上 下
47 / 64
第三章 運命の決闘《デート》@練習試合

15話

しおりを挟む
       15

 その日、自主練を終えた俺は、八時四十分、寮の自室へと戻った。
 ドアを開けると、背筋を伸ばして椅子に座った皇樹が、机の上に置いた国語の教科書と睨めっこしていた。今にも唸り出しそうな、しかめっ面で、である。
「練習試合、お疲れっす」
 部屋の中へと歩いて行きながら、俺は、軽い調子で話し掛けた。
「おう、桔平。昼は来てくれてありがとな」
 皇樹はふっと顔を上げて、弾んだ声で小さく笑った。
「にしても、皇樹。今日はキレまくってたよな。三点目なんか、全盛期のジダンを彷彿とさせる鬼キープだったしね」
 やや興奮気味の俺は、自分の思うところを率直に伝えた。すると、皇樹の笑顔がすーっと引っ込んだ。
「まあでもよ。言っちゃあ悪いけど、今日の相手は万年J2のチームなわけよ。J1を相手に今日のプレーができるかっつーと、正直自信はねえな」
 皇樹の声音は、すっきりとしない。「まあ、こっからっすよ、こっから」とお茶を濁した俺は、鞄を自分の机の近くに置いた。残っている宿題を片付けなければいけなかった。
「女子Aとのゲーム、もう再来週だよな。どうだ、勝てそうかよ?」
 皇樹は、鋭い眼光でもって問うてきた。エネルギーに満ちた口振りは、挑むようでさえある。
 挑発に乗った俺は、目を大きく開いて皇樹を見返す。
「訊くまでもないでしょーよ。スカッと快勝して、鮮やかにB昇格と洒落込こんじゃいますよ。俺は断じて、Cにい続ける器ではないんだよ。そこんところ、忘れてもらっちゃー困る」
 一瞬、未奈ちゃんの話題に移ろうか迷ったけど、止めといた。皇樹が未菜ちゃんの気持ちを知っているかどうか、わからなかったからね。
「わかってるだろうけどよ、竜神女子サッカー部はつえーぞ。女子独特のテンションに負けずに声を張ってかねえと、勝機はないぜ。気合と根性、フル・マックスでいけよ」
 言い聞かせるように告げた皇樹は、右手で握り拳を作って俺に向けた。俺は迷わずに、同じようにした左手を、皇樹の右手とぶつけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

東岡忠良
青春
 二卵性双生児の兄妹、新屋敷竜馬(しんやしきりょうま)と和葉(かずは)は、元女子高の如月(きさらぎ)学園高校へ通うことになった。  今年から共学となったのである。  そこは竜馬が想像していた以上に男子が少なかった。  妹の和葉は学年一位の成績のGカップ美少女だが、思春期のせいか、女性のおっぱいの大きさが気になって仕方がなく、兄竜馬の『おちんちん』も気になって仕方がない。  スポーツ科には新屋敷兄弟と幼稚園からの幼馴染で、長身スポーツ万能Fカップのボーイッシュ少女の三上小夏(みかみこなつ)。  同級生には学年二位でHカップを隠したグラビアアイドル級美人の相生優子(あいおいゆうこ)。  中学からの知り合いの小柄なIカップロリ巨乳の瀬川薫(せがわかおる)。  そして小柄な美少年男子の園田春樹(そのだはるき)。  竜馬の学園生活は、彼らによって刺激的な毎日が待っていた。  新屋敷兄妹中心に繰り広げられる学園コメディーです。  それと『お気に入り』を押して頂けたら、とても励みになります。  よろしくお願い致します。

私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜

赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。 これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。 友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!

草ww破滅部活動日記!

koll.
青春
千葉県にある谷武高校の部活。草ww破滅部。そのメンバーによる、草wwを滅するためにつくった、部活。そして、そのメンバーのゆるい、そして、時には友情、恋愛。草ww破滅部が贈る日常友情部活活動日記である!

制服の胸のここには

戸影絵麻
青春
金田猛と氷室基子はともに曙高校の2年生。 ある日ふたりは”校長”から協力して極秘のミッションを遂行するよう、命令される。 その任務を達成するための条件は、搭乗者同士の緊密な心の結びつき。 ところがふたりはそれぞれ深刻な悩みを抱えており、特に基子は猛に全く関心を示そうとしないのだった。 猛はといえば、彼もまたある事件から己の性癖に疑問を抱くようになり…。

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...