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第十四話 ゴブリンの猛攻
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レンたちは休憩の後、第ニ階層へと続く階段を降りる。
第一階層でのクレアの捜索については行わない。
理由はクレアが洞窟の中に入ってから、二組の冒険者が第一階層で探索を行ったという情報がギャンツからあったからだ。
なのでレンたちが探すのはクレアがダンジョンに潜ってから探索が行われていない第二階層からになる。
「そういえば、第二階層からはトラップがあるんだよな?」
「そうですね。ギャンツ支部長の話だと、第二階層からは下層にある魔物部屋へと繋がる落とし穴があるそうです」
「落とし穴か。下層に繋がってるなら逆にショートカットになりそうだが」
「……レン様ならそれも可能かもしれませんが……魔物部屋はとても危険な場所で、普通の冒険者ならまず生還は不可能だとギャンツ支部長が言ってましたよ」
第一階層の動く樹木ですら、厄介だったのだ。
下層ならより強い魔物が出るだろうし、魔物部屋というからにはその物量も動く樹木の比ではないだろう。
そう考えると落とし穴は避けるのが無難だ。
「でも落とし穴って見ただけで分かるのか? 歩っていたら急に落ちたじゃ困るぞ」
「大丈夫です。ギャンツさんから落とし穴を見破る方法を教えてもらいました。私に任せてください!」
ギャンツは落とし穴の対策もしっかりアリスに教えてくれたらしい。それならトラップに関しては大丈夫だろう。
そうなるとこの階層もレンが注意するべきは魔物だ。
「よし。じゃあ落とし穴はアリスに任せるとして、魔物の相手は俺だ。この階層の魔物の情報を教えてくれるか?」
「……あの、少し前から思っていたのですが、レン様、もしかしてギャンツ支部長のお話、あまり聞いていなかったのですか?」
「――え……? いや、まあ……」
レンはアリスから目を逸らし頭を掻く。
「図星ですか……もうっ……! 命に関わることなんだから、ちゃんと聞いてないとダメじゃないですか!」
アリスは頬を膨らませぷりぷりと怒る。仕草が可愛いのでまったく怖くはない。
「……悪い。アリスも聞いていたから大丈夫だと思ってつい……」
確かに情報は重要だ。特に今回のような危険な仕事なら尚更そうだろう。
アリスが優秀なのでつい甘えてしまった。気を付けなくては。
「――ッ……し、仕方ないですね……! でも、次からは真剣に聞いてくださいよ……?」
「ああ」
アリスは可愛い怒り顔から、一瞬目を見開くとキョトンとした顔になる。するとなぜかすんなりと許してくれる。素直に謝ったおかげだろうか。
その後、機嫌が直ったアリスから第二階層の魔物の情報を教えてもらった。
~~~
第二階層。
アリスからトラップと魔物の情報を共有してもらったレンは第一階層同様、先頭に立ち、魔物の警戒を行う。
第二階層に出現する魔物は小鬼という名前で、緑色の肌に人間の子供のような姿をしているそうだ。
知能は低く攻撃的で、人間を見ると石や木でできた簡素な武器を持ち、集団で襲ってくるらしい。
また、繁殖能力も高く、人間の女や多種族のメスを自分たちの巣に連れ去り、孕ませ、子供を産ませるのだとか。
女性にとってはまさに最悪の魔物だが、ことダンジョンにおいてはその心配はなさそうだ。なぜなら、ダンジョン内では魔物は自ら繁殖はせずに、基本的に数が減ると自動的にダンジョンから魔物が補充されるらしい。
なんとも機械的なシステムだ。
それと肝心な小鬼の出現場所だが、第二階層ならどこに現れてもおかしくはないとのこと。
なので、この暗いダンジョン内ではいつ襲われてもいい様に警戒する必要がある。
