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第二章 負けられぬハンデ戦@賭けミニゲーム

10話

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 自主練後の佐々の、「止めとけって! 絶対、目ぇ、付けられっから!」との説得を受けた俺は、ネームTの『~』で囲まれた部分を手で洗って消した。水性ペンで書いてたから楽勝だったよ。君子たる者、人の忠告に耳を傾けるのも大切だからね。
 翌朝、俺は五時に起きた。二段ベッドの一段目で眠る皇樹を起こさないよう、二段目から床へと向かう梯子を、そろそろと降りる。
 二段ベッドと逆側の壁際には机が二つあり、筆記用具やスタンド・ライトが置かれている。部屋は狭くはないが広くもなく、ベッドと机の間は二m程度である。トイレや風呂は付いておらず、共用だった。
 黄色地に桜桃っぽいロゴの入ったセレソン(ブラジル代表)の練習着に着替えた俺は、部屋を後にした。玄関でトレーニング・シューズを履き替えて、ランニングを始める。
 爽やかな朝の空気が流れる住宅街をゆっくりと走り、身体を目覚めさせる。中学の時から、毎日、続けている習慣である。
 五キロほど走った俺は、部屋に戻って練習の準備をして食堂に向かった。中には既に一年生のサッカー部員がいたから、喋りながら一緒に朝食を取った。
 食べ終えた俺たちはすぐに部室に向かった。昨日一年生で話し合い、七時半に来て、ボール磨きと空気入れをする約束をしていた。
 七時二十五分に、部室に入った。五m四方くらいの部室には、ボールが入った籠、スプレーなどを置いた棚、ホワイト・ボード、ライン・カーがある。
 全体的に実用性が重視されており、天井の蛍光灯や白を基調としたデザインが、部室の与える無機質な印象の一役を買っている。
 着替えを済ませて、三十人ほどの一年生とともにボール磨きを始めた。使い古しのサッカー・ソックスに水を付けて、力を入れてボールの表面を拭いていく。五十嵐さんからボールはぴかぴかにするよう命じられていた。
 ボールの空気入れは中学で経験があり、やり方はわかっている。だけど、ボール磨き初めてなんだよね。道具は大切にすべきだけど、表面を綺麗にする意味はあるのかねぇ。
 ボールの手入れは八時過ぎに終わり、俺は佐々とパスの練習を始めた。
 佐々からのボールを止めた俺は、すぐに蹴り返そうとするが、「おい! 何だよ、これ!」
 怒鳴り声が聞こえて動きを止める。
 声のした方向を見ると、グラウンドの端のボール籠の近くで、釜本さんが両手でボールを持っていた。おっかないヤンキー面は、怒りに歪んでいる。
「アホの一年坊よ! お前ら、舐めてんのか! こんなもん、磨いた内に入るか!」
 背筋が寒くなる。先輩。いくらなんでも口が汚すぎじゃないっすか?
「今からやり直せ!」
「「はい!」」
 一年生はダッシュでボール籠に向かい、部室でボール磨きを再開した。
 九時ちょうどにコーチの集合の声が掛かり、一年生たちはボールを持って、部室から飛び出していった。
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