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第二章 負けられぬハンデ戦@賭けミニゲーム
18話
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18
未奈ちゃんと約束をした日の全体練習後、俺は、沖原と佐々に、三対二のミニ・ゲームについて話した。俺の都合で巻き込んだにも拘わらず、二人とも、二つ返事で承諾した。テクニシャン、未奈ちゃんとのミニ・ゲーム、得る物は多いからね。
ミニ・ゲームの当日、新入生テストがあった。全教科を一日に詰め込んでいるため、午後四時過ぎまで掛かった。竜神高校の、進学校としての一面を垣間見た気がした。
テストの後の全体練習を終えた俺たちは、すぐに移動を始めた。既に自主練の始まっている女子Aの芝生のグラウンドの横を通り過ぎて、フットサル・コートの扉を開く。
コートは手前と奥に二面あり、周りは、四mほどの高さの柵と照明で囲まれている。既に日は没しているが、照明からの光は眩しく、コートの一帯だけ夜が切り抜かれているかのようだ。
手前のコートでは、赤地の上にメーカー名の入ったシンプルなシャツと白のショート・パンツをお召しの未奈ちゃんが、俺たちを詰まらなさそうに目で追っていた。左足一本でリフティングをしながら、である。
「へー、生意気をかましてくれんじゃないの。いっちょ前に、まさかの巌流島作戦? あんたたち、宮本武蔵にはなれやしないわよ。二度と立ち上がれないぐらいに、ズッタズタのぼろぼろのぼろ負けするんだからさー」
未奈ちゃんは、アラウンド・ザ・ワールドをしつつ、ロー・テンションの皮肉を飛ばしてくる。一応、時間には間に合ってるんだけどね。
隣では、FCバルセロナのユニフォーム姿の女の子がぴょんぴょんと両足ジャンプをしていた。肩ぐらいまでの黒髪を、ポニーテールに結っている。両の瞳はキラキラしていて、「あたし今日、テンションマックス!」って思念が漏れてくるようである。身体つきは華奢で、庇護欲をそそる感じだった。
うむ、誠心誠意、完全完璧なロリである。俺、ロリコンじゃあないけれど、アクティブ全開なJSってのはなかなか見ていて感慨深いものがあるよね。
「ちょっと待っててー。すぐに準備するからー」
やや早口で答えた俺は、柵の近くに鞄を置いてコートに入った。少し遅れて、沖原と佐々も続く。
十二組のCチーム三人組と、未奈ちゃん&ロリJSは、一つのフットサル・コートを四分割して作ったコートの中央に集まった。広さは、二十m×十mくらいで、ゴールの代わりにコーンが二つ置いてある。間を通ったら一点って寸法だ。
フットサル・ボールを左足で地面に抑えた未奈ちゃんが、ドライな面持ちで口を開く。
「試合は、五点先取の時間無制限。キーパーはなし。ボールが外に出た時は、基本的にはサッカーと同じだけど、タッチ・ラインを割った時はキック・インでいきましょ」
「時間無制限? JSもいるのに? 長く続けば続くほど、俺たちが有利になるけど、良いの?」
単純に疑問な俺は、即座に問うた。未奈ちゃんの口角がわずかに上がる。
「心配してくれてんだ? 優しいのねー。大丈夫よ。すぐに終わるから」
断言した未奈ちゃんの静かな迫力に、俺たちは何も言い返せない。
「そんじゃ賭けの条件を確認しましょーか。こっちが負けたら、私は、色呆け桔平とデートする」
想定外の呼称に、俺は、「お、おう。望むところだよ」と口籠もる。色呆け桔平か。なんとなく、名前として成立しちゃってる感があるね。
「私らが勝ったら……。何だっけ? ああ、色呆け桔平が、私の言うことを百個聞く、だったわね」
「……み、未奈ちゃん? 水増しはしないでね。一個だけだよ、一個だけ。百個って、どんだけ大盤振る舞いなドラゴンボールだよ」
未奈ちゃんは小声で軽く諌めた俺に、「そうだっけ?」と、きょとんって感じで首を傾げる。文字通り、桁違いの強かさである。
「んじゃ、とっとと終わらせちゃいましょうか。この初めから結末のわかっている予定調和感満載のミニ・ゲームをね。ほらほら、さっさと散りなさい」
未奈ちゃんのクールな毒舌を受けて、俺たちはダッシュで散らばった。ポジションは左から順に、沖原、俺、佐々である。
未奈ちゃんはコートの真ん中にボールを置き、隣のJSに、「カエデ、遠慮は要らないわよ。最初っから、全力で飛ばしていきなさい」と発破を掛けていた。きつめだが、どことなく愛を感じさせる喋り方である。
JSの名前はカエデか。なーんかどっかで聞いた覚えがあるけど、どこだったっけか。
未奈ちゃんがボールを出して、試合開始。
パスを受けたカエデちゃんは、右後ろに大きく助走を取った。え、何をしてんの?