「レン様、次の分かれ道は右に曲がってください」
「了解」
トラップの落とし穴に関しては完全にアリス任せだが、彼女の言う通りに歩いていれば落ちる心配はないだろう。
ちなみに落とし穴を見破るにはエターナルマップを使うらしい。やり方を少しアリスに教えてもらったが、レンにはまったく理解できなかった。
「ん? なんか音が聞こえないか?」
アリスの指示通りに道を進んでいると壁の奥から微かに音が聞こえ始める。
「音ですか?」
アリスは手を耳に当て、レンが聞こえたという音を探す。
「……私には聞こえませんが、どこから聞こえますか?」
「こっちの壁の向こう側だ」
レンは左側の通路の壁に手を当て音の発生源をアリスに示す。
「エターナルマップだとこの先に通路がありますね。一応調べておきますか?」
「そうだなクレアがいるかもしれない」
こうしてレンたちはエターナルマップを頼りに音の発生源と思われる通路へと向かうことにした。
~~~
「止まれ!」
音が発生したと思われる通路を進んでいると、奇妙な音が聞こえ、アリスに静止を促す。
「聞こえるか?」
「聞こえました!」
耳を澄ますとアリスにも何やら奇妙な音が聞こえてきた。
「これは……小鬼の鳴き声でしょうか?」
「……だとしたらマズイかもな。結構な数だぞ」
アリスにはまだ微かにしか聞こえないので、数までは分からないがレンには分かるらしい。聴覚も常人より秀でているのだろうか。
「……それなら引き返しましょう。幸いまだ気付かれるような距離ではな――え……?」
小鬼の群れを避けるため引き返そうと、来た道を振り返るアリス。
すると、暗がりに浮かぶ真っ赤な双眸がアリスの目と合った。
「ギャーッ!! ギャーッ!!!!」
アリスと目が合った瞬間、双眸の持ち主は絶叫と共に襲いかかってくる。
それは小鬼だった。予想外の出来事にアリスは反応が遅れ硬直する。
「――ッ!! アリス!!」
「きゃっ!?」
小鬼の棍棒がアリスの顔面を打ち砕く瞬間、レンにマントのフードを引っ張られ、アリスは中空に投げ飛ばされる。
(いたたた……ってレン様は!?)
受け身も取れずに地面に転がったアリスは、身体の痛みに顔を歪めるが、すぐに状況を把握するため周囲に目を向ける。
するとアリスが今しがた立っていた場所に顔が潰された小鬼が通路に血を撒き散らしながら倒れていた。
「――大丈夫かアリス! 悪い、とっさに投げ飛ばしちまった」
「いえ、謝るのは私の方です……! レン様のおかげで助かりました……!」
レンに助けられなければアリスは今頃大怪我では済まなかっただろう。それに比べれば地面に身体を打つぐらいどうってことはない。
これくらいの打撲なら治癒魔法で一瞬で治る。
「助けるのは当然だ。それより……まずいな。どうやら、今のこいつの叫びで奥にいた小鬼に気付かれたみたいだ。真っすぐこっちに向かってきている」
「――なら、急いでここを離れましょう!」
「……いや、それも無理だ。後ろに沸いたのはこいつだけじゃない。正面の群れと同等の数の奇声が奥から聞こえてくる」
小鬼は群れをなす魔物だ。当然一匹いれば、それなりの数が近くに居る。 それなら残された道は一つ、挟まれる前にどちらかの小鬼の群れを迎え撃つしかない。
「レン様、音が近いのはどちらの群れですか?」
「正面だな」
「では、挟まれる前にそちらを殲滅しましょう!」
「分かった! そうしよう!」
~~~
「ギャーッ!!」
奇声を発しながらレンに向かって複数の小鬼が突っ込んでくる。
「レン様! 火魔法を使います!!」
「おう!」
アリスの魔法に巻き込まれないように射線上からレンは素早く横に逸れる。
「火球!!」
