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第32話 サユリと話してみた
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俺──ゼント・ラージェントは昨日、1回戦を勝利で終えた。
今日は、「ミランダ武闘家養成所・ライザーン本部」で練習することにした。
そこで、1週間後のトーナメント第2回戦にそなえる。
「つーか、でけぇな」
ローフェンが、「ミランダ武闘家養成所・ライザーン本部」を見回しながら言った。
広さはルーゼリック村支部の10倍。
練習用武闘リングは6つ、サンドバックは50個設置、ウエイトトレーニング施設も完備されている。
さて──武闘リング上の俺の目の前には、何と、あの謎の美少女武闘家サユリがいる。
ドガッ
「ぐへ!」
俺は練習用リングの上で、サユリに投げつけられた。
サユリがトレーニングに参加してくれたのだ。彼女の所属はグランバーン最大の武闘家養成所、「G&Sトライアード」だが、社長のセバスチャンが出稽古をOKしたらしい。
余裕だな……。
練習なので、俺も力を抜いていたが、な、なんという素早い投げなんだ……。
「大丈夫ですか?」
サユリは俺のことを心配して、倒れた俺を上からのぞきこんだ。受け身はとっているから大丈夫だ。
それはともかく、サユリの黒髪が垂れる。
うーむ、やっぱりかわいい……。
「ゼント、お前はパンチは得意だけど、投げ技に対応したほうが良いんじゃねーかぁ?」
ローフェンは俺とサユリの練習を、リングのコーナーポスト前で見ながら言った。
「では、ローフェンさん、こちらへ」
サユリはニコッと笑って、ローフェンの手を握った。
「え? 俺?」
するとサユリは、ローフェンを横に押し出すようにして──。
シュッ
そのまま、いとも簡単に投げてしまった!
ドダン!
「うげっ!」
ローフェンが背中から落ちた。
サユリの投げ──隅落が決まった!
「なんだローフェン! お前だって簡単に投げられてんじゃないか」
今度は俺が笑ってやった。
「う、うるせーな。油断しただけだ」
ドスツ
サユリはニコニコしながら、ローフェンに足をかけて簡単に倒してしまった。
「ず、ずるいぞ、サユリ! 油断していたところを」
ローフェンはブーブー叫ぶ。
一方、サユリはいたずらっ子のように、クスクス笑っている。
「油断大敵ですよ」
サユリとの和気あいあいとした練習は、1時間半で終了した。
「私はセバスチャン先生のところでトレーニングがありますので、これで」
サユリはそう言うと、武闘家養成所を出て行ってしまった。
ひえ~、まだトレーニングを続けるのか?
俺たちがリング下に降りてベンチで休んでいると、エルサと社長のミランダさんが練習場に入ってきた。
「練習、ご苦労様。ゼント、ローフェン」
エルサは俺の汗を、タオルでふいてくれた。
まだ痩せてはいるが、少し快活になったかもしれない。今日の午前は、娘のアシュリーと、ショッピングに出かけたようだ。
「1週間後のゼントの相手を調べたよ。君の相手は、ライダム・シュライナー。武闘拳闘士だね。セバスチャンの弟子らしいよ」
「セバスチャンの弟子?」
俺は驚いて聞き返した。
俺はトーナメントが始まる前、スタジアムの廊下で見た、セバスチャンの鋭い目が忘れられなかった。何という殺気だったんだ。今でもゾッとする。
「セバスチャンの弟子が、次の相手か?」
「そうなるね。シュライナーの身長は171センチ、体重73キロの中量級。だけど、拳闘士として相当な力がある」
エルサが言うと、今度はローフェンがミランダ先生の方を見た。
「セバスチャンって大勇者の執事だろ。そのセバスチャン自身って、どれくらい強いんだ? ミランダ先生、昨日だっけ、セバスチャンと話をしてきたんだろ?」
「ええ、色々理解したわ。彼の裏の顔もね」
ミランダ先生はつぶやいた。
俺とローフェンは顔を見合わせる。ど、どういう意味だ?
セバスチャンの裏の顔だって? 昨日の話し合いで、何かあったのか?
「それでローフェン、あなたの次の相手は、怪我により欠場となったわ」
「ど、どういうことッスか?」
ローフェンはミランダ先生に向かって声を上げた。
ミランダ先生は静かにうなずく。
「代わりに、そのセバスチャン本人が、試合に出場するらしいわ」
な、なんだって?
ローフェンが首を傾げていると、俺はあわてて聞いた。
「ど、どういうことだ、ミランダさん。ローフェンの相手は、ドワーフ族のゴンギーじゃなかったか?」
「違うわ」
ミランダ先生は眼鏡をすり上げて言った。
「ゴンギー選手は、1回戦の試合で足を負傷。……と表面上ではなっているけど、セバスチャンに大金を渡されて、試合を辞退した。だからローフェン、あなたの相手は、ゲルドンの執事、セバスチャンよ」
「ど、どうなってんだよ、そりゃあ」
ローフェンは再び首を傾げる。
「……まあ、そのうちセバスチャンの正体がわかるわ。もし、セバスチャンのことを知りたいのなら、サユリの次の試合にも注目しなさい」
ミランダ先生は言った。
ど、どういうことだ?
「彼女の次の相手は、『G&Sトライアード』から出ていった、マーク・ギスタン。セバスチャンと意見が合わなくなって、出ていってしまった選手よ。この試合──サユリの本性……心の闇が見れる試合……になるかもね」
あのかわいらしい女の子、サユリの心の闇だって?
それによく考えると、もしセバスチャンがローフェンに勝ち、サユリが勝ち上がれば、セバスチャンとサユリの対戦になるはずだ。師弟対決ってことか?
