まるぞ!」
「わかってるって…!」


学校の正門を通る。



その時。

職員玄関前で黒い和服を着た人を見かけ、
思わず足を止める。

先生か何かと一瞬考えたが、
学校関係者には到底見えない格好だった故、
その考えは一瞬で消える。


「逹畄!早くしろよ!!」
「あっ……待てよ!」





その後学校に入り、先生から教室の鍵を借り、
扉を開けて自分のロッカーを探した。



古紙 逹畄ふるかみ たつる



僕の名前が書いてある黒い袋を見つけ、
手に取る。
丁度、友人も袋を見つけたようだ。


「俺、先に鍵返してくるから、下駄箱近くで
待っててくんない?」
「……わかった」


そして僕達は、渡り廊下から別々の方向に
進んで別れた。




















……それから何分経っただろう。

もう空は夜と言って等しいほどに暗い。
いつになったら帰ってくるのだろうか。

ふと、腕時計を見てみると、
針は既に17:39を指している。

幾らなんでも遅すぎる友人に痺れを切らした
僕は、仕方なく彼を探す事にした。



学校の電気は消えており、
スマホのライトで照らさないと何も見えない
ほどは真っ暗だった。

あまりにも暗すぎる廊下のせいで、
肝試しにでも来てるかのような気分になる。

いかにも「出」そうな雰囲気だ。
なんなら本当に出てきてもおかしくない。

……いや、んなわけないか。








……とか考えていた、その刹那。

俺のいた廊下に、獣の咆哮のようなものが
響き渡った。



……獣?……学校に?
聞き間違いかと思った僕だったが、
恐ろしい現実を突きつけるように再び咆哮が
僕の耳を突き刺す。




その直後、廊下の先から、
人の形をした「何か」が現れた。


殺意に満ち満ちた鬼のような形相。
不自然にも程がある6本の腕。

そしてソイツの身体が月明かりに照らされ、
全身が見えるようになった時。



僕の精神は、地獄の底に叩き落とされた。



ソイツは腕に、何人もの遺体を抱えていた。
その中には僕の友人もいる。



僕は腰が抜け、言葉を失い、思考を忘れる。

目の前に現れた死の恐怖。
空気と血の匂いでわかる、僕を狙ってる。

瞬間、化け物が僕に向かって走り出してきた。






………僕……死ぬんだな。


全てを諦め、潔く目を瞑る。
そして僅か、僕は死の痛みに期待してた。


その時だった。

 

     『いん』『ほむら』!!











…僕を襲った化け物の頭が突然燃え出した。



閉じていた目を開けると、
目の前には、黒い和服を着た男。

さっき僕が見かけた、あの男性だった。










「……誰…ですか…?」


無意識に呟く。


すると、男性は鋭い目で僕を見つめ、
低い声でその名を上げる。


            
「………俺の名前は明星 充あけほし みつる





































……バケモノを殺す、"言士げんし"だ」
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