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第一章

第13話 黒猫探しミッション 前編

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 姫川さんとの電話の後、俺は子猫探しの依頼主の家に向かった。

「あれ???」

 依頼カードに書かれた住所に来た俺は『???』になっていた。

「で、でかい家だな?」

 其処にはそれはもうドデカイ塀、ドデカイ中庭、その奥にドデカイお屋敷があった。立派な門の所に二人の門兵が立っている。
 テレシアさんの話しのイメージでは貧しい家の子供って感じだった。

「家、間違えたかな?」

 とりあえず門兵の人に聞いてみる。

「すみません。この紙の住所は此方でしょうか?」

 門兵は怖い目で俺を睨み付ける。

「そうだが、何ようだ」
「此方の家の方が、冒険者ギルドに依頼したクエストの件ですが…」

 門兵のオーラの色が紫に変わった?

「そんな話しはお館様からは聞いてはいない」
「こいつ怪しいな」

 もう1人の門兵も紫オーラで俺を睨む。ヤバくなりそうだよ。此れは撤退だな(冷汗)。

「ハハハ、家を間違えたみたいですね。失礼しました~(汗汗)」

 立ち去ろうとする俺に、館の二階の窓から女の子の声が響く。

其奴そやつを捕らえるのじゃーーー!」

 はい?
 慌ただしく二人の門兵が、俺を両脇からガッチリ捕まえる。
 はい?

 しばらくして遠くのお館の玄関が開き、女の子が此方らに向かって走ってくる。

「手荒な事はするでないぞ~」

 走りながら声をかけてくる。

「其の者は我の客じゃ~」

 …お客さんに『捕らえるのじゃ~』とか何かおかしくない?

「よう来た、よう来た。よう来てくれた。こんな処じゃ話しも出来ん。此方らに参れ」

 走って来た女の子はピンクのドレスに、ピンクのリボンのポニーテール。セシリちゃんと同じくらいの歳で、目はややつり目だがとても可愛らしいお嬢様だった。

 俺はお嬢様に誘われ、中庭のベンチに腰掛けていた。

「我の名はルミナ。其方そなたの名は?」

 うわ~!『我』って喋る人、初めて見た~。

「俺の名はライトです。駆け出しの冒険者ですが宜しくお願いします」
「うむ。待てど暮らせど誰も来ない。其方を待ちわびたぞ」
「もう少し報酬が高ければ、誰か来たかもしれないですね」
「………。あれが我の全財産じゃ…」

 うつむくルミナ様。

「………。そうでしたか。スミマセン」
「なに、気にするな。お主が来た(笑顔)」

 うわ~。笑顔が可愛い~。ヤッパ俺ってこっち系?
 和やかな雰囲気の中、俺の気配感知が中庭に隠れている、多分護衛の8人の殺気をひしひしと伝えている。
 手を出したら殺されるね(汗)。

「エルマーニャがいなくなったのじゃ」
「依頼の猫ですね」
「父殿が捨ててしまったのじゃ」
「どうしてですか?」
「祟るそうじゃ。猫は死んだら祟るからダメなそうじゃ」

ルミナ様はお化けだぞ~のポーズで説明してくれた。
 はい?

「納得出来んのじゃ。まったく納得出来んのじゃ!」

 確かに全ての猫が祟るのなら、其処ら中が祟りだらけだ。

「だからエルマーニャを探して父殿にお願いするのじゃ!エルマーニャは絶対祟らないと」
「よし!頑張ってエルマーニャを探します。エルマーニャはどんな猫なんですか?」
「黒じゃ」
「他に何か特徴はありますか?」
「黒じゃ!」
「………」
「全て真っ黒じゃ!」
「大きいとか小さいとかは?」
「子猫ではないが小さいぞ」

 子猫じゃないけど小さい黒猫…子猫の黒猫と見分けつくの?

「と、取り敢えず探してみます(汗)」
「うむ。では門を出て、塀沿いに右に曲がった所で待っておれ」
「はっ?」
「我も行くから其処で待っておれ」
「えっ、ルミナ様もご一緒に?」
「もちろんじゃ」

 俺は辺りに潜んでいる人達の様子を伺うが反応無しだ。大丈夫ってことかな?

