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15【side.ノア】――タケル/白(First End)
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しおりを挟む「……引っ越せよ」
「え……引っ越し?」
「自分にできることならなんでもするって言っただろっ」
「それはそうなんだが、突飛すぎて意味が分からない。引っ越しと責任がどう繋がるのか聞かせてくれないか」
「オレが卒業したら一緒に暮らしたいってアニキに言ったんだろ? こんな狭っちぃ家で暮らすなんて冗談じゃねーよ。自分の部屋がなきゃイヤだ」
「何故……僕と暮らすなどと……」
「いちいち訊かなくても分かるだろっ。アニキじゃなくてお前を選んでやるってことだよっ」
「……この三日間、心身ともに僕の身勝手な願望を押し付けてしまったな。優しい君はアロマに侵された僕を気遣ってくれているのだろうが、もう大丈夫だ。頭もしっかり冴えている。君はこれからもエリック先生と暮らしていればいい」
「そんな冷静なトーンで断るなよ……。お前……オレのことが欲しいって言ったくせに!」
タケルの胸に飛び込んだ。
ぎゅっと抱き締めると同時に、身体の奥から感情が溢れ出す。
「お前がオレをこんなふうにしたんだろ!? 勝手に消えようとすんなっ!」
「……『どっか行っちまえ』と言われたから」
「それは……お前が誰でもよかったんだと思ったら死にそうなくらい苦しくなって……」
「誰でもいいなんて思ったことは一度もない。誤解させて申し訳なかった。異常なまでに湧き上がる性欲を制御できず、エリック先生に酷いことをしてしまったが――」
「その話は二度とすんなっ!」
「……すまない」
「もう終わったことは言うな。お前がオレのことをどう思ってるのかだけ言えばいいんだよ」
「僕のような醜い人間に愛を語る資格など――」
「いいから! ちゃんと本音を言えっ!」
「……ノアのことが好きだ。君以外の人など考えられない」
タケルを拘束していた腕を解く。
背伸びをして口付けた。
オレからキスするのはこれが初めてだ。
タケルはすぐに顔を離そうとしたが、ジャケットを掴んで引き止めた。
唇が触れるだけでは足りないから。
深くまで。
もうどこにもあのシャンプーの香りは残っていない。
影響など何もない。
それなのに。
興奮しすぎておかしくなりそうだ。
あの香りにあてられていたとき以上に――。
「オレっ……もう我慢できないよっ」
「……」
「お前はなんとも思わねーのかよっ」
「僕だって興奮はしている」
「またオレの身体のこと気にしてるのかよ。ちょっとくらい痛くたって平気だから」
「そういう問題ではなく、そもそも教え子に手を出すなどあってはならないことだ。午後九時過ぎまで生徒を預かっている現状も良くない。責任の取り方に関しては後日話し合いの場を設けるとして、今夜は保護者のもとへ送り届けなければ――」
「お前マジめんどいな! ゴミ箱からあのシャンプー拾ってくるぞ!?」
「駄目だ。あんなものはもう二度と使ってはいけない」
「だったら早く」
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