魔法犯罪の真実

水山 蓮司

文字の大きさ
上 下
6 / 56
第1章 始まりの壁

1-05:追求!犯行の源

しおりを挟む
(思っているよりも厄介だな…。さてどうするか…)
 2人の男と戦闘すること数十分、力を抑えて可能な限り怯ませる程度に攻撃をくらわせたいと思っている舞香は、なかなか思うように攻撃が当てられず困っている状況にあり、男たちも容赦なく攻撃を仕掛けている。
曲転鎖きょくてんさ!」
飛泥弾ひでいだん!」
 曲がりくねる鎖とやや硬めの泥の弾が舞香に向かって飛んで来る。
雷輪守らいりんしゅ!」
 サークル状の大きな魔法陣を展開させ、飛んで来る攻撃を受け止め粉々に砕く。
「やっぱりあれが面倒だな…」
「どうにかしたいものだな…」
 男たちもやられないように必死に対抗する。
「ならばこれならどう!速雷千そくらいせんさん!」
 槍の矛先から強力な雷をV字に男たちに飛ばす。
剛泥壁ごうでいへき!」
 間一髪のところでポッチャリした男が泥の壁を展開させギリギリ防ぐ。
「悪い、助かった」
「それはいい、集中しないとやられるぞ」
 気を引き締め直し男たちが構える。
「ギリギリとはいえ防がれたか…。それじゃあ、速雷千そくらいせんらん!」
 今度は扇形おうぎがたの軌道で先ほどよりも強い雷を放つ。
 ポッチャリした男は更に力を込めて、勢いを殺し防ぎ切った。
 その際に泥の壁は崩壊した。
「はあ…はあ…。何とかなったけどこのまま続けばジリ貧だ」
「そうだな…」
 ポッチャリした男が息を切らしながら言うことに不健康そうな男が同意する。
(今のは少しやり過ぎたか…。普段から力のコントロールの練習をしておくべきだったかな)
 内心そう苦虫を噛みしめる。
 とはいえ必死だったことは否めなく、それも含めて今後の反省として考えるようにした。
「これだけは使いたくなかったが、そう言っている場合ではないな」
「まったくだ」
 男たちはポケットから赤いカプセルを取り出してそれを噛み砕く。その瞬間、
「「はあああー!」」
「なっ!」
 男たちの全身に血のような真っ赤なオーラがまとわりつく。
 一瞬気を取られた舞香だが気を取り直して強い口調で男たちに訴える。
「一体自分たちが何を服用したのかわかっているのか!」
「充分承知の上でやっているさ!」
「さあ続けるぞ!」
「っ!」
 男たちが服用したのは「筋力増強薬きんりょくぞうきょうやく」で一定時間、通常の力よりも5~10倍の力を引き出す効果を持つ薬である。
 ただし時間が切れると全身に激痛が走り、一週間ほど動けなくなり入院する可能性があると言われている。
 最悪の場合、死に至ることもあり危険な薬とみなされ違法薬にカテゴリーされている。
 互いに構え直し牽制し合うが、先に仕掛けてきたのは男たちからである。
曲転鎖きょくてんさ!」
飛泥弾ひでいだん!」
 先ほどと同じ攻撃だが速度と威力も明らかに上がっている。それでも舞香は、
雷輪守らいりんしゅ!」
 必死にその勢いを殺そうと魔法陣を展開させ、辛うじて防ぎ切るが、
双回鎖そうかいさ!」
直針泥ちょくしんでい!」
 男たちは舞香の左右に回り込み攻撃を仕掛ける。
 左からトルネードの軌道で複数の鎖が飛んで来て、右からは鋭く細長い針の形をした泥が数十から数百本飛んで来る。
(しまった!)
 驚愕きょうがくの表情になり、もろにくらってしまうと目をつぶって覚悟したその時、
炎進舞えんしんぶ!」
「「昇風拳しょうふうけん!」」
 竜巻のような炎が鎖を相殺そうさいさせ、ドリル回転の軌道の風が泥の針をバラバラに刻んだ。
 技が飛んで来た方向を見るとそこには、
「遅くなってごめん舞香さん。無事だった?」
「お怪我はありませんか?」
「「マイカちゃん!」」
 声をかけてきた時光と恵と、勢いよく名前を呼ぶ志穂と美穂が駆けつけてきた。
 それが確認出来た舞香が時光たちのところに駆け寄った。
「皆助かったよ。ありがとう」
 ホッと一息安心して緊張の糸が切れてしまったのか、膝がガクッと落ちてしまった。
 力を抑えて戦っていたとはいえ魔力を消耗したことに違いはなかった。
「よく耐え忍んだね。後は俺たちに任せて」
「うん、それと皆気を付けて。あの2人「筋力増強薬」を服用しているから」
「それ違法薬じゃないですか!」
 あまりのことに恵が驚く。
「よく見たらあの人たちトキちゃんが言っていた人たちじゃない?」
「マイカちゃんよく相手に出来たね」
「ん?」
 志穂と美穂の言っている容量が掴めていない舞香である。
 どうやら真奈から受け取った情報に男たちのことは含まれておらず知らなかったらしい。
「詳しいことは真奈さんにも話してあるから後で聞いてみるといいよ」
「そうするよ。私はあの2人が言っていた情報を真奈に伝えに行くよ」
「一人で大丈夫?」
「あまり無理しちゃだめだからね、マイカちゃん」
 志穂と美穂が心配そうに言うと舞香はニコッとして答える。
「私は大丈夫だよ。じゃあ皆、後は頼んだよ」
 そう言って足元に魔法陣を展開させ、その場を後にする。
 それが確認出来たところで時光たちが野口と大山に言い放つ。
「さて言っても無駄かもしれないけど、いさぎよく投降していただこうか」
「無駄なあがきほど、見苦しいものはありませんからね」
「「さあ賢明な判断を」」
 その言葉に対して野口と大山が怒気どきを込めて反論する。
「随分となめられたようだな」
「そのまま返り討ちにしてやるよ」
 両者睨み合い大山が仕掛けてくる。
広泥壁こうでいへき!」
 ゴゴゴゴッと地面が揺れ、恵と志穂の間に10メートル前後の泥の壁が展開された。
 時光・恵が対するは野口、志穂・美穂が対するは大山という形に場所を区切られた。
「志穂、美穂聞こえるか?」
 泥の壁の向こう側にいる2人に大声で呼びかける。
『聞こえるよトキちゃん。私たちは大丈夫だよ』
『ササッと倒してこの壁壊すから』
 確認がとれたところで時光は野口に向き直す。
「この壁は見た目以上に頑丈に出来ているから壊そうとしても無駄だ。壊したければさっきの2人に大山を倒してもらうことだな」
「やってくれるさ、あの2人なら」
「言ってくれるね」
 野口が構えると時光は恵に注意を促す。
「来るぞ恵さん!]
「はい!」
 それぞれ相対する戦いが始まる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

おもらしの想い出

吉野のりこ
大衆娯楽
高校生にもなって、おもらし、そんな想い出の連続です。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

処理中です...