タイムリープの短編小説

ちちまる

文字の大きさ
上 下
11 / 11

時を越えた手紙

しおりを挟む

夕暮れ時、風に舞う桜の花びらがひらひらと降り注ぐ中、絵里は祖母の遺品整理で見つけた古い手紙を手にしていた。その手紙の束は見慣れぬ筆跡で、誰かへの強い思いが込められたものだった。手紙は祖母の若い日の恋人からのもので、その文面からは時間を超えた切ない愛が伝わってきた。

絵里がその手紙を読んでいると、突然、手紙の束から古ぼけたペンダントウォッチが滑り落ちた。それは明らかに古く、しかし緻密に作られた美しいもので、彼女の心を奪った。絵里はその時計を手に取った瞬間、不思議なほどの眩暈を感じ、目を開けると、昭和の時代にタイムスリップしていた。

目の前に広がるのは戦後の復興期の日本、その活気ある日常が絵里を圧倒した。彼女は偶然、手紙の主である青年、慎也と出会う。慎也は祖母が若い頃に心を寄せていた人物で、絵里は慎也が持つ温かな眼差しや優しさに惹かれていく。

慎也と過ごすうちに、絵里は彼が過去に残してしまった祖母への未練を知る。手紙はすべて未送信のものだったのだ。彼女は慎也を励ますため、そして祖母の若い日の姿をもっと知るために、彼と共に過去を紐解いていった。

絵里は慎也と共に多くの時間を過ごし、次第に彼に対する深い感情を抱くようになる。しかし、彼女はこの時代には留まることができず、やがて現代に戻る必要があることを知っていた。その別れの時が近づくにつれ、絵里の心は苦しみでいっぱいになる。

「慎也、私は未来に戻らなくてはならないの。でも、あなたのことは決して忘れないわ。この時計を持って、私たちの時間をいつまでも心に刻んでおくね。」

「絵里、君がいてくれたから、僕は過去の後悔に囚われずに済んだ。ありがとう。どうか未来で幸せになってくれ。」

二人は別れを告げ、絵里は現代に戻った。彼女の手元には、慎也からの最後の手紙が残されていた。それを読みながら、絵里は彼との出会いが自分の人生をどれほど豊かにしたかを感じ、涙を流した。

絵里は現代でその手紙を大切に保管し、祖母と慎也の物語を家族に語り継いでいく。そして、時を超えた愛の証として、そのペンダントウォッチをいつも身につけていた。時間が流れるごとに、絵里は慎也の言葉を胸に、前を向いて歩いていった。彼らの愛は、時間を超えて未来へと続いていくのだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...