漫才の小説

ちちまる

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笑いの中の真実

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高校の演劇部で、隣町の文化祭に招待された智也と恵理は、漫才コンビ「トモエリ」を組んでいた。二人は普段から喧嘩ばかりしているが、舞台に上がると息ピッタリの掛け合いで観客を魅了する。今回の文化祭も、その例外ではないはずだった。

「え、なんで俺たち漫才なんかやってんの?」智也が文化祭の準備中、ぼやいた。

「だって、楽しいじゃん。それに、お互いの本音が言える唯一の場所でしょ?」恵理はニコリともせず、道具箱を開けた。

智也は答えず、ただ苦笑いを浮かべる。二人は高校に入学してからずっと演劇部で活動している。智也は脚本と演出が得意で、恵理は演技力が抜群に高い。ただ、恵理はどこか閉じていて、自分の感情を素直に出せないところがあった。それが、漫才を始めた理由だった。

当日、智也と恵理はステージの袖で緊張していた。

「大丈夫、いつもどおりやればいいんだから。」智也が励ますと、恵理は小さく頷いた。

二人がステージに上がると、照明がピンスポットで二人を照らした。観客からは歓声と拍手が起こる。

「どうもー、トモエリです!」智也が元気よく挨拶すると、恵理がツンとした態度で返す。

「元気がいいのも程々にしてよね。さて、今日は何の話しよっか。」

「えっとね、『友情』について!」智也が提案すると、恵理はそれを聞いて苦笑いする。

「友情って、お前との間にあるの?」恵理が皮肉を込めて言うと、会場からは笑いが起こった。

「あるよ、もちろん!例えば、俺がピンチの時にいつも助けてくれるじゃん?」智也が返す。

「そうね、いつもあなたの失敗をフォローしてる気がする。私、もしかして天使?」恵理が得意げに言うと、今度は大きな笑いが起こる。

そんなやり取りを繰り返すうちに、二人の距離は徐々に縮まっていった。漫才を通じて、恵理は智也に対する本当の感情を少しずつ開示していく。智也もまた、恵理のことをより深く理解するようになった。

「最後に一言、恵理から。」智也がマイクを恵理に向ける。

恵理は少し緊張した様子で、観客を見渡し、そして深呼吸をした。

「このバカ、時々本当に困らせるけど、いつもそばにいてくれてありがとう。これからも、よろしくね。」

智也は驚いた表情を隠せずにいたが、すぐに笑顔になり、「こちらこそ、ありがとう」と返した。

漫才は、二人の関係をより強固なものにしていた。観客からの暖かい拍手が二人を包む中、智也と恵理は新たな一歩を踏み出す準備ができていた。

ステージを降りた後、二人はお互いを見つめ合い、笑顔を交わした。これからも、笑いと真実を交えながら、一緒に歩んでいくことを誓い合った。
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