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石ころのような希望
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重い、こんなに扉って重かったかな……あぁそうか、
「僕が扉を開けることを拒絶してるのか……」
昨晩、1人の女の子が悪魔種に攫われたというのに僕は何をしてるのだろう。どうして平然と学校に来ている。
マキナのことを少しでも考えると嘔気がする。
2度も同じ失敗をした。マキナを見捨てないと心に決めたと言うのに僕は悪魔種に怖気づいて結果的にマキナを見捨ててしまった。
人間の兵器に勝る身体能力を持つ悪魔種に僕のような平凡以下の高校生が勝てるわけがなかった。
悪魔種が地球にいるともっと早く気づいていれば……
ガララと扉がスライドされる。
「ん、奏大か……昨晩は大変だったな。ほら早く教室に入れ。ホームルームを始めるぞ」
「……はい」
既に昨日の事件はニュースとなり世間に広まっており、今朝はマスコミが僕の家を囲んでいた。
人の苦しみをネタにするゲスが……まあ人間なんてそんなものか、僕がそうだったように彼らも生きるためにやっていることだ。
教室に入ると真っ先に柳と目が合った。
柳が不器用な笑みを僕に向ける。
「おはよ、柳」
「あぁ、おはようカナ」
それ以上、話しは続かず担任がホームルームを始めた。
「皆も知っていると思うが昨晩、奏大の家が何者かに襲われた。お前らも気をつけるように。」
教室がざわつく。
まさかホームルームで話されるとは思ってもいなかった。
大人なら、当事者がいる中でそんな話をしたらどうなるかくらい分かるだろ。
胸から込み上がってくる不安と苛立ち。いつもなら我慢できた。でも今は無理だ、情緒が不安定で何も我慢出来なかった。
「さっきからザワザワとうるっせぇんだよ、クソ野郎共が。」
イスを持ち上げ担任に向かって投げつける。
「うぉっ!」
幸いなことに担任が避けてくれおかげで誰も傷つかずに済んだが黒板にはヒビが入った。
「な、何をしてる奏大!」
「うるさい、黙れ、消えろ、殺す。お前に何が分かる、お前らに何が分かる。僕が何を見て何を感じているかお前らに分かるか!」
皆が呆然と僕を見ていた。
自分でも何を言っているのか分からない。どう考えても八つ当たりだ。
ただ、僕のことを憐れむ周りが許せなかった。
「何も知らずに勝手な妄想で人を憐れむなぁぁぁあ!」
「お、おいカナ。どうしたんだよ。落ち着けって!」
「うるさい! 僕にも何が何だか分からないんだよ……」
「カナ! 待てって!」
クラスメイトらの視線が気持ち悪く居心地が悪い。
僕は教室を抜け出した。止めるものは柳、ただ1人だけだった。
マキナが今、どんな状況に置かれているのかを考えると自分に腹が立つ。
どうして僕は平然と学校に通っている。他にやることがあるだろ。
もう裏切らないって決めたじゃないか。
廊下で未咲さんとすれ違った。
笑顔を向けてくれた彼女に僕は笑顔を返せなかった。
そんな余裕なんてない。今はマキナを……じゃないと僕が死にそうだ。
走る度に右太ももに違和感を感じる。
ポケットに何か硬いものが入ってるみたいだ。
「あ、あぁ……」
1つ希望があった。
昨晩はあんなにもキラキラと妖艶に輝いていたのに今ではその面影はなく淀んだただの石ころ絆石。
安堵からか今まで堪えていた涙が目から溢れた。
まだ、希望はある。僕は諦めない。
「僕が扉を開けることを拒絶してるのか……」
昨晩、1人の女の子が悪魔種に攫われたというのに僕は何をしてるのだろう。どうして平然と学校に来ている。
マキナのことを少しでも考えると嘔気がする。
2度も同じ失敗をした。マキナを見捨てないと心に決めたと言うのに僕は悪魔種に怖気づいて結果的にマキナを見捨ててしまった。
人間の兵器に勝る身体能力を持つ悪魔種に僕のような平凡以下の高校生が勝てるわけがなかった。
悪魔種が地球にいるともっと早く気づいていれば……
ガララと扉がスライドされる。
「ん、奏大か……昨晩は大変だったな。ほら早く教室に入れ。ホームルームを始めるぞ」
「……はい」
既に昨日の事件はニュースとなり世間に広まっており、今朝はマスコミが僕の家を囲んでいた。
人の苦しみをネタにするゲスが……まあ人間なんてそんなものか、僕がそうだったように彼らも生きるためにやっていることだ。
教室に入ると真っ先に柳と目が合った。
柳が不器用な笑みを僕に向ける。
「おはよ、柳」
「あぁ、おはようカナ」
それ以上、話しは続かず担任がホームルームを始めた。
「皆も知っていると思うが昨晩、奏大の家が何者かに襲われた。お前らも気をつけるように。」
教室がざわつく。
まさかホームルームで話されるとは思ってもいなかった。
大人なら、当事者がいる中でそんな話をしたらどうなるかくらい分かるだろ。
胸から込み上がってくる不安と苛立ち。いつもなら我慢できた。でも今は無理だ、情緒が不安定で何も我慢出来なかった。
「さっきからザワザワとうるっせぇんだよ、クソ野郎共が。」
イスを持ち上げ担任に向かって投げつける。
「うぉっ!」
幸いなことに担任が避けてくれおかげで誰も傷つかずに済んだが黒板にはヒビが入った。
「な、何をしてる奏大!」
「うるさい、黙れ、消えろ、殺す。お前に何が分かる、お前らに何が分かる。僕が何を見て何を感じているかお前らに分かるか!」
皆が呆然と僕を見ていた。
自分でも何を言っているのか分からない。どう考えても八つ当たりだ。
ただ、僕のことを憐れむ周りが許せなかった。
「何も知らずに勝手な妄想で人を憐れむなぁぁぁあ!」
「お、おいカナ。どうしたんだよ。落ち着けって!」
「うるさい! 僕にも何が何だか分からないんだよ……」
「カナ! 待てって!」
クラスメイトらの視線が気持ち悪く居心地が悪い。
僕は教室を抜け出した。止めるものは柳、ただ1人だけだった。
マキナが今、どんな状況に置かれているのかを考えると自分に腹が立つ。
どうして僕は平然と学校に通っている。他にやることがあるだろ。
もう裏切らないって決めたじゃないか。
廊下で未咲さんとすれ違った。
笑顔を向けてくれた彼女に僕は笑顔を返せなかった。
そんな余裕なんてない。今はマキナを……じゃないと僕が死にそうだ。
走る度に右太ももに違和感を感じる。
ポケットに何か硬いものが入ってるみたいだ。
「あ、あぁ……」
1つ希望があった。
昨晩はあんなにもキラキラと妖艶に輝いていたのに今ではその面影はなく淀んだただの石ころ絆石。
安堵からか今まで堪えていた涙が目から溢れた。
まだ、希望はある。僕は諦めない。
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