「佐々、当たれ!」嫌な予感がして、俺は命じた。次の瞬間、カエデちゃんは右足でボールを蹴った。足の外側で、ボールの左を掠めるようなキック。
コートの時が止まった。全員の注目がボールに向く。
俺と佐々の間を抜けたボールは、ワン・バウンドするや否や、進行方向を急激に左に変えた。
ツー・バウンド、スリー・バウンド。ボールはどんどん右に曲がっていき、ゴールのコーン擦れ擦れを通過する。〇対一。〇対一?
「イエーイ! 先制点ゲーット♪ どーだ! あたしの必殺、天下無双のキックオフシュートは!」
楽し気な声に振り返ると、声の主、カエデちゃんが俺へと右手でピースしていた。自信満々って感じの満開の笑顔で、目が合うとぱちんとウインクまでしてきた。
未奈ちゃんは、カエデちゃんの頭を手でくしゃくしゃっとして、「ナイス・シュート。あんた、アウトも上手くなったわねー」心の底から嬉しそうな様子である。
「いやいやいやいや、何、今のキック。ネイマールかっての。未奈ちゃん。その子はいったい、何者……。ってもしかして」
圧倒されながら突っ込む俺だったが、途中で一つの可能性に思いが至り始める。
手を止めた未奈ちゃんは、俺たちに向き直った。既に笑顔は引っ込んでいる。
「ああ、私の妹の楓。自慢っぽくはなるけど、『超絶姉妹の妹のほう』よ。あんた、サッカーをやってて知らないの? バルサ女子の下部組織からも声がかかってるんだけど。悔しいけど、才能だけなら私より上かもね」
未奈ちゃんと約束をした日の全体練習後、俺は、沖原と佐々に、三対二のミニ・ゲームについて話した。俺の都合で巻き込んだにも拘わらず、二人とも、二つ返事で承諾した。テクニシャン、未奈ちゃんとのミニ・ゲーム、得る物は多いからね。
ミニ・ゲームの当日、新入生テストがあった。全教科を一日に詰め込んでいるため、午後四時過ぎまで掛かった。竜神高校の、進学校としての一面を垣間見た気がした。
テストの後の全体練習を終えた俺たちは、すぐに移動を始めた。既に自主練の始まっている女子Aの芝生のグラウンドの横を通り過ぎて、フットサル・コートの扉を開く。
コートは手前と奥に二面あり、周りは、四mほどの高さの柵と照明で囲まれている。既に日は没しているが、照明からの光は眩しく、コートの一帯だけ夜が切り抜かれているかのようだ。
手前のコートでは、赤地の上にメーカー名の入ったシンプルなシャツと白のショート・パンツをお召しの未奈ちゃんが、俺たちを詰まらなさそうに目で追っていた。左足一本でリフティングをしながら、である。
「へー、生意気をかましてくれんじゃないの。いっちょ前に、まさかの巌流島作戦? あんたたち、宮本武蔵にはなれやしないわよ。二度と立ち上がれないぐらいに、ズッタズタのぼろぼろのぼろ負けするんだからさー」
未奈ちゃんは、アラウンド・ザ・ワールドをしつつ、ロー・テンションの皮肉を飛ばしてくる。一応、時間には間に合ってるんだけどね。
隣では、FCバルセロナのユニフォーム姿の女の子がぴょんぴょんと両足ジャンプをしていた。肩ぐらいまでの黒髪を、ポニーテールに結っている。両の瞳はキラキラしていて、「あたし今日、テンションマックス!」って思念が漏れてくるようである。身体つきは華奢で、庇護欲をそそる感じだった。
うむ、誠心誠意、完全完璧なロリである。俺、ロリコンじゃあないけれど、アクティブ全開なJSってのはなかなか見ていて感慨深いものがあるよね。
「ちょっと待っててー。すぐに準備するからー」
やや早口で答えた俺は、柵の近くに鞄を置いてコートに入った。少し遅れて、沖原と佐々も続く。
十二組のCチーム三人組と、未奈ちゃん&ロリJSは、一つのフットサル・コートを四分割して作ったコートの中央に集まった。広さは、二十m×十mくらいで、ゴールの代わりにコーンが二つ置いてある。間を通ったら一点って寸法だ。
