よるのまちのメヌエット、植物園襲撃～

第１章

小さい静をまた探す。

　小さい静をまた探す。でも妹はどこにもおらへん。シルクハットのおじちゃんが困った顔になってる。
「どうするん？」とうちがたずねると、おいちゃんはうちを見た。
「大丈夫。道はどこかでつながってるもんなんだ。」おじちゃんはシルクハットをうちにかぶしてくる。
「いやや。」思わずうちはシルクハットを地面に落としてしまった。
「あらら。」と言っておじちゃんはもう一度シルクハットを拾う。
「ごめんな。」うちは素直に謝る。
「いいんだよ。」と相変わらず優しいおじちゃん。
「でも、どうするん。」とうちはお腹もすいてきたことをアピールするべきかどうか迷ってる。
「じゃあ、ちょっとお店にでも入ろう。さっと腹ごしらえして、それから交番に行くなりしよう。」とおじちゃんは言ってくれる。
「やった。」と思わず幼いうちは幼い声で言っている。桜咲く円山公園を抜けて、うちらは隣にある茶屋に入る。
「花より団子だね。」とおじちゃんは笑いながら言う。
「そや、お腹すいてたら何もできへん、ってお母ちゃんも言うてた。」とうちも言う。すると前方がかすみがかった靄に覆われていく。