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第二章 続編 セネルス国の騒動
19 王権復興派のアジト
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《ロワクレス視点》
シュン言うところのふわふわと宇宙遊泳していたローファートがさすがに正気に戻って門衛と応対したので、すんなりとネルビアへ入ることができた。
御者をしていたサイリスがハンターとしてネルビアのギルドに登録し、多くの依頼をこなして信頼を得ていたことも大きい。
セネルスは不穏な隣国として常に警戒対象ではあったが、配下の者を長期間深く潜入させていたグレバリオ閣下の慧眼はさすがである。
首都らしく頑丈な石壁に囲まれた都市は、さらに貴族や神殿中に囲った中壁があった。そのさらに奥にかつての王族の住まいである城を守る城壁が聳える。今は引き続き、現権力者らの執政の中枢機関となっていた。
政権を揮うセネルスの政府は市民とは厳重に隔絶された場所となっていた。ここがテスニア王国とは大きく異なるところである。
王都テストニアの王城の城門は衛兵に厳しく守られてはいるが、壁で閉ざされているわけではなかった。西翼軍部の広大な訓練場の果てはそのままテストニアの郊外へと延びているし、東翼側にある大きな庭園は国民にも開放されていた。
人々は園の衛兵に検閲を受けるが、害意を持たなければ庭園から奥の神殿への拝謁も許されている。その先の魔術師の協会施設や塔も一般道路から自由に出入り可能である。薄気味悪がられて都民が寄り付かないのは、また別の問題であった。
テストニアの王宮は広く開放されている。その分、王宮警備専門の第一騎士隊や近衛騎士隊の責任は重く、優れた人材が揃っていた。テスニア王国の誇りは閉ざされた守りではなく、優れた軍武の雄にあるのだ。
外壁に囲まれた都は商店や民家が軒を連ね、アムザスよりもはるかに大きい。だが、賑わいはなく、殺伐とした雰囲気があった。通りを闊歩する姿に軍服を着用した兵士らが多いせいだろうか。町人は兵士の姿を見ると怯えるように避けていく。アムザスにはあった笑顔がここでは見られなかった。
サイリスはギルドに隣接している宿へ馬車を入れた。宿は外壁内に何軒もあるが、ギルドの宿泊施設はギルドに登録されている者しか利用できない。ギルドハンター専用の設備で、安価であり安全性も高かった。
もう一つの利点は、ギルドとその関連施設は国の権力機構の管轄外となっていることだった。ギルドはセネルスのみならず、テスニア王国にもボラード国にもヤーディング国にも、全世界の各国に存在し、独自のネットワークを持つ機関なのだ。
ハンターの登録情報や依頼情報などは全世界の各ギルドで共有される。代わりに各国家権力から一線を引いて独立性を保つのである。その国にギルドがある以上、若干の国家権力の影響は受けるが、基本、ギルドは国政の影響を受けない代わりに、関知もしないという不可侵の約束が暗黙の裡に交わされていた。
軍事的弾圧と締め付けが厳しいネルビアにおいて、ギルド宿は最も安全に保護される場所に相違ない。
宿に落ち着くと、ローファートはオルの袋を担いでそわそわと教会へ出かけていった。
あんまり有頂天な状態に、シュンが一度何があったのかと聞いたことがあった。途端、立て板に水、怒涛の勢いで遺跡がどうの、断片がどうのと始まり、シュンも目を丸くしたまま口も挟めなくなった。あまりにうるさいので、二度と喋るな! その口を塞いでいろ! と私は思わず怒鳴りつけてしまった。
その剣幕が強すぎたのかローファートは真っ青になってピタッと鎮まったが、その後、一人でぼうっとしたり笑ったり、首を横に降ったり、頷いたりとひどく不気味だった。その様子を見て、シュンが若干引きながら、
「宇宙で真空酔いした患者みたい。一瞬だけふいに宇宙空間に直にさらされた場合、脳や肺の酸素などのガスが膨張して空域ができてしまい、船内に戻った後、そこへ酸素が過剰に供給されたりして一時錯乱し、幻覚とか見るんだ。時間が経つと落ち着くけどね。それでも、脳が破壊されてしまう場合もあるので、保護なしに出る時は息を全部吐き出して出るんだよ」
と、よく理解できない解説をしていた。