アリスが魔法を詠唱すると小鬼に向かってバスケットボールぐらいの大きさの火の玉が勢いよく飛んでいき、数体の小鬼を焼き尽くした。
「今の内だ!!」
アリスの魔法を見て怯んだ小鬼にレンは一瞬で距離を詰め、一気に三体の小鬼の首を刈り取る。
すると首を失った小鬼たちは血飛沫を上げながら地面に崩れ落ちた。
「アリス次が来るぞ!!」
「はい!」
アリスとレンの奮闘で少しずつ小鬼の数は減っている気がするが、それでも次から次へと小鬼たちは襲ってくる。第一階層の動く樹木もそうだが、本当に初心者向けのダンジョンなのだろうか。
(まずいな。このままだとアリスのカバーに回れない)
アリスの戦う術は火魔法による中距離攻撃だが、この狭い通路じゃあまり魔法は使えない。
なのでアリスに小鬼を近づけないようレンは立ち回る必要がある。だが、数十体の小鬼相手に狭い空間でそれは無理だ。
ならば一瞬でもいいので突破口を作り、もっと戦いやすい場所へと移動するべきだろう。
「アリス! あそこに魔法を撃てるか?!」
「――はい!! 火球!!」
レンが指差す方へアリスが魔法を放つと、通路を塞いでいた数体の小鬼が吹き飛ばされた。
「――きゃっ……!? れ、レン様……!?」
「捕まってろ!!」
レンはアリスをお姫様抱っこすると、アリスが作った包囲の穴に飛び込み、小鬼の群れを突破する。
「――ま、待ってくださいレン様!! そっちは――」
「――しまっ……」
アリスが必死にレンを止めようと叫ぶがもう遅い。レンが飛び込んだ先の床が崩落し、レンたちは中空に投げ出されてしまった。落とし穴だ。
(――ミスった……でも、まだアリスだけは助かる……!!)
レンは咄嗟に小鬼の群れがいない対岸へとアリスを投げ飛ばす。
これでアリスは落とし穴と小鬼から逃れられるだろう。
「――レン様!? レン様ぁぁああああああ!!」
アリスの叫びを置き去りに、レンは一人、暗い穴の底に落ちていった。
第一階層でのクレアの捜索については行わない。
理由はクレアが洞窟の中に入ってから、二組の冒険者が第一階層で探索を行ったという情報がギャンツからあったからだ。
なのでレンたちが探すのはクレアがダンジョンに潜ってから探索が行われていない第二階層からになる。
「そういえば、第二階層からはトラップがあるんだよな?」
「そうですね。ギャンツ支部長の話だと、第二階層からは下層にある魔物部屋へと繋がる落とし穴があるそうです」
「落とし穴か。下層に繋がってるなら逆にショートカットになりそうだが」
「……レン様ならそれも可能かもしれませんが……魔物部屋はとても危険な場所で、普通の冒険者ならまず生還は不可能だとギャンツ支部長が言ってましたよ」
第一階層の動く樹木ですら、厄介だったのだ。
下層ならより強い魔物が出るだろうし、魔物部屋というからにはその物量も動く樹木の比ではないだろう。
そう考えると落とし穴は避けるのが無難だ。
「でも落とし穴って見ただけで分かるのか? 歩っていたら急に落ちたじゃ困るぞ」
「大丈夫です。ギャンツさんから落とし穴を見破る方法を教えてもらいました。私に任せてください!」
ギャンツは落とし穴の対策もしっかりアリスに教えてくれたらしい。それならトラップに関しては大丈夫だろう。
そうなるとこの階層もレンが注意するべきは魔物だ。
「よし。じゃあ落とし穴はアリスに任せるとして、魔物の相手は俺だ。この階層の魔物の情報を教えてくれるか?」
「……あの、少し前から思っていたのですが、レン様、もしかしてギャンツ支部長のお話、あまり聞いていなかったのですか?」
「――え……? いや、まあ……」
レンはアリスから目を逸らし頭を掻く。
「図星ですか……もうっ……! 命に関わることなんだから、ちゃんと聞いてないとダメじゃないですか!」
アリスは頬を膨らませぷりぷりと怒る。仕草が可愛いのでまったく怖くはない。