フットサル・ボールを左足で地面に抑えた未奈ちゃんが、ドライな面持ちで口を開く。
「試合は、五点先取の時間無制限。キーパーはなし。ボールが外に出た時は、基本的にはサッカーと同じだけど、タッチ・ラインを割った時はキック・インでいきましょ」
「時間無制限? JSもいるのに? 長く続けば続くほど、俺たちが有利になるけど、良いの?」
単純に疑問な俺は、即座に問うた。未奈ちゃんの口角がわずかに上がる。
「心配してくれてんだ? 優しいのねー。大丈夫よ。すぐに終わるから」
断言した未奈ちゃんの静かな迫力に、俺たちは何も言い返せない。
「そんじゃ賭けの条件を確認しましょーか。こっちが負けたら、私は、色呆け桔平とデートする」
想定外の呼称に、俺は、「お、おう。望むところだよ」と口籠もる。色呆け桔平か。なんとなく、名前として成立しちゃってる感があるね。
「私らが勝ったら……。何だっけ? ああ、色呆け桔平が、私の言うことを百個聞く、だったわね」
「……み、未奈ちゃん? 水増しはしないでね。一個だけだよ、一個だけ。百個って、どんだけ大盤振る舞いなドラゴンボールだよ」
未奈ちゃんは小声で軽く諌めた俺に、「そうだっけ?」と、きょとんって感じで首を傾げる。文字通り、桁違いの強かさである。
「んじゃ、とっとと終わらせちゃいましょうか。この初めから結末のわかっている予定調和感満載のミニ・ゲームをね。ほらほら、さっさと散りなさい」
未奈ちゃんのクールな毒舌を受けて、俺たちはダッシュで散らばった。ポジションは左から順に、沖原、俺、佐々である。
未奈ちゃんはコートの真ん中にボールを置き、隣のJSに、「カエデ、遠慮は要らないわよ。最初っから、全力で飛ばしていきなさい」と発破を掛けていた。きつめだが、どことなく愛を感じさせる喋り方である。
JSの名前はカエデか。なーんかどっかで聞いた覚えがあるけど、どこだったっけか。
未奈ちゃんがボールを出して、試合開始。
パスを受けたカエデちゃんは、右後ろに大きく助走を取った。え、何をしてんの?
「佐々、当たれ!」嫌な予感がして、俺は命じた。次の瞬間、カエデちゃんは右足でボールを蹴った。足の外側で、ボールの左を掠めるようなキック。
コートの時が止まった。全員の注目がボールに向く。
俺と佐々の間を抜けたボールは、ワン・バウンドするや否や、進行方向を急激に左に変えた。
ツー・バウンド、スリー・バウンド。ボールはどんどん右に曲がっていき、ゴールのコーン擦れ擦れを通過する。〇対一。〇対一?
「イエーイ! 先制点ゲーット♪ どーだ! あたしの必殺、天下無双のキックオフシュートは!」
楽し気な声に振り返ると、声の主、カエデちゃんが俺へと右手でピースしていた。自信満々って感じの満開の笑顔で、目が合うとぱちんとウインクまでしてきた。
未奈ちゃんは、カエデちゃんの頭を手でくしゃくしゃっとして、「ナイス・シュート。あんた、アウトも上手くなったわねー」心の底から嬉しそうな様子である。
「いやいやいやいや、何、今のキック。ネイマールかっての。未奈ちゃん。その子はいったい、何者……。ってもしかして」
圧倒されながら突っ込む俺だったが、途中で一つの可能性に思いが至り始める。
手を止めた未奈ちゃんは、俺たちに向き直った。既に笑顔は引っ込んでいる。
「ああ、私の妹の楓。自慢っぽくはなるけど、『超絶姉妹の妹のほう』よ。あんた、サッカーをやってて知らないの? バルサ女子の下部組織からも声がかかってるんだけど。悔しいけど、才能だけなら私より上かもね」
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