たぶん、今のローファートは本来すべき商売の事はすっかり忘れているだろう。
サイリスはブルナグムを連れてギルドへ向かい、その足で方々に散らばっているグレバリオの配下と連絡を取りに行った。
そして私は、シュンと共にダンカンが案内する酒場へと入った。メイン通りから外れたそこは、酒場と同時に食堂としてもやっているようで、昼飯を食べに来ている客でそこそこ賑わっていた。庶民的な店らしく街人や子供の姿もあり、旅に汚れくたびれたマントやローブを着た我々に、おかみさんが陽気な声を掛けてきた。
「いらっしゃーい!」
振りむいた彼女は私の腕の中にいるシュンを見て、人の良さそうな丸い顔を曇らせた。
「あらあら、具合悪そうね? 疲れたのかしら? 大丈夫? 部屋を用意するからそこで休んでらっしゃい」
「いや、そ……」
私が断ろうとすると、ダンカンが手で制した。それで、私は黙って彼女の言うままに酒場の入り口奥にある階段を上って上に行く。細い廊下沿いに部屋が数個並び、簡易宿泊もできるようだった。
おかみさんはそこで階下に降りていき、ダンカンが廊下の突き当りにある手洗い場入り口を開けた。手洗い場の奥にまたドアがあり、扉を開くと下へ降りる狭い階段が現れた。
ダンカンが先に降りて行き、私もそれに続く。人一人やっと通れるほどの狭さで、やむなくシュンも腕から下りて行く。階段は長く、おそらく地下まで続いているのだろう。
穴倉のような暗い底に着いて、ダンカンが不規則なノックをした。それが合図なのだろう。中から扉が開かれ、暗闇の中に燭の橙色の明かりが伸びた。
部屋はそれほど広くない空間で長い机の周りに木の椅子があり、奥にはクッションの乗った長椅子もある。中にいた男が三人、鋭い視線を向けてきた。殺気を感じてシュンを背に庇い、剣に手が伸びる。
ダンカンが三人に手を上げて笑って見せた。男たちの殺気が消え、代わりに無遠慮な視線が値踏みするように絡んでくる。
私が条件反射的にシュンを抱き上げると、男たちの緊張ががくっと消える。ダンカンが片手で顔を覆って肩を落としていた。
「何だ? 親子か? 兄弟か? 過保護な兄さんだな」
「ダンカン、なんだ? この変な奴は?」
「ただ者じゃなさそうな鋭い覇気だったのに、なぜか残念系?」
ダンカンが疲れた顔でまあ座れとみんなに促し、テーブルを囲む椅子に座る。距離をとって向こう側に三人。間にダンカン。私は当然シュンを膝抱っこだ。
シュンを抱く腕に力を込めながら、連中の顔を無言で睨み続ける。三人の顔色が悪くなる。
「ロワクレス殿、睨むのを止めてください。怖いですから。こちらの三人は俺たちの同志で、王権復興派です」
ダンカンが紹介する。三人が驚きの声を上げた。
「ロワクレス? まさか、テスニアの?」
「氷鉄の騎士?」
私は頷く。セネルスにまで名が知れているとは思わなかった。
「ロワ、有名人なんだ」
ぽそっとシュンが腕の中で呟いた。
「ふん、どうせろくでもない噂だろう。セネルスにとって、私は敵だからな」
セネルスの男たちが私をちらちら見ながら、ぼそぼそと囁き合っている。
「本物を始めて見た。噂通りの美形だな」
「テスニア随一の騎士」
「魔力も大陸一だとか聞いたぞ」
「触れれば即殺の最強の騎士だ」
「ダンカン、なぜ、彼が? どうやって知り合ったんだ?」
「俺、憧れてたんだ。あ、握手してもらえるかな?」
「あの子供は誰だ? なんで抱っこしてるんだ?」
「彼をここへ案内したってことは、あれか? ひょっとして?」
「そしたら、千人力だぞ。心強い!」
「何かいろいろ言われてるみたいだよ? ロワ」
「…………」
私は咳払いすると、ダンカンに促した。
「話を進めてもらえまいか? 現状を詳しく知らなければ、今後の策が立てられない」
「はい! 申し訳ない!」
ダンカンが弾かれたように飛び上がった。
「あらためまして、こちらがテスニア王国の騎士隊隊長のロワクレス・セナ・ザフォード殿と補佐のシュン・カスガ君です。で、こちらが……」
「メルバセルです!」
「ハロライドです!」
「オバクルです!」
三人がさっと立上がって、胸に手を当て騎士の礼をしてきた。目がきらきらと輝いて見えるのはきっと燭の灯りのせいだろう。
「あ、ああ、ロワクレスだ。宜しく頼む」
「ハイ!」
いいのか? 王権復興派。こんなんで、大丈夫なのか?
