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第5章
「負けてしまう、って。じゃあ今のうちにできることは?」もう反論する気力もないので、うちは全てを受け入れることにする。
しおりを挟む「負けてしまう、って。じゃあ今のうちにできることは?」もう反論する気力もないので、うちは全てを受け入れることにする。
「五右衛門殿を助けることです。」とリスは言った。
「五右衛門。」とうちは繰り返す。
「そうです。彼こそは大泥棒だった石川五右衛門の子孫。」リスはそう言った。
「なんや石川五右衛門本人ちゃうんや。」少し残念。
「彼こそ鬼を仕留めるイカズチを盗めるもの。」とリスは説明してくれるけど、さっぱり分からん。
「イカズチって、雷?さっき鳴ってた気もするけど。上賀茂神社あたりで。」とうちは答える。
「では、もうイカズチを盗んだのかもしれません。スサノオから。」とリスは言う。
「スサノオって。」うちは聞く。
「今で言うトリックスター、オイスター。」とリスは言った。
「オイスター?」さっぱり話が見えてこおへん。
「冗談です。神話の神様です。」とリスに言われて、うちは頭がくらくらしてくる。
「これ以上混乱させんといて。で、そのオイスターのイカズチで、鬼退治ができるってわけ?」何やそれ。
「もうすぐ鞍馬寺ですよね。」歩くうちの胸元でリスは言う。
「うん、もうちょっとやと思う。」うちは目を凝らしながら歩く。
「そこで、天とつながります。そして五右衛門を別次元へと、飛ばしてください。」とリスは奇想天外なことを言う。
「天とつながる?もうなんでもええわ。それで静や五右衛門が助かるなら。」うちは眠たくなる頭を振った。夢かもしれん。
「あなたもそれで助かるのです。」とリスは小さな声で言った。
「え、うちも?」とうちが問いかけたけど、もうそれっきりリスは答えなくなった。どうやらまた眠ってしまったみたい。
「宇宙リスってほんま勝手やな。」と言いながらも、さっきまでリスと喋っていた自分が信じられへん。もし宇宙リスが間違いなら、うちが話してたのも錯覚ということになる。
「ま、錯覚であってほしいけど。」でも、これで目標が出来た。鞍馬寺でお祓いをしてもらい、五右衛門を別次元に帰す。そうすればきっとこのリスも成仏してくれるし、侍たちも消える。それに別次元の静やうちも助かるはず。万事めでたしや。目指すものが出てきたからか、急にうちの足取りは軽くなる。月はようやく姿を現す。山は静かやけど、遠くでカラスが鳴いてる。
「こんな深夜でもカラスが鳴くんやな。」とうちは独り言を言う。
「カラスだけではござらぬ。」という野太い声が聞こえた。
「誰、五右衛門?」うちは一瞬びくっとなって、懐中電灯で照らす。するとそこにいたのは。
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