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第三章 運命の決闘《デート》@練習試合
15話
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15
その日、自主練を終えた俺は、八時四十分、寮の自室へと戻った。
ドアを開けると、背筋を伸ばして椅子に座った皇樹が、机の上に置いた国語の教科書と睨めっこしていた。今にも唸り出しそうな、しかめっ面で、である。
「練習試合、お疲れっす」
部屋の中へと歩いて行きながら、俺は、軽い調子で話し掛けた。
「おう、桔平。昼は来てくれてありがとな」
皇樹はふっと顔を上げて、弾んだ声で小さく笑った。
「にしても、皇樹。今日はキレまくってたよな。三点目なんか、全盛期のジダンを彷彿とさせる鬼キープだったしね」
やや興奮気味の俺は、自分の思うところを率直に伝えた。すると、皇樹の笑顔がすーっと引っ込んだ。
「まあでもよ。言っちゃあ悪いけど、今日の相手は万年J2のチームなわけよ。J1を相手に今日のプレーができるかっつーと、正直自信はねえな」
皇樹の声音は、すっきりとしない。「まあ、こっからっすよ、こっから」とお茶を濁した俺は、鞄を自分の机の近くに置いた。残っている宿題を片付けなければいけなかった。
「女子Aとのゲーム、もう再来週だよな。どうだ、勝てそうかよ?」
皇樹は、鋭い眼光でもって問うてきた。エネルギーに満ちた口振りは、挑むようでさえある。
挑発に乗った俺は、目を大きく開いて皇樹を見返す。
「訊くまでもないでしょーよ。スカッと快勝して、鮮やかにB昇格と洒落込こんじゃいますよ。俺は断じて、Cにい続ける器ではないんだよ。そこんところ、忘れてもらっちゃー困る」
一瞬、未奈ちゃんの話題に移ろうか迷ったけど、止めといた。皇樹が未菜ちゃんの気持ちを知っているかどうか、わからなかったからね。
「わかってるだろうけどよ、竜神女子サッカー部はつえーぞ。女子独特のテンションに負けずに声を張ってかねえと、勝機はないぜ。気合と根性、フル・マックスでいけよ」
言い聞かせるように告げた皇樹は、右手で握り拳を作って俺に向けた。俺は迷わずに、同じようにした左手を、皇樹の右手とぶつけた。
その日、自主練を終えた俺は、八時四十分、寮の自室へと戻った。
ドアを開けると、背筋を伸ばして椅子に座った皇樹が、机の上に置いた国語の教科書と睨めっこしていた。今にも唸り出しそうな、しかめっ面で、である。
「練習試合、お疲れっす」
部屋の中へと歩いて行きながら、俺は、軽い調子で話し掛けた。
「おう、桔平。昼は来てくれてありがとな」
皇樹はふっと顔を上げて、弾んだ声で小さく笑った。
「にしても、皇樹。今日はキレまくってたよな。三点目なんか、全盛期のジダンを彷彿とさせる鬼キープだったしね」
やや興奮気味の俺は、自分の思うところを率直に伝えた。すると、皇樹の笑顔がすーっと引っ込んだ。
「まあでもよ。言っちゃあ悪いけど、今日の相手は万年J2のチームなわけよ。J1を相手に今日のプレーができるかっつーと、正直自信はねえな」
皇樹の声音は、すっきりとしない。「まあ、こっからっすよ、こっから」とお茶を濁した俺は、鞄を自分の机の近くに置いた。残っている宿題を片付けなければいけなかった。
「女子Aとのゲーム、もう再来週だよな。どうだ、勝てそうかよ?」
皇樹は、鋭い眼光でもって問うてきた。エネルギーに満ちた口振りは、挑むようでさえある。
挑発に乗った俺は、目を大きく開いて皇樹を見返す。
「訊くまでもないでしょーよ。スカッと快勝して、鮮やかにB昇格と洒落込こんじゃいますよ。俺は断じて、Cにい続ける器ではないんだよ。そこんところ、忘れてもらっちゃー困る」
一瞬、未奈ちゃんの話題に移ろうか迷ったけど、止めといた。皇樹が未菜ちゃんの気持ちを知っているかどうか、わからなかったからね。
「わかってるだろうけどよ、竜神女子サッカー部はつえーぞ。女子独特のテンションに負けずに声を張ってかねえと、勝機はないぜ。気合と根性、フル・マックスでいけよ」
言い聞かせるように告げた皇樹は、右手で握り拳を作って俺に向けた。俺は迷わずに、同じようにした左手を、皇樹の右手とぶつけた。
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