一体、どうなるんだ? このゲルドン杯格闘トーナメントは?
今日は、「ミランダ武闘家養成所・ライザーン本部」で練習することにした。
そこで、1週間後のトーナメント第2回戦にそなえる。
「つーか、でけぇな」
ローフェンが、「ミランダ武闘家養成所・ライザーン本部」を見回しながら言った。
広さはルーゼリック村支部の10倍。
練習用武闘リングは6つ、サンドバックは50個設置、ウエイトトレーニング施設も完備されている。
さて──武闘リング上の俺の目の前には、何と、あの謎の美少女武闘家サユリがいる。
ドガッ
「ぐへ!」
俺は練習用リングの上で、サユリに投げつけられた。
サユリがトレーニングに参加してくれたのだ。彼女の所属はグランバーン最大の武闘家養成所、「G&Sトライアード」だが、社長のセバスチャンが出稽古をOKしたらしい。
余裕だな……。
練習なので、俺も力を抜いていたが、な、なんという素早い投げなんだ……。
「大丈夫ですか?」
サユリは俺のことを心配して、倒れた俺を上からのぞきこんだ。受け身はとっているから大丈夫だ。
それはともかく、サユリの黒髪が垂れる。
うーむ、やっぱりかわいい……。
「ゼント、お前はパンチは得意だけど、投げ技に対応したほうが良いんじゃねーかぁ?」
ローフェンは俺とサユリの練習を、リングのコーナーポスト前で見ながら言った。
「では、ローフェンさん、こちらへ」
サユリはニコッと笑って、ローフェンの手を握った。
「え? 俺?」
するとサユリは、ローフェンを横に押し出すようにして──。
シュッ
そのまま、いとも簡単に投げてしまった!
ドダン!
「うげっ!」
ローフェンが背中から落ちた。
サユリの投げ──隅落が決まった!
「なんだローフェン! お前だって簡単に投げられてんじゃないか」
今度は俺が笑ってやった。
「う、うるせーな。油断しただけだ」
ドスツ
サユリはニコニコしながら、ローフェンに足をかけて簡単に倒してしまった。
「ず、ずるいぞ、サユリ! 油断していたところを」
ローフェンはブーブー叫ぶ。
一方、サユリはいたずらっ子のように、クスクス笑っている。
「油断大敵ですよ」
サユリとの和気あいあいとした練習は、1時間半で終了した。
「私はセバスチャン先生のところでトレーニングがありますので、これで」
サユリはそう言うと、武闘家養成所を出て行ってしまった。
ひえ~、まだトレーニングを続けるのか?
俺たちがリング下に降りてベンチで休んでいると、エルサと社長のミランダさんが練習場に入ってきた。
「練習、ご苦労様。ゼント、ローフェン」
エルサは俺の汗を、タオルでふいてくれた。
まだ痩せてはいるが、少し快活になったかもしれない。今日の午前は、娘のアシュリーと、ショッピングに出かけたようだ。
「1週間後のゼントの相手を調べたよ。君の相手は、ライダム・シュライナー。武闘拳闘士だね。セバスチャンの弟子らしいよ」
「セバスチャンの弟子?」
俺は驚いて聞き返した。
俺はトーナメントが始まる前、スタジアムの廊下で見た、セバスチャンの鋭い目が忘れられなかった。何という殺気だったんだ。今でもゾッとする。
「セバスチャンの弟子が、次の相手か?」
「そうなるね。シュライナーの身長は171センチ、体重73キロの中量級。だけど、拳闘士として相当な力がある」
エルサが言うと、今度はローフェンがミランダ先生の方を見た。
「セバスチャンって大勇者の執事だろ。そのセバスチャン自身って、どれくらい強いんだ? ミランダ先生、昨日だっけ、セバスチャンと話をしてきたんだろ?」
「ええ、色々理解したわ。彼の裏の顔もね」
ミランダ先生はつぶやいた。
俺とローフェンは顔を見合わせる。ど、どういう意味だ?
セバスチャンの裏の顔だって? 昨日の話し合いで、何かあったのか?
「それでローフェン、あなたの次の相手は、怪我により欠場となったわ」
「ど、どういうことッスか?」
ローフェンはミランダ先生に向かって声を上げた。
ミランダ先生は静かにうなずく。
「代わりに、そのセバスチャン本人が、試合に出場するらしいわ」
な、なんだって?
ローフェンが首を傾げていると、俺はあわてて聞いた。
「ど、どういうことだ、ミランダさん。ローフェンの相手は、ドワーフ族のゴンギーじゃなかったか?」
「違うわ」
ミランダ先生は眼鏡をすり上げて言った。
「ゴンギー選手は、1回戦の試合で足を負傷。……と表面上ではなっているけど、セバスチャンに大金を渡されて、試合を辞退した。だからローフェン、あなたの相手は、ゲルドンの執事、セバスチャンよ」
「ど、どうなってんだよ、そりゃあ」
ローフェンは再び首を傾げる。
「……まあ、そのうちセバスチャンの正体がわかるわ。もし、セバスチャンのことを知りたいのなら、サユリの次の試合にも注目しなさい」
ミランダ先生は言った。
ど、どういうことだ?
「彼女の次の相手は、『G&Sトライアード』から出ていった、マーク・ギスタン。セバスチャンと意見が合わなくなって、出ていってしまった選手よ。この試合──サユリの本性……心の闇が見れる試合……になるかもね」
あのかわいらしい女の子、サユリの心の闇だって?
それによく考えると、もしセバスチャンがローフェンに勝ち、サユリが勝ち上がれば、セバスチャンとサユリの対戦になるはずだ。師弟対決ってことか?
一体、どうなるんだ? このゲルドン杯格闘トーナメントは?
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