魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-12:状況整理

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 当時の映像を見終えたメンバーは菫の手際の良い医療行為だけではなく物の見方や考え方が達観していると思い呆気にとられていた。
 同じ医療に携わる綾菜や歩果はもちろん、捜査を専門としている時光たちから見ても菫の凄さを思い知らされた。
「ご覧の通り高等部の時代から既に頭角とうかくを現していたので馬堂総監が選抜したことも納得出来るのではないかと考えられます」
 良歌がそう解説すると舞香が質問する。
「話を少し戻しますが、東雲さんの実習に対しての評価はどうですか?」
「今でもそうだけど医療の評価はランク付けで、菫ちゃんの評価は文句なしのSSSトリプルエスランクよ」
 舞香の問いに絵実が少し誇らしげに言ってみせる。
 文章で細々と評価というよりはランクをつけたその後に絵実が受けた印象や改善点を生徒に通知する形をとっている。
 評価の高い方からSSSトリプルエスSSダブルエスSシングルエスAAAトリプルエーAAダブルエーAシングルエーBBBトリプルビーBBダブルビーBシングルビーCCCトリプルシーCCダブルシーCシングルシーという評価である。
「ちなみに綾菜ちゃんと歩果ちゃんの当時の評価はSSと菫ちゃんには届かなかったものの、また違ったアプローチがあって見事だったよ」
 絵実がそう言うと2人は少し気恥ずかしそうにするもののペコッと頭を下げる。
 言うなれば菫が単独で瞬時に判断して自分一人の力では無理だと思ったら周囲に任せて可能な限り一人で尽くすシングルスプレイヤーに対して、綾菜と歩果は連携して互いの特性を知り衝突しないように確実に治療をこなすダブルスプレイヤーである。
「高校当時の情報とはいえ東雲さんの動きがどういうものなのか、それはわかりました。そこでお伺いしたいのですが東雲さんの弱点もしくは苦手なものについて先生はご存じですか?」
 恵の質問に考えてみるが申し訳なさそうに答える。
「それについてだけど心当たりなくて…。それというのもあまりその類の話をしたことがないから。お役に立てなくてごめんなさい」
「いえ大丈夫ですよ」
 ここまで話し合ってきたことを良歌がまとめる。
「さてこれまで森園先生からお話されてきたことを始め東雲さんのことについて見てきたわけですが、まだまだ不確定要素が皆さんの中にそれぞれあるかもしれません。ですが悠長にしている間にも事態が酷くなることは充分に考えられます。口で言うにはあまりにも簡単ですが、酷くなる前に今回、東雲さんの企てている計画を皆さんの手で阻止していただければと思っています」
 良歌がそう言い切ったところで絵実が補足する。
「先ほど、恵ちゃんから質問された菫ちゃんの弱点や苦手なものではありませんが、得意としているものに関して言うならば医療器具を連携して使いこなすこと。これに気をつけてもらえればと思っています」
 身の安全を考え絵実はメンバーに伝える。
 ここで今一度、念を押して時光が良歌に確認をとる。
「では明日も今日みたいな要領で街中を巡回して注意レベル以上の人がいれば説得する流れでしょうか?」
「ええ、ただ万が一のため今日よりも注意レベルが多く観測されるようであれば森園君たちは来たる危険に備えてそちらに警戒するように集中していただければ助かります」
「わかりました。ではそうさせていただきます」
 良歌の示す人物のことを察して返答する。
 絵実に呼び出されたとはいえ時間もかなり押していたところで良歌が絵実にお礼を述べる。
「本日は情報提供だけではなく、貴重なお時間を割いてお話いただきありがとうございました。お話いただかなければ今よりも苦しんでいたことは間違いありません。時間がかかるかもしれませんが東雲さんを捕獲するまで搬送される方の治療をお願いします」
 良歌の言葉に対して絵実は少し恐れ多く答える。
「いえいえ、本来であれば私の指導が行き届いていればこうならなかったはずが村富警視監にまで煩わせてしまったことは事実です。私の方こそ、菫ちゃんの企てている計画の阻止をお願いします」
 互いの言葉を尊重して握手をした後に良歌はメンバーに伝える。
「今日は本当にお疲れ様でした。明日も引き続き捜査していただくので、ゆっくり休んでください。私個人はまだ片付けておかないといけない案件がありますのでこれで」
 頭を下げ足早にその場を後にした。
「それじゃあ俺たちもお開きとしますか」
「そうですね。色々あり過ぎて結構応えました」
「私も。そろそろ休みたいと思っていたところだよ」
 時光の言葉に恵と舞香がそれぞれ口にする。
「ちょっと皆だらしないよ」
 真奈が苦言を呈すると、
「えいっ」
「やあっ」
「ひゃう!」
 綾菜と歩果が真奈の肩や腕などのツボを押して姿勢を崩す。
 その際に真奈から可愛らしい声が上がる。
「ちょっと貴女たち何するの⁉」
 すぐさま立ち上がって綾菜と歩果に睨みつける。
「そういう真奈ちゃんも疲労が溜まっている証拠だよ。帰ってゆっくり休もうね」
「真奈さん、そういうわけですから力を抜いてゆっくりとね」
 すかさず真奈の耳元で囁く。
 普通に言っているのだろうけどこの2人の場合だと無駄に卑猥に聞こえてくる。
「このままじゃ本当にゆっくり出来ないから皆行こうか」
 時光がメンバーを誘導して会議室から後にする際に先ほどよりも落ち着いたものの今も席に座っている志穂と美穂に目を向け、絵実に合図を送るように頷いてみせる。
 絵実もまたその意図を汲み取って頷き、時光たちが会議室を出て行った後に2人のもとに行く。
「志穂ちゃん、美穂ちゃん、良かったら今から私の診察室まで来てくれるかな?を渡したいんだ」
「「は、はい…。とっておきの物って?」」
「来てみればわかるわ。ついてきて」
 戸惑う2人の様子に微笑みかけ診察室に誘導する絵実であった。
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