シュン言うところのふわふわと宇宙遊泳していたローファートがさすがに正気に戻って門衛と応対したので、すんなりとネルビアへ入ることができた。
御者をしていたサイリスがハンターとしてネルビアのギルドに登録し、多くの依頼をこなして信頼を得ていたことも大きい。
セネルスは不穏な隣国として常に警戒対象ではあったが、配下の者を長期間深く潜入させていたグレバリオ閣下の慧眼はさすがである。
首都らしく頑丈な石壁に囲まれた都市は、さらに貴族や神殿中に囲った中壁があった。そのさらに奥にかつての王族の住まいである城を守る城壁が聳える。今は引き続き、現権力者らの執政の中枢機関となっていた。
政権を揮うセネルスの政府は市民とは厳重に隔絶された場所となっていた。ここがテスニア王国とは大きく異なるところである。
王都テストニアの王城の城門は衛兵に厳しく守られてはいるが、壁で閉ざされているわけではなかった。西翼軍部の広大な訓練場の果てはそのままテストニアの郊外へと延びているし、東翼側にある大きな庭園は国民にも開放されていた。
人々は園の衛兵に検閲を受けるが、害意を持たなければ庭園から奥の神殿への拝謁も許されている。その先の魔術師の協会施設や塔も一般道路から自由に出入り可能である。薄気味悪がられて都民が寄り付かないのは、また別の問題であった。
テストニアの王宮は広く開放されている。その分、王宮警備専門の第一騎士隊や近衛騎士隊の責任は重く、優れた人材が揃っていた。テスニア王国の誇りは閉ざされた守りではなく、優れた軍武の雄にあるのだ。
外壁に囲まれた都は商店や民家が軒を連ね、アムザスよりもはるかに大きい。だが、賑わいはなく、殺伐とした雰囲気があった。通りを闊歩する姿に軍服を着用した兵士らが多いせいだろうか。町人は兵士の姿を見ると怯えるように避けていく。アムザスにはあった笑顔がここでは見られなかった。
サイリスはギルドに隣接している宿へ馬車を入れた。宿は外壁内に何軒もあるが、ギルドの宿泊施設はギルドに登録されている者しか利用できない。ギルドハンター専用の設備で、安価であり安全性も高かった。
もう一つの利点は、ギルドとその関連施設は国の権力機構の管轄外となっていることだった。ギルドはセネルスのみならず、テスニア王国にもボラード国にもヤーディング国にも、全世界の各国に存在し、独自のネットワークを持つ機関なのだ。
ハンターの登録情報や依頼情報などは全世界の各ギルドで共有される。代わりに各国家権力から一線を引いて独立性を保つのである。その国にギルドがある以上、若干の国家権力の影響は受けるが、基本、ギルドは国政の影響を受けない代わりに、関知もしないという不可侵の約束が暗黙の裡に交わされていた。
軍事的弾圧と締め付けが厳しいネルビアにおいて、ギルド宿は最も安全に保護される場所に相違ない。
宿に落ち着くと、ローファートはオルの袋を担いでそわそわと教会へ出かけていった。
あんまり有頂天な状態に、シュンが一度何があったのかと聞いたことがあった。途端、立て板に水、怒涛の勢いで遺跡がどうの、断片がどうのと始まり、シュンも目を丸くしたまま口も挟めなくなった。あまりにうるさいので、二度と喋るな! その口を塞いでいろ! と私は思わず怒鳴りつけてしまった。
その剣幕が強すぎたのかローファートは真っ青になってピタッと鎮まったが、その後、一人でぼうっとしたり笑ったり、首を横に降ったり、頷いたりとひどく不気味だった。その様子を見て、シュンが若干引きながら、
「宇宙で真空酔いした患者みたい。一瞬だけふいに宇宙空間に直にさらされた場合、脳や肺の酸素などのガスが膨張して空域ができてしまい、船内に戻った後、そこへ酸素が過剰に供給されたりして一時錯乱し、幻覚とか見るんだ。時間が経つと落ち着くけどね。それでも、脳が破壊されてしまう場合もあるので、保護なしに出る時は息を全部吐き出して出るんだよ」
と、よく理解できない解説をしていた。
たぶん、今のローファートは本来すべき商売の事はすっかり忘れているだろう。
サイリスはブルナグムを連れてギルドへ向かい、その足で方々に散らばっているグレバリオの配下と連絡を取りに行った。
