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第一章

第10話 伝説の冒険者 爆(笑)誕 後編

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「俺はダンだ!宜しくな~ライト!」

 さっきの髭ファイターが又肩を組んできた。

「ちょっとダンむさいわよ~。ライト宜しくね~」

 軽ファイター風の赤いビキニプレートの酔っぱらいお姉さんが、両手で俺の首に手を回し、唇が超接近するぐらい顔を近づけてくる。それでいてオーラは緑だ。これがスキル『女の武器』なのか。恐るべし!

「ハイ、ハイ、ハイ、ダンもマリアもライト君で遊ばな~い!」

 鬼目スマイルのお姉さんが仁王立ちしていた。気が付けば周りは鎮まりかえっていたよ?

「冗談だよ、冗談。なぁ、ライとぉ~(涙目)」
「そうよね~。ほ~ら~、テレシアも笑って、笑って~(涙目)」
「私、笑ってますけどこれ以上何か?(般若)」
「「「ヒ~~っ」」」

 お姉さんの般若スマイル超恐過ぎです~(涙)。

「さっ、ライトはこっちにおいで~」

「さて話の腰を折られちゃったけど、ライト君の冒険者クラスはG。分かったと思うけど、このギルド、この国のギルドでGクラスになった冒険者は多分いないわ。どうする?」

 なるほど。だから伝説なんだね(苦笑)。

 俺とお姉さんはカウンター近くのベンチに腰掛けて、さっきの続きの話をしていた。食事処は般若の恐怖から早くも復活し賑わっている。

「Gクラスでも構いませんよ。冒険者に成れた事が嬉しいんです。俺でも出来るクエストが有れば頑張りますので、よろしくお願いします」
「…ちょっと来て」

 お姉さんが真剣な顔で立ち上がり、俺を連れてクエスト掲示板の前に行く。

「この辺りに貼って有るのは、低額報酬のクエストなの。この手のクエストは、ほとんどの冒険者が取り合わないわ。」

 掲示物を見ると、金貨1枚以下のクエストばかりだった。

「何か他のクエストのついでにこなせる物はまだいいわ。例えば此れなんかは、絶対引き受けてくれないクエストね」

 手渡されたクエストが書かれた羊皮紙。内容は読めないけど、報酬が銀貨1枚である事は俺にも分かった。

「此れは小さい女の子が持ってきた依頼なの。迷子の子猫を探して欲しいんだって。でも誰も見向きもしない。人にしろ動物にしろ、行方不明案件は難易度が高いから、私も誰かにお願いする訳にはいかなくて、でもあの子の1枚の銀貨はお小遣いをはたいて、足りない分はお母さんにお願いして、やっと作った銀貨…その願いに答えられないのが悔しくて…」

 お姉さんは両手で顔を隠し少し泣いていた。

「俺、このクエスト引き受けます!うぉー、初めてのクエストだー!何か燃えてきた~!」

 お姉さんが抱き付いてきた。

「ありがとう、ライト君」
「はい、お姉さん。頑張ります。」

 お姉さんは俺から離れると

「お姉さんじゃなくて、テレシアでいいわよ」
「はい、テレシアさん。ところでテレシアさん、(小声で)彼処に座っている、寡黙なダンディなおじさんが何か怪しげ何ですが~」

 そう、ピンクのオーラを纏い、俺をロックオンしているあのおじさん。絶対ヤバげだ。テレシアさんが顔を近づけ小声で話す。

「流石、自分で勘がいいって言うだけ有るわね。彼は通称ホモ男爵、ああやってスカシてる時は誰かに狙い目を付けている時よ。ライト君も気を付けてね」

 恐ぇ~。狙われてるの俺です~(涙)。


 宿に戻るとセシリちゃんが元気に迎えてくれた。荷物を部屋に置いた後、食事をした。
 嬉しい事に今夜はお風呂を使えるとの事を、セシリちゃんが教えてくれた。連泊のお客さんは、2日に1度お風呂に入れるそうだ。「お風呂が出来たら呼びに行くね」との事で部屋に戻る。

 部屋の椅子に座りタブレットをテーブルに乗せる。

「サツキサン、どうやってスマホにメールを送ったの?」
「愛の力です」
「……うん。其れは分かってるんだ。其れ以外は?」
「イエス、マスター。愛の力とマスターのレベルアップによって、魔導スマホ通信アプリが利用出来るようになりました。今日のメールは体験版を使用して送りました」

 体験版とか有るんだね?

「ダウンロードしますか?」
「うん。お願いするよ」
「イエス。マスター。画面の『MSN』のアイコンをクリックして下さい」

 クリックするとデータ取得中の画面になって暫くして終了した。

「あれ?今回は同意とか無いの?」
「イエス。マスター。永遠の愛の誓いは既に完了していますので、今後の同意は不要です」

 ハハハ。ワンチャンなんだ……(涙)。

「続いてマスターのスマホにも同アプリをインストールしますので、スマホを赤外線利用環境にして下さい」

 スマホを取り出し赤外線モードにする。

「開始します」

 スマホにアプリがインストールされた。

「でどうするの?」
「此のアプリはバックグラウンドで常時動いていますので、特に操作する必要はありません」
「オッケー。此れでサツキサンとメールのやり取りが出来るんだね」
「イエス。マスター。他にも電話通信サービスが利用出来ます。しかしながら現時点では、マスターからの呼び出ししか出来ません」
「えっ電話出来るの?」
「イエス。マスター。」

 マジか!

「さっ、さっそく電話してみてもいいよね」
「イエス、マスター。」


 スマホを握る手が震える中、俺は姫川さんに電話をした。

 トゥルルー、トゥルルー
 呼び出し音!電源をオフにしていない!
 出た!!!

「光斗君!!!」

 声デカッ。

「げ、元気?」
「何で電話出来てるのー!!!」
「げ、元気そうだね」
「光斗君!今何処にいるの!何処!何処!何処!」
「姫川さん少し落ち着こう。俺は王都の宿屋だよ。姫川さん達は大丈夫?」
「あっ、あっ、ごめんなさい。うん。私は元気。みんなも元気だよ。今はエンティオって町の孤児院でお世話になってる」
「良かった~~~。みんな無事なんだね」
「……光斗君も無事で…、良かった…、良かったよ~」

 電話の向こうで姫川さんが泣いている。

「うん」
「……」
「……」
「……葵です。姫川さんは泣いておりまして、声も出ないようなので私が変わりました」
「あ、葵さん。葵さんも元気そうだね」
「はい、元気でやっています。桜井さんは王都と聞きましたが、何をしているんです?」
「今日、冒険者になったよ」
「冒険者!凄いですね。ところで、何故桜井さんは携帯が使えるんですか?」
「魔導スマホアプリを使って電話してる。今んとこ此方こちらからしか…」

 トントン
 部屋の扉がノックされた。

「ライトお兄ちゃん、お風呂出来たよ~」

 セシリちゃんだ。

「ご、ゴメン。葵さん。また明日の朝電話するね」

 俺は慌てて電話を切った。


 姫川さん、みんな無事だった。良かった~。
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