92 / 105
君がくれたもの
しおりを挟む晩秋のある日、大学の図書館で働くハルは、本の整理中に小さな忘れ物を見つけた。それは一冊の古いノートで、落書きとメモでいっぱいだった。ノートの持ち主を探すため、ハルはその日の夜、ノートを開き、ページをめくった。中には日々の出来事や感じたことが記されており、彼の興味を惹いた。
ノートの書かれた内容から、その持ち主であるエミがアートに情熱を持ち、自由奔放な感性を持っていることがわかった。ハルは自身も小説を書くことが趣味だったため、エミの創造的な表現に強く引かれた。
翌日、ハルはノートを手にエミを図書館で待った。彼女が現れた時、彼はすぐに声をかけた。「これ、君のものだよね?とても素敵なノートだから、無くしたら大変だと思って。」
エミは驚きつつも、彼女の目は嬉しさで輝いていた。「ありがとう、本当にありがとう。これ、私にとってとても大切なノートなの。」
その出会いが二人の交流の始まりとなった。エミのアートとハルの小説がお互いの創作活動に新たな刺激を与え、徐々に彼らは互いに深い感情を抱くようになった。ハルはエミの自由な発想からインスピレーションを受け、エミはハルの物語の中に自分の絵を描くことで応えた。
週末ごとに二人で過ごす時間が増え、公園でスケッチをしたり、カフェで物語のアイデアを話し合ったりするうちに、彼らの間には言葉以上の絆が生まれていた。ハルはエミの存在が自分の世界をどれだけ豊かにしてくれたかを実感し、彼女への感謝と愛情を深めていった。
季節が変わり、初冬の寒さが訪れる頃、ハルはエミを小さな展覧会へと誘った。そこで彼は自分が書いた小説の中でエミに捧げた章を朗読した。物語は、彼女が彼にくれたインスピレーションと愛をテーマにしていた。
朗読が終わった後、ハルはエミの前でひざまずき、小さな箱を差し出した。箱の中には彼女がいつも身に着けていたペンダントと似たデザインの指輪が入っていた。
「エミ、君がくれたものは僕の人生を変えたよ。これからもずっと一緒に創作を続けていけたらと思う。僕と結婚してくれませんか?」
エミは涙を流しながら頷き、二人は抱き合った。その日、ハルがエミに贈った指輪は、彼女が彼に与えた創造の火を永遠に燃やし続ける証となった。
それからの日々、ハルとエミはお互いの創作活動を支え合いながら、多くの作品を世に送り出していった。彼らの愛は、ノートに記された一言から始まり、無数の物語とアート作品で綴られていくことになる。それは、一冊の忘れ物から始まった予想もしなかった恋の物語だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のリリアナは、ある日前世の記憶を取り戻すとともに、死ぬ寸前まで読んでいた漫画の世界に転生している事に気が付いた。
自分が転生したリリアナは、ヒロインでもある悪女に陥れられ、絶望の中死んでいく悲劇の公爵令嬢だった。
本来なら生きるために、漫画の世界の人間と関りを絶つ方向で動くべきなのだが、彼女は違った。絶望の中死んでいったリリアナの無念を晴らすため、リリアナに濡れ衣を着せた悪女、イザベルとその協力者たちを断罪し、今度こそヒーローでもある王太子殿下、クリスとの幸せを目指すことにしたのだ。
一方クリスは、ある事情から今度こそ元婚約者だったリリアナを幸せにするため、動き出していた。
そして運命のお茶会で、2人は再開するはずだったのだが…
悲劇の公爵令嬢に転生したリリアナと、2度目の生を生きるクリスの恋のお話しです。
カクヨム、小説家になろうでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いします。
悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?
輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー?
「今さら口説かれても困るんですけど…。」
後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о)
優しい感想待ってます♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる