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日常5【side.ノア】――愛言葉(アイコトバ)
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しおりを挟む《申し訳ないが
ちょっと遅くなる
帰る前に連絡入れるから
好きに過ごしていてくれ》
もしかしたら、向こうもオレたちと似た会話をしていたかもしれない。
メール画面をタケルに見せる。
その視線がスマホ画面からオレに移ると、どちらともなくキスをした。
……もう抑えなくていいよな?
二人でオレの部屋へと移動した。
さっき我慢した影響もあるのだろう、ベッドに上がる前から身体は完全な興奮状態。
タケルの唇がオレの肌を撫でていく。時折ちくっと痛みが走るが、それすら心地いい。熱い手がオレのいたるところを這い、つま先から頭の先まで敏感になっていく。
「――ノア。君の中に入ってもいいか?」
タケルの瞳がオレを見下ろしている。色気を孕んだ眼差しに耐え切れず、顔を背けた。
「わざわざ確認しなくていいってば」
「もっとじっくり愛撫してほしいと言われたらその気持ちを優先したいんだ」
「もう大丈夫だから。早く来いよ」
タケルの熱がオレの中へ。
この瞬間は毎回緊張する。
痛みが全くないわけじゃない。
でも幸せでドキドキする。
身体に負担が掛からないようにと、タケルはオレの顔を見つめながら、丁寧すぎるくらい慎重に事を進めていく。もどかしさで身体が疼き、ぎゅっとシーツを握り締めた。タケルの眉間に皺が寄る。
「……締め付けが強いな」
「ご、ごめん。痛かった?」
「大丈夫だ。気持ちいい」
握り締めていたシーツを手放す。それと同時に深い息が漏れた。前と後ろ、どちらもタケルの身体で快楽へと導かれる。油断すると変な声が出てしまいそうで、きゅっと唇を結んだ。
「声、我慢しなくていいぞ?」
「やだっ。一人だけめちゃくちゃ興奮してるみたいでハズイもん」
「そんなことはない」
深いキスとともに何度も突かれ。快感と愛情が幾重にも傾れ込んでくる。ずっとこのままでいられたらいいのに――そんな考えが頭に浮かんだ。心も身体もおかしくなりそうだ。
「た、たけるっ……好きっ」
普段は照れくさくて言えない言葉が、思わず口から出てしまった。タケルの動きがぴたりと止まる。
「そんなことを言われたら……」
「な、なんだよっ」
「すまない。大人げないが冷静さを欠いてしまいそうだ」
荒々しい口付け。身体の奥深くまで喰らいつこうとするかのように何度も貫かれた。全身が痺れそうなほどの興奮に支配されていく。
唇を離したタケルがオレのモノを掴んだ。手と腰の動きがいっそう激しくなる。
「ま、待って! 手はそんな速くしたら無理だから!」
「ノア、君は僕のものだ」
「それ――」
「言っていいのだろう?」
「――あ、もうダメっ!」
オレがイった直後、タケルも強く脈打った。
……あんなの耐えられるわけない。
気持ちよすぎだっての。
繋がったまま、タケルはオレの頬に指を添えた。
「本当はもう少し時間を掛けたかったんだが、君があまりにも嬉しいことを言ってくれるから。抑えられなかった」
「……ま、まぁ、たまにはオレも言わねーと不公平だし? たまに……だからなっ」
「それでもいい。君の心の中に『好き』という想いがあるのなら、僕は幸せだ」
「……なかったらヤらねーよっ」
タケルはオレの額にキスを落とし、「愛してる」という言葉をくれた。
……行為の時間も大好きだけど。
好きな人のくれる「愛してる」が、結局のところ一番嬉しいかもしれない。
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