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第2章
そして下を見たが、そこには木々があるだけ。
しおりを挟む小さい静が清水の舞台から飛び出して、うちは目を見張った。すぐに自分も欄干のあたりに立つ。そして下を見たが、そこには木々があるだけ。
「おらへん。」とうちは言う。影も形もない。
「どうした。」横にはおじさんがやってきて、うちと同じように下を見た。
「静が、妹がおってんけど。」とうちは動揺しながら答えた。
「妹さん?」とおじさんは不思議そうな顔でうちを見る。
「おったやんな?おじさんも見たやろ。」とうちは必死になって言う。そのうち涙が出てきて、それが余計色んな気持ちを洗い流す。
「いたかな、ちょっと見えなかったけど。」とおじさんは曖昧に言う。
「おったやん、静が飛び降りたやん。」とうちは駄々っ子のように泣く。
「いたかもな。でも飛び降りたなら下にいるはず。」とおじさんはやっぱり落ち着いて言う。そう言われてみればそうかもしれん。下にいないってことは飛び降りてないのかも。
「うちの目の錯覚?」と言うと、おじさんはフフフと笑った。その笑顔はどこか意味深で、うちにはどっちともとれへん。どうしたらいーんやろ。
「行こう。」とおじさんはうちの手を引っ張る。
「どこに行くん?」とうちは言う。少し曇っていたような感じが晴れていく。霧が晴れる。下では桜が咲いているのが、夕日に照らされて見えた。
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