【完結/おまけ追加中】幻惑の華 ※次回のNewシナリオ追加は3月21日~予定です

双葉

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日常7【side.エリック】――対照的な二組

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「まぁでも、タケルの態度も矛盾してるかもな」

「どういうこと?」

「学校でのタケルは、ノアの校則違反や言葉遣い・態度の悪さを見逃さない――〝堅物ウザ教師〟を徹底しているよな?」

「うん。あいつ『絶対に公私混同してはならない』ってのが口癖だもん」

「〝こう〟を徹底するなら〝〟も徹底するのが筋ってモンだろ」

 今のタケルは〝教師モード〟だけを頑なに守っている。逆に〝ノアのことを好きなタケル〟というプライベートの姿はおざなりになっている――一方的に約束キャンセルなんてその極みだろう。

「俺に言わせりゃ〝プライベートに仕事の事情を持ち込んでいる〟という意味で公私混同だと思うが」

「……確かに。アニキの言うとおりだ」

「『公私の区別を明確に』と言うなら公私共に徹底してナンボだし、『それはできない』と言うなら線引きをあやふやにされても文句言えないだろ。でなければ整合性が取れない。タケルは自分の信念にそぐわない要素だけ、都合よく排除しているということになるからな」

 ……タケルが聞いたらまた「屁理屈だ」と言いそうな話だが。ノアの顔には笑みが戻り、瞳はキラキラと輝いていた。

「さすがアニキ! やっぱ最強にシブくてカッコよくて頭もいい!」

「タケルの場合〝教師モード〟は絶対曖昧にできないはず。ならば〝ノアのことを好きなタケル〟も徹底して貫け――と俺なら言う。『教師モードと同レベルでプライベートも大事にしろ』ってな」

「いいアイディアありがと。あとでタケルに電話してくる。今の話を使って論破してやるんだ」

「いや、調子に乗るなよ? 返り討ちにあって終わるかも――むしろその可能性の方が高い。お前はパスカルと違って頭が回るタイプじゃねーんだから」

「大丈夫、アニキが教えてくれたことをなるべくそのまま伝えるから」

 ノアは「早く食べて部屋に戻らなきゃ」と言い、カレーにがっついた。初々しい恋模様で微笑ましくなる。

「お前、マジでタケルにベタ惚れだな」

「――は!? そんなんじゃねーよっ!」

「いや、直視するのが眩しいレベルで愛が爆発してるぞ」

「か、勘違いすんなっ! あいつの方がオレにベタ惚れなの!」

「最初はいろいろ思うところもあったが、タケルが相手で良かったという気がしてきたな。ノアには大人しい奴とかサッパリした奴より、良くも悪くも熱量の高い奴が合うんだろう。喧嘩しまくりでも似合いの二人だ」

「……言っとくけど、オレはあいつに会いたくて怒ってるわけじゃないから。生徒のルール違反に厳しいくせに、自分は約束を破るなんて身勝手だろ? たまにはこっちが厳重注意してやらないとな!」

 ……どうなることやら。
 上手く話をまとめることができればいいが、そうでなければ今夜は寝るまで愚痴に付き合わされそうだ。

 ……それはさておき。
 誰もいない教室でノアが手を握っただけでブチギレか。

 俺とパスカルが校内でキスしているなどと知ったら。
 タケルは卒倒するかもしれない。


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