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16【side.エリック】――パスカル/灰
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しおりを挟む「俺が惚れてるのはお前だよ」
「…………ここ、笑うとこ?」
「重苦しい展開続きのなか、そんなつまらんジョークを投下すると思うか?」
「……あんたがずっと暗い顔してる理由が分かった」
「避けたきゃ避ければいい。お前が訴えないと言うなら俺は明日からも教師を続けさせてもらう」
スマホをポケットに戻して立ち上がる。
玄関に向かおうとしたが呼び止められた。見慣れた顔、妖艶な笑みが俺に向けられている。
「あんたのこと、もっと教えてよ」
「何だそりゃ」
「俺はずっとタケル先生のことしか見てこなかった。あんたのことも知ってみたい」
「失恋ショックを和らげるために人の好意を利用すんな」
「そんなつもりない。愛情を抱く相手はタケル先生だったけど……『辛いとき誰を頼りたいか』と問われれば、俺は迷いなくエリックと答える。失恋なんて関係なく」
「……それはアレだろ? 俺がお前の涙を見ちまったから」
「俺の闇……知ってるのはあんただけだからね」
パスカルの腕が俺を包む。
こいつはタケルをノアに盗られた苦痛を紛らわせたいだけだ。分かっているが、拒絶することができなかった。
「……ねぇ。俺たちもしてみよっか」
「ざけんな。俺はお前を慰めるために存在しているワケじゃない。お前の好きな奴を知ってるのにできるわけねーだろ」
「でもさ。身体から始まる本気の恋もあるってこと、ノアが実証してくれたから」
「んなモン特例だろ」
「どうだろうね。でも俺……あんたとなら試してみたいって思う」
「……お前もあのシャンプー使ってんのか?」
「もう使ってないよ。俺たちもゼロから始めてみない? 俺をその気にさせてみなよ」
「……調子こいてんじゃねーよ。あとで泣き言垂れるに決まってる」
「そんなことない」
「……途中でやめろと言われても止まれねーぞ」
「なに言ってるの? それはこっちのセリフなんだけど」
ぐいっと腕を引っ張られバランスを崩す。倒れ込むようにしてベッドへと誘われた。パスカルがニタリと笑いながら俺の手首を拘束している。
「何しやがる!」
「俺が上」
「は!? ありえねーだろ! お前みたいに綺麗なツラした奴が――」
「顔で判断しないでよ。俺が上、異論は認めない」
「……やっぱ毒されてんだろ」
「アロマの影響はないって言ってるでしょ。女性にしか興味ないはずのあんたが俺を求めてたなんて本当に意外」
「いやだから、こういう求め方をしてたワケじゃ――」
「じゃあお互い〝まさか〟の気分を味わいながらできるね」
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