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日常7【side.エリック】――対照的な二組
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しおりを挟む「まぁでも、タケルの態度も矛盾してるかもな」
「どういうこと?」
「学校でのタケルは、ノアの校則違反や言葉遣い・態度の悪さを見逃さない――〝堅物ウザ教師〟を徹底しているよな?」
「うん。あいつ『絶対に公私混同してはならない』ってのが口癖だもん」
「〝公〟を徹底するなら〝私〟も徹底するのが筋ってモンだろ」
今のタケルは〝教師モード〟だけを頑なに守っている。逆に〝ノアのことを好きなタケル〟というプライベートの姿はおざなりになっている――一方的に約束キャンセルなんてその極みだろう。
「俺に言わせりゃ〝プライベートに仕事の事情を持ち込んでいる〟という意味で公私混同だと思うが」
「……確かに。アニキの言うとおりだ」
「『公私の区別を明確に』と言うなら公私共に徹底してナンボだし、『それはできない』と言うなら線引きをあやふやにされても文句言えないだろ。でなければ整合性が取れない。タケルは自分の信念にそぐわない要素だけ、都合よく排除しているということになるからな」
……タケルが聞いたらまた「屁理屈だ」と言いそうな話だが。ノアの顔には笑みが戻り、瞳はキラキラと輝いていた。
「さすがアニキ! やっぱ最強にシブくてカッコよくて頭もいい!」
「タケルの場合〝教師モード〟は絶対曖昧にできないはず。ならば〝ノアのことを好きなタケル〟も徹底して貫け――と俺なら言う。『教師モードと同レベルでプライベートも大事にしろ』ってな」
「いいアイディアありがと。あとでタケルに電話してくる。今の話を使って論破してやるんだ」
「いや、調子に乗るなよ? 返り討ちにあって終わるかも――むしろその可能性の方が高い。お前はパスカルと違って頭が回るタイプじゃねーんだから」
「大丈夫、アニキが教えてくれたことをなるべくそのまま伝えるから」
ノアは「早く食べて部屋に戻らなきゃ」と言い、カレーにがっついた。初々しい恋模様で微笑ましくなる。
「お前、マジでタケルにベタ惚れだな」
「――は!? そんなんじゃねーよっ!」
「いや、直視するのが眩しいレベルで愛が爆発してるぞ」
「か、勘違いすんなっ! あいつの方がオレにベタ惚れなの!」
「最初はいろいろ思うところもあったが、タケルが相手で良かったという気がしてきたな。ノアには大人しい奴とかサッパリした奴より、良くも悪くも熱量の高い奴が合うんだろう。喧嘩しまくりでも似合いの二人だ」
「……言っとくけど、オレはあいつに会いたくて怒ってるわけじゃないから。生徒のルール違反に厳しいくせに、自分は約束を破るなんて身勝手だろ? たまにはこっちが厳重注意してやらないとな!」
……どうなることやら。
上手く話をまとめることができればいいが、そうでなければ今夜は寝るまで愚痴に付き合わされそうだ。
……それはさておき。
誰もいない教室でノアが手を握っただけでブチギレか。
俺とパスカルが校内でキスしているなどと知ったら。
タケルは卒倒するかもしれない。
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