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第二章 境界の砦
22 突然、愕然
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《突然、愕然》
アーヤはぴくりと目を覚ました。静かな倉庫に、遠くで何か騒がしい音が聞こえて来たのだ。
身を起こすと、ウサ耳の子もネコ耳の子もイヌ耳の子も起き上がって、ピクピク耳を動かしていた。
扉が開かれる音と一緒に、駆けてくる足音がする。
バタンっとアーヤたちがいる部屋の扉が開いた。血相を変えた男たちが走り込んで来る。
ガチャガチャと忙し気に檻の扉を開き、男たちが入ってきた。男たちは真っ直ぐ毛布の場所にいるウサ耳たちの方へ踏み込んでいく。
檻の格子のすぐ傍に小さくなっているアーヤには気づいていないらしい。男たちの剣幕に怯えたアーヤはますます小さく身を縮めた。
「大人しくしろ! 声を立てるなよ!」
ウサ耳たちを一人ずつ捕まえて、抱え込もうとする。
「いや! 怖い!」
ウサ耳もネコ耳も怯えて泣き出した。
「面倒だ。気絶させて袋に入れろ。証拠を消せ!」
男の一人が焦った声で叫ぶ。
「やー! きゃー! ママ―!」
隣の檻でも女の子が泣き叫んでいた。ドガっという鈍い音にアーヤが振り向くと、イヌ耳の子が足で蹴られて吹っ飛ばされていた。女の子の声も消えている。
アーヤの耳がピクピク震えた。握った拳に力がじわじわ籠められる。しゅんと丸まっていた尻尾がぶわっと膨れた。
気絶したイヌ耳の子を乱暴に掴もうとした男の手に、アーヤは飛びついた。飛びつきながら、猫に変化していく。
「いでえ!」
男の手に噛みついて犬の子を取り返すと、その子の前に四つ足で踏ん張って威嚇した。
「ふぎゃー!」
「なんだ? こいつは? こんなチビで獣化したのか?」
「なんて毛皮だ。継ぎはぎみてえだ」
「そんなのにかまうな。時間がないんだ。早く子供を片付けろ!」
男がイヌ耳の子に再度手を伸ばすと、アーヤはその手を鋭い爪で引っ掻いた。
「いちち! 邪魔なネコだ」
奥の方でもウサ耳たちが泣きながら暴れている騒ぎが聞こえる。
「こらっ! 大人しくしろ!」
「やだやだ! あっち行け!」
「なにやってるんだ!」
扉の所から、どすの利いた怒りの声が響く。青い髪のカロロンが灰色の目で冷ややかに男たちの醜態を睨みつけた。
「カロロンさん! こいつら、なかなか大人しくしないんで」
「殴って気絶させればいいだろ!」
怒鳴りながら、だんだんだんと足音高く檻へと近づき中へと入る。イヌ耳の子を庇うように毛を逆立てて頑張っているアーヤの前に来た。
アーヤは瞬間、怯えて尻尾の毛をぶわっとさらに膨らませる。カロロンの足が無造作にアーヤの腹を蹴飛ばした。
「ぎゃん!」
アーヤは暗闇に飲まれ、何もわからなくなった。
アーヤはぴくりと目を覚ました。静かな倉庫に、遠くで何か騒がしい音が聞こえて来たのだ。
身を起こすと、ウサ耳の子もネコ耳の子もイヌ耳の子も起き上がって、ピクピク耳を動かしていた。
扉が開かれる音と一緒に、駆けてくる足音がする。
バタンっとアーヤたちがいる部屋の扉が開いた。血相を変えた男たちが走り込んで来る。
ガチャガチャと忙し気に檻の扉を開き、男たちが入ってきた。男たちは真っ直ぐ毛布の場所にいるウサ耳たちの方へ踏み込んでいく。
檻の格子のすぐ傍に小さくなっているアーヤには気づいていないらしい。男たちの剣幕に怯えたアーヤはますます小さく身を縮めた。
「大人しくしろ! 声を立てるなよ!」
ウサ耳たちを一人ずつ捕まえて、抱え込もうとする。
「いや! 怖い!」
ウサ耳もネコ耳も怯えて泣き出した。
「面倒だ。気絶させて袋に入れろ。証拠を消せ!」
男の一人が焦った声で叫ぶ。
「やー! きゃー! ママ―!」
隣の檻でも女の子が泣き叫んでいた。ドガっという鈍い音にアーヤが振り向くと、イヌ耳の子が足で蹴られて吹っ飛ばされていた。女の子の声も消えている。
アーヤの耳がピクピク震えた。握った拳に力がじわじわ籠められる。しゅんと丸まっていた尻尾がぶわっと膨れた。
気絶したイヌ耳の子を乱暴に掴もうとした男の手に、アーヤは飛びついた。飛びつきながら、猫に変化していく。
「いでえ!」
男の手に噛みついて犬の子を取り返すと、その子の前に四つ足で踏ん張って威嚇した。
「ふぎゃー!」
「なんだ? こいつは? こんなチビで獣化したのか?」
「なんて毛皮だ。継ぎはぎみてえだ」
「そんなのにかまうな。時間がないんだ。早く子供を片付けろ!」
男がイヌ耳の子に再度手を伸ばすと、アーヤはその手を鋭い爪で引っ掻いた。
「いちち! 邪魔なネコだ」
奥の方でもウサ耳たちが泣きながら暴れている騒ぎが聞こえる。
「こらっ! 大人しくしろ!」
「やだやだ! あっち行け!」
「なにやってるんだ!」
扉の所から、どすの利いた怒りの声が響く。青い髪のカロロンが灰色の目で冷ややかに男たちの醜態を睨みつけた。
「カロロンさん! こいつら、なかなか大人しくしないんで」
「殴って気絶させればいいだろ!」
怒鳴りながら、だんだんだんと足音高く檻へと近づき中へと入る。イヌ耳の子を庇うように毛を逆立てて頑張っているアーヤの前に来た。
アーヤは瞬間、怯えて尻尾の毛をぶわっとさらに膨らませる。カロロンの足が無造作にアーヤの腹を蹴飛ばした。
「ぎゃん!」
アーヤは暗闇に飲まれ、何もわからなくなった。
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