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第三章 運命の決闘《デート》@練習試合

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 一時間目の数学、超厳しいと噂の強面教師が、一年間の全体概要を話し始めた。クラスに漂う真剣な雰囲気を感じながら、俺はくるくるとペンを回しつつ思考に没頭する。
 未奈ちゃんは、男女最強選手という実現が極めて難しい目標に向かって、一直線に突き進んでいる。一流アスリートの集う竜神高校でも、未奈ちゃんほど深く競技に打ち込んでいる者は少ないだろう。
 また未奈ちゃんは、自らの毒舌に挫けずに立ち向かう人には誠意を持って対応する。ミニ・ゲーム後に口にした、辛辣だけど本質を突いた試合結果の考察然り、俺に命じた、楓ちゃんとの個人練習然り。意識してか無意識にかはわからないけど。
 にしても、未奈ちゃんが皇樹にお熱だったとは。大ショックだけど俺の進む道は変わらない。二人が遥か先を行くなら、愛のパワーで全力で追うだけだ。
 皇樹への思いはどうあれ、あらゆる意味でサッカー一極集中な未奈ちゃん。一方、今の俺はどうなんだ? 未奈ちゃんのように、一瞬の迷いもなく努力ができてんのか? 常にサッカーを考えた行動を取れてんのか?
 たとえば俺はスパイク選びで、一万円の予算の上限を設けている。親に負担が掛かるからね。だけど本当に、高くても性能の良い自分に合ったスパイクを買う方法はないのか。
 まだまだあるわな。俺が今、受けている食堂の食事サービスだけど、費用は決して安くない。食堂の料理が本当に運動選手に合ったものかもわかってない。いろんな点で、見直す余地がある気がする。
 幸い俺には、インター・ネットっつー文明の利器がある。一回、ちゃんと調べてみようかな。ネットに頼るヒーローって、なんとなくダサい感じもするけどね。
 もう一つ、ある人に、しなくちゃいけない頼みごとがある。ずっと前からの深刻な懸念事項で、昨日のミニ・ゲームで痛感した自分の弱点に関係する事柄だ。
 そんじゃあ今日の昼休みは、三国同盟の成立に向けて尽力でもするかね。同盟の最終目標は、未奈ちゃんの心の乗っ取りだ。
 ペン回しを止めた俺は、数式の並ぶ教科書の端に相合傘を書いた。下に並ぶ字は、もちろん「水池未奈」「星芝桔平」。
 うむ。何度となく見返しても、黄金比のように洗練された図形である。神が与えたもうたとしか思えないよね。いや、ほんとに。
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