「……悪い。アリスも聞いていたから大丈夫だと思ってつい……」
確かに情報は重要だ。特に今回のような危険な仕事なら尚更そうだろう。
アリスが優秀なのでつい甘えてしまった。気を付けなくては。
「――ッ……し、仕方ないですね……! でも、次からは真剣に聞いてくださいよ……?」
「ああ」
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その後、機嫌が直ったアリスから第二階層の魔物の情報を教えてもらった。
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第二階層。
アリスからトラップと魔物の情報を共有してもらったレンは第一階層同様、先頭に立ち、魔物の警戒を行う。
第二階層に出現する魔物は小鬼という名前で、緑色の肌に人間の子供のような姿をしているそうだ。
知能は低く攻撃的で、人間を見ると石や木でできた簡素な武器を持ち、集団で襲ってくるらしい。
また、繁殖能力も高く、人間の女や多種族のメスを自分たちの巣に連れ去り、孕ませ、子供を産ませるのだとか。
女性にとってはまさに最悪の魔物だが、ことダンジョンにおいてはその心配はなさそうだ。なぜなら、ダンジョン内では魔物は自ら繁殖はせずに、基本的に数が減ると自動的にダンジョンから魔物が補充されるらしい。
なんとも機械的なシステムだ。
それと肝心な小鬼の出現場所だが、第二階層ならどこに現れてもおかしくはないとのこと。
なので、この暗いダンジョン内ではいつ襲われてもいい様に警戒する必要がある。
「レン様、次の分かれ道は右に曲がってください」
「了解」
トラップの落とし穴に関しては完全にアリス任せだが、彼女の言う通りに歩いていれば落ちる心配はないだろう。
ちなみに落とし穴を見破るにはエターナルマップを使うらしい。やり方を少しアリスに教えてもらったが、レンにはまったく理解できなかった。
「ん? なんか音が聞こえないか?」
アリスの指示通りに道を進んでいると壁の奥から微かに音が聞こえ始める。
「音ですか?」
アリスは手を耳に当て、レンが聞こえたという音を探す。
「……私には聞こえませんが、どこから聞こえますか?」
「こっちの壁の向こう側だ」
レンは左側の通路の壁に手を当て音の発生源をアリスに示す。
「エターナルマップだとこの先に通路がありますね。一応調べておきますか?」
「そうだなクレアがいるかもしれない」
こうしてレンたちはエターナルマップを頼りに音の発生源と思われる通路へと向かうことにした。
~~~
「止まれ!」
音が発生したと思われる通路を進んでいると、奇妙な音が聞こえ、アリスに静止を促す。
「聞こえるか?」
「聞こえました!」
耳を澄ますとアリスにも何やら奇妙な音が聞こえてきた。
「これは……小鬼の鳴き声でしょうか?」
「……だとしたらマズイかもな。結構な数だぞ」
アリスにはまだ微かにしか聞こえないので、数までは分からないがレンには分かるらしい。聴覚も常人より秀でているのだろうか。
「……それなら引き返しましょう。幸いまだ気付かれるような距離ではな――え……?」
小鬼の群れを避けるため引き返そうと、来た道を振り返るアリス。
すると、暗がりに浮かぶ真っ赤な双眸がアリスの目と合った。
「ギャーッ!! ギャーッ!!!!」
アリスと目が合った瞬間、双眸の持ち主は絶叫と共に襲いかかってくる。
それは小鬼だった。予想外の出来事にアリスは反応が遅れ硬直する。
「――ッ!! アリス!!」
「きゃっ!?」
小鬼の棍棒がアリスの顔面を打ち砕く瞬間、レンにマントのフードを引っ張られ、アリスは中空に投げ飛ばされる。
(いたたた……ってレン様は!?)
