上 下
43 / 88

第43話 食の安全

しおりを挟む
「1〇コインショップの野菜を食べて、腹痛や吐き気を訴える人が増えています。教会のお布施代も倍以上に値が上がり、治癒魔法を受けられない人も増えています」

「野菜はアザトーイ王国の野菜じゃないんですか?」
「はい。野菜もサディスティア王国の野菜が販売されています」

「でも野菜の多くは日持ちしませんよね?」
「1〇コインショップの野菜は一ヶ月は保存が効くそうです」

 マジか?

「……アウトだな」
「お兄様、アウトってどういう事?」
「シルフィ、食材を保存する魔法は有るか?」
「……異空間収納ぐらいかな」

「だろ。ならば他の方法としてなら薬が手っ取り早い。例えば木材に塗る防腐剤を野菜に塗ったら、幾らかは腐食を遅らせらるかもしれない」
「あれは食べられる様なものじゃないわよ」

 シルフィの言うことは最もだが、現代においても、防腐剤や防かび剤は食料品に使用されている。

 基本的には健康に問題ないレベルで使用されているが、昔は色々と健康問題があったらしいし、今でも百パーセント安全かと言えば怪しいものだ。

 例えば、海外輸入のレモン等は、皮を使用しない事が前提での濃度だったり、それを知らない消費者に対する注意喚起はされていない。

 輸入果物等は、防かび剤や防虫剤をワックスで表面にコーティングしてあるから、水洗いでは落ちない。皮を食用に使用する場合は、お湯やアルコール等で皮を拭けば大丈夫らしいが、一般的には知られていない。

 また、海外輸入品は収穫後ポストハーベスト農薬が使用される場合もあり、吐き気や手足の痺れ、更には発ガン性もあったりする。

 これらの使用濃度は決められていて、検査もされているから基本的には安全ではあるが、検査は抜き打ちで一割程度しか実施されていないとかの話もあるし、一日平均接種量をもとにした使用濃度は、個人差や年齢差もあるから、データ自身が信用できない。どうせなら5歳児の一日平均接種量とかならまだ信用出来るのだが……。

 とある論文ではチリ産養殖シャケの幼児の接種量は年間六回だとか……。

 何にせよ、この世界での薬に対する知識レベルは低い。

「サディスティア王国から見たら、戦争を吹っ掛けようとしている国の国民の健康等は知った事ではないだろう」
「ひっでえ話しだな。直ぐに助けに行こうぜ!」

 サディスティア王国のやり方が許せないクスノハ様がソファーから立ち上がるが、ルミアーナ様がそこは待ったをかけた。

「悔しいですが、今はまだ動けませんわ。王都に住む一万人の市民でさえも救えるだけの力が、今の私たちには有りませんわ」
「しかしよぉ、皆んなが苦しんでんだぜ」

 クスノハ様の言葉に、いつも余裕の笑みを見せているルミアーナ様も、唇を噛み締めている。見れば握り締めた手には爪が食い込み血が流れ出ていた。

「……トーマ様、シルフィさん、お願いがございますわ。お二人に――――」



――――――――
【作者より】
 本文の食品の安全については【輸入食品は食べても本当に大丈夫? 目黒区消費者友の会】様の記事より参照させて頂きました。

 食品の安全については賛否両論あるお話しですので、誤解されぬよう、宜しくお願いします。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん
ファンタジー
ケモミミ大好きなプログラマー大地が、ひょんなことから異世界に転移!? 転移先はなんとケモミミが存在するファンタジー世界。しかしケモミミ達は異世界では差別され,忌み嫌われていた。 人間至上主義を掲げ、獣人達を蔑ろにするガドール帝国。自分達の欲の為にしか動かず、獣人達を奴隷にしか考えていないトーム共和国の領主達。 大地はそんな世界からケモミミ達を守るため、異世界転移で手に入れたプログラマーというスキルを使いケモミミの為の王国を作る事を決めた! ケモミミの王国を作ろうとする中、そんな大地に賛同する者が現れ始め、世界は少しずつその形を変えていく。 ハーレム要素はあまりありませんのであしからず。 不定期での更新になりますが、出来る限り間隔が空かないように頑張ります。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...