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三月の月の涙
しおりを挟む三月の月は、夜空にきらきらと輝きながら、桜の花を優しく照らしていた。
風が花びらを舞い上げる中、真紀は一人、桜の木の下で立っていた。
彼女の目には涙が溢れており、それは三月の月明かりに照らされて、きらきらと光っていた。
彼女の心の中には、複雑な思いが渦巻いていた。彼、直人との約束の場所だった。
2人は昨年の三月、この桜の木の下で出会った。
それは突然の雨に見舞われ、真紀が傘を持たずに困っていたとき、直人が傘を差し出してくれた瞬間からだった。
桜の花が満開の中、彼の優しさに心を奪われ、真紀は恋に落ちた。
一年が過ぎ、真紀は再びこの場所に立っていた。
約束は、再会の約束。だが、直人の姿は見えない。
彼女はずっと待ち続けていたが、時計の針は確実に進むばかりで、彼の姿はどこにも見えなかった。
「なぜ、来ないの…?」真紀は心の中で叫んでいた。
その時、彼女の背後から、優しく手が伸びてきた。
驚いて振り返ると、直人がそこに立っていた。
「遅くなって、ごめん。」
直人は真紀の涙を優しく拭い取り、彼女の顔を手で包んだ。
その瞳は、真紀への愛情とともに、何かを伝えようとしていた。
「実は、一年前のあの日…僕は、重い病気を患っていたんだ。」
彼の言葉に、真紀は驚きとともに、何かを察知してしまったようだった。
直人は続けた。
「だから、君には伝えられなくて…でも、この三月の月の下、もう一度君に会いたくて。」
真紀は涙を流しながら、彼の胸に飛び込んだ。
二人は三月の月の下で、深い愛を確かめ合った。
桜の花は、彼らの約束を見守るように、優しく舞い続けていた。
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