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日常11【side.パスカル】――友人への誓い

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「ヤるだけヤってオレを放置して帰ったパスカルと、ずっとオレを気に掛けて大切にしてくれたタケル。比較対象があったからタケルに惹かれた可能性が高いんだ」

「……そっか」

「もしあのとき、お前もタケルと同じくらい寄り添ってくれていたら……『変なシャンプーのせいで二人とヤっちまったけど、さっさと忘れよう』で終わってた気がする」

 ……つまるところ、俺がノアとタケル先生を結んだのか。

 ノアが何故、自分を犯した教師を好きになったのか。いまいちピンときていないまま過ごしてきたが、ようやく理解できた。そして「傷付くことになるかも」と前置きされた理由も。

 自分の低俗さを、元好きな人と比較される形でまざまざと見せつけられてしまった。

「あの日はマジでぶん殴りたいほどお前のこと恨んだけど、今となっては『タケルを好きになるきっかけくれてありがと』って感じ? 今タケルと楽しく過ごしてるのはお前のおかげだから、オレへの罪悪感は一ミリも持たなくていいぜ」

「……分かった。言いづらい部分まで詳しく話してくれてありがとう」

「これで少しくらい気が楽になった?」

「……うん」

「それと……さっきは『友達やめる』って言ったけど、撤回していい?」

「……どうして?」

「お前、なに考えてるか分からなくて不気味って思うことがよくあるけど。溜め込んでた感情を正直にぶつけてくれて、オレもお前のどこが嫌だったのか落ち着いて伝えることができて……壁が全部壊れたような。今度こそ『友達だ!』って言い合える気がする。そんなふうに思ったのオレだけ?」

 ノアは気恥ずかしそうに頬を染めている。こちらも涙を流したことで少しすっきりしたのかもしれない。笑みを浮かべる余裕が戻ってきた。

「そうだね。もうキミに卑屈な態度取るのやめるよ」

「これからはガチの友達だからな?」

「……うん」

「アニキが間に入らなくても、二人で楽しく遊べる関係って意味だぞ?」

「分かってる」

「……なんかさ。『アニキがいなきゃ見向きもしないくせに』って言われて……オレも結局、友達になりきれてなかったのかなって気付いた。『パスカルも他のヤツも一緒』と言いつつ、実際は変な距離が空いてたのかも。だからお前も居心地悪かったのかなって」

「キミは何も悪くないよ。勝手に線を引いてたのは俺だ」

「でも今は、さっきまでと全然空気感が違うよな? ちゃんと本音をぶつけ合えてよかった」

 本当の友達。
 初めて得た存在。
 二十年間道化を演じてきた俺に守り切れるだろうか。

「俺、根本的には変わらないよ? キミがイライラするようなことも言い続けると思うけど平気? キュートとかおこちゃまとか」

「……でも〝チビ〟は言わなくなったよな」

「それは『二度と言うな』って真面目なトーンで注意されたから」

「ってことは、言っていいことと悪いことをお前なりに区別してるんだろ? 好き放題してるならイヤだけどさ、ちゃんと配慮してる部分もあるって分かるから。意識して〝良いヤツ〟を演じたら結局気を遣った関係になっちまうし、パスカルが良い人だったら違和感ありまくりじゃん?」

〝悪いヤツ〟に憧れてイキがっているノアが、純真さを隠しきれないのと同じか。どんなに取り繕っても人間性の滲み出てしまうシーンがある。俺は俺のままでいる方が、期待させて突き落とすことがなくていいのかもしれない。


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