魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第1章 始まりの壁

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「まさかこんな形で現れるとは」
「想定外が発生するとは思っていましたが、ここまでとは…」
 鉄茂と良歌が少し追い詰められたような口調で話す。
 警視総監室からJSIA本部の会議室に行こうかとする時に時光に送られてきたものと同じ映像とメッセージが送られてきた。
 早朝に組織犯罪対策部の長である里実を呼び、捜査に取りかかろうと予定していたことが一気に悪い方向にひっくり返された。
 若弥の身体の状況を見て急いで救助した方が良いとのことで真奈からメッセージも送られてきた。
「送られてきた映像のビルやその周辺と権藤さん自身がいるか確認します」
「お願いします」
 里実がそう言うと良歌が即座に返答する。
 修助の持つ索敵とは異なる性能で範囲を確定して捜査することが可能である。
 それと折り合わせて里実の持つ能力として、一度見たものや人を記憶していればそこから追跡して場所を特定することも可能である。
 鉄茂のタブレットに手を翳して、そのビルの周辺の索敵を行うこと数分後、里実は複雑な顔をして口を開く。
「これはまた大変なことになっていますね」
「どういう状況なのかを詳しく説明を」
「はい」
 良歌が説明を促すと、里実はタブレットに表示されてある現場やその周辺エリアを立体的に映し出し説明を始める。
「権藤さんから送られてきたメッセージ通り、小堂さんはこのビルにいることは間違いありません。それに権藤さんも現場付近に身を隠していますが、ハッキリとした場所は不明です」
「それは本当か⁉」
「はい」
 前のめりになって尋ねる鉄茂に頷く里実が更に説明を続ける。
「ただこのビルですが、見えない壁のようなものが展開されて、ビル内に入ってしまいますと連絡や索敵が遮断されているように施されています」
「なかなかに手が込んでいますね」
 どうしようか迷った口調で良歌がそう口にする。
「この状況を打破するとなるとやはり…」
「乱暴なやり方だが魔法を展開した本人を倒すしかない」
 里実が言いづらそうに、その意図を汲み取って鉄茂が苦い顔をして即断する。
「警視庁でも援護しますか?」
 良歌の言葉に頷き鉄茂が指示を出す。
「そうだな。内密に捜査官少数で動いてもらい、ビル周辺で目立たないところで待機。何が起きても対応出来るように準備を頼む」
「わかりました。では早速捜査官に要請しますので失礼します」
 良歌は頭を下げ総監室を後にした。
「私は引き続きビル周辺に不審人物がビルに入らないように監視を続けます」
「そちらも全力で頼む」
 里実はそう言って総監室に残り警戒を持続させる。
 警視庁でも被害を最小限に抑えるため行動に移す。
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