そして私は、シュンと共にダンカンが案内する酒場へと入った。メイン通りから外れたそこは、酒場と同時に食堂としてもやっているようで、昼飯を食べに来ている客でそこそこ賑わっていた。庶民的な店らしく街人や子供の姿もあり、旅に汚れくたびれたマントやローブを着た我々に、おかみさんが陽気な声を掛けてきた。
「いらっしゃーい!」
振りむいた彼女は私の腕の中にいるシュンを見て、人の良さそうな丸い顔を曇らせた。
「あらあら、具合悪そうね? 疲れたのかしら? 大丈夫? 部屋を用意するからそこで休んでらっしゃい」
「いや、そ……」
私が断ろうとすると、ダンカンが手で制した。それで、私は黙って彼女の言うままに酒場の入り口奥にある階段を上って上に行く。細い廊下沿いに部屋が数個並び、簡易宿泊もできるようだった。
おかみさんはそこで階下に降りていき、ダンカンが廊下の突き当りにある手洗い場入り口を開けた。手洗い場の奥にまたドアがあり、扉を開くと下へ降りる狭い階段が現れた。
ダンカンが先に降りて行き、私もそれに続く。人一人やっと通れるほどの狭さで、やむなくシュンも腕から下りて行く。階段は長く、おそらく地下まで続いているのだろう。
穴倉のような暗い底に着いて、ダンカンが不規則なノックをした。それが合図なのだろう。中から扉が開かれ、暗闇の中に燭の橙色の明かりが伸びた。
部屋はそれほど広くない空間で長い机の周りに木の椅子があり、奥にはクッションの乗った長椅子もある。中にいた男が三人、鋭い視線を向けてきた。殺気を感じてシュンを背に庇い、剣に手が伸びる。
ダンカンが三人に手を上げて笑って見せた。男たちの殺気が消え、代わりに無遠慮な視線が値踏みするように絡んでくる。
私が条件反射的にシュンを抱き上げると、男たちの緊張ががくっと消える。ダンカンが片手で顔を覆って肩を落としていた。
「何だ? 親子か? 兄弟か? 過保護な兄さんだな」
「ダンカン、なんだ? この変な奴は?」
「ただ者じゃなさそうな鋭い覇気だったのに、なぜか残念系?」
ダンカンが疲れた顔でまあ座れとみんなに促し、テーブルを囲む椅子に座る。距離をとって向こう側に三人。間にダンカン。私は当然シュンを膝抱っこだ。
シュンを抱く腕に力を込めながら、連中の顔を無言で睨み続ける。三人の顔色が悪くなる。
「ロワクレス殿、睨むのを止めてください。怖いですから。こちらの三人は俺たちの同志で、王権復興派です」
ダンカンが紹介する。三人が驚きの声を上げた。
「ロワクレス? まさか、テスニアの?」
「氷鉄の騎士?」
私は頷く。セネルスにまで名が知れているとは思わなかった。
「ロワ、有名人なんだ」
ぽそっとシュンが腕の中で呟いた。
「ふん、どうせろくでもない噂だろう。セネルスにとって、私は敵だからな」
セネルスの男たちが私をちらちら見ながら、ぼそぼそと囁き合っている。
「本物を始めて見た。噂通りの美形だな」
「テスニア随一の騎士」
「魔力も大陸一だとか聞いたぞ」
「触れれば即殺の最強の騎士だ」
「ダンカン、なぜ、彼が? どうやって知り合ったんだ?」
「俺、憧れてたんだ。あ、握手してもらえるかな?」
「あの子供は誰だ? なんで抱っこしてるんだ?」
「彼をここへ案内したってことは、あれか? ひょっとして?」
「そしたら、千人力だぞ。心強い!」
「何かいろいろ言われてるみたいだよ? ロワ」
「…………」
私は咳払いすると、ダンカンに促した。
「話を進めてもらえまいか? 現状を詳しく知らなければ、今後の策が立てられない」
「はい! 申し訳ない!」
ダンカンが弾かれたように飛び上がった。
「あらためまして、こちらがテスニア王国の騎士隊隊長のロワクレス・セナ・ザフォード殿と補佐のシュン・カスガ君です。で、こちらが……」
「メルバセルです!」
「ハロライドです!」
「オバクルです!」
三人がさっと立上がって、胸に手を当て騎士の礼をしてきた。目がきらきらと輝いて見えるのはきっと燭の灯りのせいだろう。
「あ、ああ、ロワクレスだ。宜しく頼む」
「ハイ!」
いいのか? 王権復興派。こんなんで、大丈夫なのか?
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