「そ、其れでは其の場所でお待ちしています」

 言われた場所で待っていると、みすぼらしい服を着たルミナ様がやって来た。成る程、この格好で依頼されたら貧しい家の子って感じになるな。

「どうじゃ!街娘の服じゃぞ!凄いじゃろ!」

 何が凄いのか分からないが、ドレスより目立たないから連れ出しても大丈夫?とりま隠れているけど、さっきの護衛もいるみたいだし……。

「では探しに行きましょうか」
「うむ。宜しく頼むぞよ。其れで何処に行くのじゃ?」
「ルミナ様。此れをご覧下さい」

 俺は待っている間に、此の近く約1キロ内の猫を索敵していた。
 ルミナ様にサツキサンを見せるかは悩んだけど、何れは誰かに見せる事になる。ならば今見せてもいいだろうと考え、俺はルミナ様にサツキサンの画像を見せる。近所の猫はざっと30匹は写っていた。

「なんじゃ此れは?」
「俺の魔道具のサツキサンです、ルミナ様。サツキサンは特別な魔道具です。此れを見た事は内緒でお願いします」
「内緒か。内緒とは楽しいな。よし内緒じゃ!(微笑み)」
「ありがとうございます。サツキサン、この中の黒猫をソート出来る?」
「イエス、マスター。黒猫をソートします」

 猫の数は8匹迄減った。

「しゃ、喋ったのじゃ!」
「特別ですので。先ずは此処に写っている8匹からあたってみましょう」
「なんかワクワクして来たのじゃ(星キラ目)」

 俺とルミナ様と隠れているSP8名による俺の初クエストはこうして始まった。



「あの猫は?」

 俺は道端で寝ている黒猫を指差した。

「違うのじゃ」
「此れも違うと」

 俺はサツキサンに4つめのマークを付けた。探し始めて1時間。まあまあのペースだ。でも捨てたとなると近所にはいないかな?もう少し情報が欲しいなー。俺はとことこ歩きだす。

「スミマセ~ン」
「!」

 一番近くに隠れているSPの女の人に話しかけてみた。少し年上の綺麗な人だった。

「何か知ってる情報ありませんか?」
「………何故隠れているのが分かった?」
「館から気付いてましたよ。他の7人の方も」
「………貴様…何者だ…?」
「えっ、駆け出しの冒険者ですが…」
「お~。カーシャではないか!我じゃ!分かるか?」
「もしやルミナお嬢様ですか!全く分かりませんでした!」

…………。テンプレありがとうございます(汗)。

「よい所にいた。カーシャはエルマーニャの事を、何か知らぬか?」
「い、いえ。私は何も知りませんが(汗)」

 あっ、この人何か知ってる。

「其れは残念じゃ」

 あっさり信じてるし(苦笑)

「ルミナ様。お館で働く方々は皆さん誠実な方ですか?」

 俺は探りを入れるようにルミナ様に聞いてみた。

「当たり前じゃ!皆よく尽くしてくれる。其処におるカーシャも我の相談をよく聞いてくれる。心許せる大切な侍女じゃ。のう、カーシャ」
「は、はい!」

 肩がビクッとしたカーシャさん。

「ではカーシャさんは嘘などは申さないと?」
「当たり前じゃ!」
「そ、そう言えばあの日……(汗)」

 カーシャさんが慌てて話し始める。

「そう言えばあの日、エルマーニャを乗せた馬車は、北の方へ向かって行ったと聞いておりました(汗)」

 馬車で北にどうせ行くなら、北側の塀の方迄行くだろう。此処から北の塀迄は8キロはある。歩いて行くとなると結構な距離だ。さてどうしたものか。

「行くぞライト!」
「えっ?」
「行くぞと言っておる」
「結構距離有りますよ」
「エルマーニャがいるのじゃ。何を悩む」
「分かりました。行きましょう(笑顔)」

 俺達は北を目指した。ちなみにカーシャさんも一緒だ。他の7人は隠れながらついてきている。
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