受け身も取れずに地面に転がったアリスは、身体の痛みに顔を歪めるが、すぐに状況を把握するため周囲に目を向ける。
するとアリスが今しがた立っていた場所に顔が潰された小鬼が通路に血を撒き散らしながら倒れていた。
「――大丈夫かアリス! 悪い、とっさに投げ飛ばしちまった」
「いえ、謝るのは私の方です……! レン様のおかげで助かりました……!」
レンに助けられなければアリスは今頃大怪我では済まなかっただろう。それに比べれば地面に身体を打つぐらいどうってことはない。
これくらいの打撲なら治癒魔法で一瞬で治る。
「助けるのは当然だ。それより……まずいな。どうやら、今のこいつの叫びで奥にいた小鬼に気付かれたみたいだ。真っすぐこっちに向かってきている」
「――なら、急いでここを離れましょう!」
「……いや、それも無理だ。後ろに沸いたのはこいつだけじゃない。正面の群れと同等の数の奇声が奥から聞こえてくる」
小鬼は群れをなす魔物だ。当然一匹いれば、それなりの数が近くに居る。 それなら残された道は一つ、挟まれる前にどちらかの小鬼の群れを迎え撃つしかない。
「レン様、音が近いのはどちらの群れですか?」
「正面だな」
「では、挟まれる前にそちらを殲滅しましょう!」
「分かった! そうしよう!」
~~~
「ギャーッ!!」
奇声を発しながらレンに向かって複数の小鬼が突っ込んでくる。
「レン様! 火魔法を使います!!」
「おう!」
アリスの魔法に巻き込まれないように射線上からレンは素早く横に逸れる。
「火球!!」
アリスが魔法を詠唱すると小鬼に向かってバスケットボールぐらいの大きさの火の玉が勢いよく飛んでいき、数体の小鬼を焼き尽くした。
「今の内だ!!」
アリスの魔法を見て怯んだ小鬼にレンは一瞬で距離を詰め、一気に三体の小鬼の首を刈り取る。
すると首を失った小鬼たちは血飛沫を上げながら地面に崩れ落ちた。
「アリス次が来るぞ!!」
「はい!」
アリスとレンの奮闘で少しずつ小鬼の数は減っている気がするが、それでも次から次へと小鬼たちは襲ってくる。第一階層の動く樹木もそうだが、本当に初心者向けのダンジョンなのだろうか。
(まずいな。このままだとアリスのカバーに回れない)
アリスの戦う術は火魔法による中距離攻撃だが、この狭い通路じゃあまり魔法は使えない。
なのでアリスに小鬼を近づけないようレンは立ち回る必要がある。だが、数十体の小鬼相手に狭い空間でそれは無理だ。
ならば一瞬でもいいので突破口を作り、もっと戦いやすい場所へと移動するべきだろう。
「アリス! あそこに魔法を撃てるか?!」
「――はい!! 火球!!」
レンが指差す方へアリスが魔法を放つと、通路を塞いでいた数体の小鬼が吹き飛ばされた。
「――きゃっ……!? れ、レン様……!?」
「捕まってろ!!」
レンはアリスをお姫様抱っこすると、アリスが作った包囲の穴に飛び込み、小鬼の群れを突破する。
「――ま、待ってくださいレン様!! そっちは――」
「――しまっ……」
アリスが必死にレンを止めようと叫ぶがもう遅い。レンが飛び込んだ先の床が崩落し、レンたちは中空に投げ出されてしまった。落とし穴だ。
(――ミスった……でも、まだアリスだけは助かる……!!)
レンは咄嗟に小鬼の群れがいない対岸へとアリスを投げ飛ばす。
これでアリスは落とし穴と小鬼から逃れられるだろう。
「――レン様!? レン様ぁぁああああああ!!」
アリスの叫びを置き去りに、レンは一人、暗い穴の底に落ちていった。
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